HOME > Web 限定インタビュー > 「清水 宏」インタビュー


「清水 宏」web限定インタビュー
取材日:2014.05.26


スタンダップコメディで世界に挑戦し続ける、清水宏。
名古屋・今池のTOKUZOを二日間に渡ってジャックし、
コメディ海外挑戦シリーズ第二弾と新作コントを披露します。

コメディ海外挑戦シリーズを始めるきっかけはどのようなものだったのですか?

20代の後半ぐらいにニューヨークに行ったんです、本当に飛び込みみたいな感じで。それが最初ですね。それをきっかけに本当に海外でやろうと決めて、東京でも外国人向けのコメディクラブなどで英語でコントをやり始めました。その中で、具体的なステップとしてイギリスの有名なエジンバラ・フェスティバル・フリンジに参加したんです。もともとは演劇関係者の間でよく知られているフェスティバルで、日本ではまだそんなに馴染みない存在でしたね、エジンバラの街自体が。メディアの人でジンバブエと間違えている人が本当にいたぐらい(笑)。でも、エジンバラは僕にとっては思ったより大きいものがあったところなんですよ。現実的には演劇よりコメディの方が気軽に観られるというのはイギリスでも同じで、フェスティバルでもコメディが一番多いんですよ。ダンスとか演劇とか音楽とかさまざまなステージがありますけど、半分以上がコメディ。

世界各地から集まるプレイヤーにとっては、言葉の壁などもありそうですが…。

もちろん英語は必須ですよね。英語を喋るという構え、その英語がどれぐらいのレベルかというのはプレイヤー次第、お客次第。僕ももちろんネイティブほど完璧には喋れないし、向こうから返ってきたときにわからないこともある。適当に答えちゃうこともあります。向こうに行って気づいたんですけど、ダンスとか、サイレント・コメディーのが~まるちょばさんとか、言語を使わないものはワールドワイドなんですけど、コメディはやっぱりちょっとドメスティックですね。それでも日本よりは全然開かれているように感じます。海外のコメディアンに対しても「怖いけど見てみよう」という人たちがいるんですよ。だから僕のステージにもお客が入るんですけど。開かれてはいるももの、やっぱりパントマイムとかサーカス、ダンスに比べれば、イギリス国内向けに外から挑戦する、こじ開けていくというものではありますね。

ご自身のパフォーマンスが受け入れられたという手応えは感じましたか?

フェスティバルは、基本的にはお客を自分で入れるんですよ。街に出て自分で宣伝活動するんです。そのプロセスでいろんな気持ちになりますね。「なんだ、その態度は!」とか…。でも説得して、来てもらえるようにする。そういうことを繰り返しているうちに、細かいこだわりをちょっと越えられそうな気がする。3年目にエジンバラに行ったとき、そういうレビューをもらうことが出来ました。「本当に無理矢理なこともやっているヤツだけど、彼のパフォーマンスは基本的に言葉の能力の背景に想像出来るものがある。人間の違いは皮膚の皮1枚の色の違いなのではないかと思わせてくれる何かが彼にはある」と…。だから、まぁ伝わっているんだっていう手応えはありますね。まだ険しいですけど、必ずその山の上には行きたいなと。だからアメリカも回りたいと思ってはいます。


