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「在日ファンク」Web 限定インタビュー
取材日:2014.09.03


インディーズでコアな音楽ファンから支持され続けてきた
7人編成のファンクバンド、在日ファンク。
満を持してメジャーデビューアルバム「笑うな」をリリースしたばかりです。
アルバムツアーを目前に、フロントマン浜野謙太と
トロンボーンのジェントル久保田が、
その音楽性、バンドのあり方について、たっぷり語りました。

浜野さんは「SAKEROCK」のメンバーでもあり、ジェントル久保田さんは「GENTLE FOREST JAZZ BAND」をリーダーとして率いながら、共に在日ファンクで活動していらっしゃいます。バンドという形態について、どのような考えをお持ちですか?

浜野:バンドをいろんなものに喩えちゃっているんですよ。家族をバンドに喩えたりとか…子どもが生まれるというのはバンドメンバーが増えるということだ、みたいなことを言っているので…バンド自体がどういうものなのかと新たに説明するのは難しいですよね。ただ、やっぱり僕はSAKEROCKの星野君を見てきたので、在日ファンクを始めたときには、ああいうバンド像、リーダー像というのを持っていました。でも、そのやり方だとうまくいかないんですよ。性格も違うし在日ファンクというものがまず違うから、それをSAKEROCKと同じようなやり方でやると全然うまくいかなくて。なんでかなと思ったら、「在日ファンク」という名前にみんな集まっている感じがあるんですよね。例えば、在日ファンクという名前を僕が「ヤバい」と思って変えようとした時期があるんです。でも、そのときに「それだったらやらない」って、メンバーみんなに総スカンされました。それぐらいみんな「在日ファンク」という名前の下に結集している連合みたいな意識を持っているというか…というのも、みんなの音楽的ルーツがブラック・ミュージックだったりするので、何かしらアメリカ人と自分たちの違いだったり、黒人と自分たちの身体能力の違いだったり、もの凄い劣等感を抱えてやっているところがある。ブラック・ミュージックをやろうという人は抱えるんですよ、そういうのを。在日ファンクというのは、そんな人たちにとっての集まりというか、オアシスという感じなんですよね。

「在日」と聞くと抵抗感を持つ人も当然出てくることはわかっていながら、それも飲み込んでしまうような心意気を感じます。

浜野:「在日ファンク」じゃなかったら、ここまで広がらなかった気がするんですよね。言いたいことも別になかったし。「在日ファンク」という名前に対する不快感とか嫌悪感というものが、日本の一番の問題なんじゃないかなと僕は思っているので。ひとつ病巣を見つけた感じがしますね。

久保田:そうですね、名前がひとつの引っ掛かりになっている。いろんな意味で引っかかりますよね。

久保田さんにとって、在日ファンクはどのような位置付けですか?

久保田:リーダーとしてやっているバンドは、僕がやりたいものを形にしてやっている感じ。在日ファンクに関しては「メンバーとして」という感覚もそんなにないんですよ。ハマケンと一緒に仲良く遊んでいたりした中で、彼に「これをやりたいんだよね。ちょっと一緒にやらない?」と誘われて「じゃあ、一緒にやろう」みたいな、そういう感覚の始まり方でしたからね。以前は、自分のやっているバンドと在日ファンクで自分のキャラを使い分けていたんですが、最近はひとつにしていきたいと思っているんですよ。音楽性ではなくて、自分の位置ですね。僕は凄くレイ・チャールズが好きなんですが、そのままやってしまうとずっと真似し続けなくちゃいけない。そうじゃなくて、彼の楽しさの部分を抽出してやっていきたい。そういう面では、僕自身も在日ファンクも、やりたいことは一緒です。そこが一番大きいつながりかな。もちろん、一緒にやっていて楽しいし、いろいろ発見もあるし。

ブラック・ミュージックを目指しながら、真似ではなく独自性を追究するために気をつけていらっしゃることは?

浜野:あんまり直訳しないことですね。ジェームス・ブラウンが歌詞で言ってることをそのまま言ってもしょうがないと思うから。「辛いことがあっても気にするな。立ち上がれ!踊れ!」とかね。そう言うのか、「ギロッポン」とか言うのか、ということになりがちなんですけど。

久保田:「ゲロッパ!」じゃなくて「ギロッポン」。

浜野:ある意味、直訳ですよね、ギロッポンも。もっと不完全なものをさらけ出したいというか…。やっぱり日本自体が不完全というか中途半端だと思うんです。アメリカ人と同じ考え方になれと言われて育っているから、「日本って何だ?」というのを見出すときに、やっぱり中途半端なものとして認識するしかないんじゃないかな。

それをさらけ出すということが、在日ファンクのひとつの表現になっている。

浜野:そうですね。それをほかの人たちがしないのは、完璧にやりたいからだと思います。僕らもこういう音楽をやっていると「そんなのファンクじゃねぇ」とか言われることがあるので。本格的なのをやりたい人はやればいいけど、日本人が本格的なのを出来る訳ないし、「在日ファンク」と銘打っているからには、「本格的な在日ファンク」ではあるんだと。完璧だと自分で思っていることは完璧じゃないかもしれないし、アメリカ人の好きな日本人の完璧かもしれない。そういうのを疑うというのはありますね。狭間のウニャウニャしている中途半端なところに本格的な在日ファンクがあるんじゃないかという思いがあります。



