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名古屋フィルハーモニー交響楽団の首席トロンボーン奏者・田中宏史が、在団20周年を記念したリサイタルをおこないます。トロンボーンのオリジナル曲や珍しい編成でのアンサンブルなどが披露される、貴重な演奏会。11月の本番を目前に、その楽しみ方を聞きました。
トロンボーンに焦点を当てた曲の楽しみ方とは、どのようなものでしょうか?例えば、ラヴェルの「ボレロ」のソロパートなどは印象的ですね。
「ボレロ」のソロはトロンボーン奏者にとってリスクが高いパートです。金管楽器は音域がどうしても限られるし、個人差がけっこう出てしまうので。その上でどんな表現をするかというのが、聴く側の楽しみだと思います。オーケストラではトロンボーンの出番が非常に少なく、出ていても木管楽器のように常にソロがあるわけではありません。だから僕らも、オーケストラだけでなくソロやアンサンブルの演奏会をして日頃の不満解消をしています(笑)。トロンボーンを人の声に例えると、テノールやバリトン。そこに管楽器らしいちょっとパリッとした空気が音になる感じやすごく温かい音色があって、そのメリハリのある音が魅力だと思います。だから、やっぱり1曲丸々しっかりとトロンボーンの音でいろんな音楽を聴いてもらいたいと常々思っているんです。
トロンボーンをメインにしたアンサンブルやソロの曲はたくさんあるのですか?
トロンボーンの世界で有名な曲はけっこうあって、それらを積極的に紹介しているトロンボーン奏者はたくさんいます。でも僕は、トロンボーンに特化した音楽だけじゃなく、弦楽器やピアノの曲、歌のある曲など、もっといろんな音楽をトロンボーンで表現したいんです。実は、トロンボーン奏者がそういう音楽を知らなかったりするんですね。だから、トロンボーンの人にいろいろな素晴らしい曲を紹介したいという思いもあります。一方で、一般の方にもなじみのある曲を演奏することで、トロンボーンの楽しみ方をたくさんの人に知っていただきたい。両サイドの人にトロンボーンで音楽を聴いてもらいたいという思いで演奏活動をしています。めざしているのは、クラシック音楽のボーダレス化なんです。クラシック音楽も楽器によってジャンル別されているところがあるので、その垣根を取り払いたいと。
11月のリサイタルにも、その思いは反映されていますか?
そうですね。僭越ながら、クラシックにおけるいろんなジャンルの音楽を聴いていただきたいという思いで選曲しました。アレンジものとトロンボーンのオリジナル曲を同居させたプログラムになっています。
アレンジものでは、ストラヴィンスキーのバレエ音楽「プルチネルラ組曲」を弦楽器、ピアノ、トロンボーンで披露されます。
もともとは歌も入っている珍しいバレエ音楽です。オーケストラでよく演奏されますが、ヴァイオリンとピアノ、チェロとピアノなど、いろいろなバージョンにもアレンジされています。室内楽的なサウンドが合う曲なんですね。トロンボーンソロとピアノというアレンジもあるのでやってみようと思って、名フィルのヴィオラ奏者・吉田浩司さんに編曲を依頼しました。せっかくだからピアノに加えて弦楽器とも一緒にやれるようにお願いして、素敵なアレンジに仕上がっています。トロンボーンの表現力が弦楽器やピアノとどのようにマッチするか。そこが聴きどころかなと思っています。
フェルヘルストの「カレイドスコープ」は、トロンボーンのオリジナル曲ですか?
トロンボーンソロと8人のトロンボーンアンサンブルの曲で、僕が会長を務める名古屋トロンボーン協会が、2016年の発足時にオランダの作曲家スティーヴン・フェルヘルストに委嘱した作品です。初演は、発足記念の演奏会「第1回名古屋トロンボーンフェスティバル」。ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席奏者ヨルゲン・ファン・ライエンをソロに招き、僕を含めた8人のアンサンブルと一緒に披露しました。トロンボーンの伸びやかで歌うような音色が大いに生かされた曲です。今回は僕がトロンボーンソロで、アンサンブルのパートはピアノ。シンプルだけど力強い演奏にしたいですね。
そして、ジャズの曲もラインナップされています。吉田浩司さん編曲の「明るい街角でLove for Sale!」。
ヤバい題名ですよね(笑)。「On The Sunny Side of The Street」「Love for Sale!」「How High the Moon」という3つのスタンダードナンバーを組曲にして、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのアンサンブルと演奏します。先日、初めて音合わせをしましたが、弦楽器の伴奏が入るとちょっとありがたい音がしました(笑)。金管だけよりエレガントな感じになるというか。僕はジャズも好きでアレンジを勉強したり、ジャズの人とバンドを組んだりもしているんです。そうした、これまでの活動で得たものを今回のリサイタルにはすべて組み込んだつもりです。
田中さんの名フィル在団20周年の記念公演です。20年を振り返り、印象深いのはどんなことですか?
現在の音楽監督・小泉和裕さん、正指揮者の川瀬賢太郎さんはもちろん、小林研一郎さん、モーシェ・アツモンさん、ティエリー・フィッシャーさんなど国内外の名指揮者たちのいろいろな音楽的アイデアが蓄積されて、今の名フィルがあるのだと思います。僕が入団した頃は創立直後からのメンバーがたくさんいらっしゃって、音楽的な影響を受けました。その後10年ぐらいで世代交代が進み、今は20代や30代の若手演奏家からとてもいい刺激をもらっています。どちらも経験できた、とても充実した20年でした。今回のリサイタルはその集大成…と、どんどん自分にプレッシャーをかけてしまいますが(笑)、じっくり楽しみたいと思っています。
11/17 THURSDAY 【チケット発売中】
名古屋市民芸術祭2022参加 名フィル在団20周年記念
田中宏史 トロンボーンリサイタル
◎トロンボーン:田中宏史 ◎ピアノ:金澤みなつ
◎ヴァイオリン:瀬木理央、山洞柚里 ◎ヴィオラ/編曲:吉田浩司 ◎チェロ:幸田有哉
■ 会場/電気文化会館ザ・コンサートホール
■ 開演/18:45
■料金(税込)/全席自由 一般 ¥3,500 学生(社会人を除く)¥2,500
■お問合せ/クラシック名古屋 TEL.059-678-5310(平日11:00〜16:00)
※未就学児入場不可