メジャーデビューアルバム「笑うな」では、日本人らしいメロディアスな部分をとてもスマートに感じることが出来て、どの曲もスッと入ってきました。

浜野:まぁ、そうですね。これまでは、ファンクマナーのようなものから逸脱しちゃいけないというのをちょっとだけ考えながらやっていましたが、バンドのモチベーションが上がったからなのか、今回のアルバムではそういうことを考えないでやりました。「これをやったらファンクじゃなくなっちゃう」みたいなことをあまり考えずに、みんなが「これだね」と思うことだけ大切にしてやったので、もしかしたら確かに日本人的なメロディみたいになっているのかもしれない。メジャーということで曲の作り方を気にするということはありませんでしたけどね。

久保田:曲作りでは、前の「連絡」というミニアルバムから、けっこう苦戦していた時期があって。メンバーがいい曲を作ってライヴでやったりもするんですけど、なかなかハマらなかったりして。行き詰まって、結局どういう在日ファンクが俺らの理想なのかと考えたときに、やっぱりハマケンが思ったことをぶつけてくるのが一番俺らもやりたいし、やってて楽しい、というところに行き着きました。それはやっぱり、ファーストアルバムですよね。そこが原点。みんなで試行錯誤していくうちに、また原点に戻ってきたというか。そしたら一気にバンドがまとまって、曲が出てきたっていう。


歌詞については、いかがでしょう?日本のファンクで何を表現するか…社会的なことを取り入れていらっしゃいますね。

浜野:社会的なことを言いたいというのはあるんですが、それを抑えろと言われています。「おっさんの怒っていることなんて誰も聴きたくないんだから」って。でも、どうしてもでっかいところにつなげたがっちゃうんですけど。おじさんのでっかい怒りみたいなのをなぜ聴いてもらえないのかというと、あんまり切実じゃなく聞こえちゃうからだと思います。でも、個人的な切迫した悩みだったら、コミュニケーションとしては聴いてくれる。そこから始めて突き詰めれば絶対社会につながれるというのが、在日ファンクをやっている中で確信のひとつとしてあるんですよね。だって、みんな社会に生きている訳だから、全部突き詰めれば政治につながりますよね。あえて政治みたいなのを切り離すとか、あえて政治みたいなのを取り入れるみたいな、その「あえて」の感じが良くないのかなと。自分の反省も含めつつ、あえて政治を切り離す風潮にあるいろんなものに憤りがあります。

それこそ直訳だとつまらない。ユーモアやグルーヴというファンクマナーに基づいているから、在日ファンクの音楽は面白いのだと思います。

浜野:直訳だと乗らないんですよ。個人的な、今、日本にいる日本人の自分にとっての意味としての重さがある言葉じゃないと。やっぱり意味の重さがないとリズムが回らない。言っていてもつまらないし、それこそ「ゲロッパ」の直訳を連呼してもホントにつまんないですもんね。「ギロッポン」のがいいっていう話ですよね。今の六本木はだんだん廃れていっている感じだから、また意味が違ってかっこいいと思います。そういう重さのある意味として使いつつ、それが「ちゃんとここに俺がいる」みたいな風に感じられればいいのかなと考えていたら、最後にはおっさんの社会に対する怒りが出るみたいな。ちょっとだったらいいだろうっていうのがあるんですけど(笑)。

アルバムタイトルの「笑うな」には、どんな意味が込められているのでしょう?

浜野:僕に対して笑うなというのはあります。いつもオチをつけたいみたいな意識があって、そういうのはよくバンドメンバーに注意されるんですよね。ライヴでも「芸人じゃないんだから、オチつけてから曲に行かなくてもいいでしょ」って言われて。オチがなきゃいけないとか、ツッコミがなきゃいけないとか、そういうんじゃないんだって。笑いというのがジャンルになるっていうのもちょっとどうかと思いますし、いろいろやって何かしら心が動いて笑ったり泣いたりする訳で。今、どうして芸人が一番偉くなっているかというと…なんでこんなに劣等感があるの(笑)。いろいろ芸人さんと付き合ってみて思うんだけど、自分が一番ダメなような気がしてくる。

久保田:そういう人たちと一緒にやっていると、自分たちの話はつまんないんじゃないかという気になっちゃうんだけど、それは彼らのフィールドでやっているからであって…。ちゃんとミュージシャンとしての話の図式を作って言いたいことを言わないと。

浜野:その反動で社会のことを言ったりすると、「マジメか!」みたいな感じになるのがまた嫌だというか…。僕らは音楽を聴いて欲しいので「笑うな」とは言っているけど、笑いながら聴いてくれてもいいんです。とにかく聴いて欲しい。結果、泣いてくれてもいいし、社会のことを考えてくれてもいいし。ただ、二分化されちゃうとどこにも行けない。

久保田:「ハマケン、面白いことやれ!」って。今まで散々、それを築いてきちゃったので、それに対してケツを拭いているというか、頑張って軌道修正しているというのは僕も見ていて思いますね。


10/13 MONDAY・HOLIDAY
在日ファンク「笑うな」発売記念ツアー
チケット発売中
■会場/名古屋クラブクアトロ
■開演/18:00
■料金(税込)/前売¥3,900 当日¥4,400 ※ドリンク別・スタンディング
■お問合せ/名古屋クラブクアトロ TEL.052-264-8211
※未就学児入場不可