今回の第二弾は韓国と台湾でのチャレンジでしたね。

ちょっと、やっぱり気になっててね。台湾にも、求めている人がいるんです。日本にもテレビしか見ない人もいるし…僕はそういうものとの戦いだと思っているんですよね。テレビ以外の生のステージに足を運んでもらったときに得られるもので勝負していきたい…そういう人が台湾にもいて、出会うことが出来たんです。海外からコメディアンを呼んで、国内のものと合わせてひとつの流れにしようという大きなビジョンを持っている人がいるんですよ。小さなクラブなんですが、そこをなんとか連日満員にしようとしていて。彼との出会いがきっかけで、まず彼のコメディクラブに出演しました。さらにもう一ヵ所と思って韓国へ。以前、一度だけ演劇を観に行ったことがあったんですが、演劇のレベルは確かに高かった。世界水準を想定している人たちもいて。でも、俺のコメディだったら互角以上に戦える、そんな風に焚き付けて韓国に行ってみようという、そのふたつのツアーのレポートが今回の公演ですね。今年3月に台湾、4月に韓国に行った体験談をコメディで僕が語っていきます。同時に、僕がそのときに遭遇した出来事、巻き込まれた事件、心理的な葛藤、あるいは恐怖、いろんなことをそのまま再現する。それに観客の皆さんが一緒に同時体験しているような、映画を観ていて「うわーっ、危ない!」ってなるような、そういう感じにしたいんです。「あの人、許せないわ。なんであんなこと言うのかね」とか、そんな風に思ってもらえるような同時体験コメディというか…勝手に4Dって呼んでいるんですけど、映画館の4Dより俺はもっとアナログでやれているよっていうことです。風も匂いもするぜっていう。みんなに元気が出るというのを通り越して、次の日は出来たら休みをとってくださいっていう(笑)…それぐらいにはしたい。本当にエネルギーは消費します。それぐらいね、なんかやりながらダラダラ見られるものではないということ。そういう価値観を提示したいです。それだったら家でテレビ見ているのと変わらないし。せっかくだから来てください。皆さんの生活のルーティンが変るものにしたい。今日はこれやって、これやって、11時までにこれをやっとけばいいねっていうルーティンがガタガタになるような衝撃度を目指していますから。

体調を万全にして観に行きます(笑)。

調整してきてください。「笑って帰ってきたのに、家に着いたら泥のように寝た」とかいろんな話をお客さんから伺うことが多いんです。それって素敵なことじゃないですか。多分、「こんなもんでしょ?」と思っていらっしゃる方が多いと思うんです。でも、そうじゃない。足を運んでくれたら本当に楽しいと思うんです。僕は普段アホみたいな人間で、ムダも多いし、こんなことは20代の前半でやっておけよっていうことだらけなんですけど、おじさんだから出来るいろいろな引っ掛かりというのを全部ステージで見せられる。韓国ではコメディクラブでライヴをしましたが、正にアウェイでした。楽屋も完全に韓国人のコメディアンばかりで「どうすんの?やれるんですか?」という視線の中でやる羽目になって、でも最終的には試合に勝たなければダメなんですよね。「あいつ、余裕がなくてあんな顔をしている」と思われたり、みっともなくても勝たなくてはいけないというプロセスも共感していただけるんではないかと。

二日目の「清水宏の情熱コント大陸」は、コントをたっぷり楽しめるステージですね。

「あるある」というものに対する意識をちょっとひっくり返したいという。「ああ、あるね」っていうのって、そんなに面白くねぇんだよっていうのを。体験談もそうですけど「えーっ!! うぉーっ!」っていうことを全編目指しています。かといって脱いだりとういことではなくて、心のストリップだと思ってください。キャラクターを変えたり、演技だったり、いろんなことを導入していますけど、最終的にはお互いの心のストリップになればいいと思っています。今は「こういうの知っているのよ、ふふふ」というようなことを面白いと思わされていて、気の毒。そんなの、冗談じゃない。来ていただければ、本当にこんなに身も蓋もなく心の服を脱ぐんだということを見せたいと思っています。でもそれには知性がいるんだなということなんですよ。

今回はすべて新作だということですが。

新作と名作をふたつぐらい持ってきています。映画の予告編と呼ばれるものをとにかくいっぱいやっているのと、あとその他のものが結構出来たので、たくさんラインナップしています。ひとつは、昔やっていたシンバル漫談。最近復活して、京都とか札幌、福岡でもやっているんですね。ついに僕の第二のホームグラウンドの名古屋にも持ってこようと。



進化していますか?

そう思うんですけどね(笑)。一度、牧伸二さんに相談したことがあるんです。そしたら、「続けることだよ」って言われて、途中で「続けて何になるんですか、師匠」っていう気持ちから一度はシンバルを置いたんですけど、やっぱり続けてみようというところもあります。もうひとつは、ウルトラセブンに登場するミクラスというカプセル怪獣から見たセブンというネタ。本当は、真剣勝負であれば自分の方が強い。でも彼はスターだし、憧れがある。でも認めてほしい、そして許せない、でも好きだ…いろいろ気持ちが交錯して、彼の前でスピーチをしているうちにどうしても愛憎が止まらなくなり暴走し始めるという長編のコントがありまして、これは僕の30代前半の代表作なので、TOKUZOでまたやらせてもらいたいなと思って。これはぜひ見てもらいたいです。コントなのになぜか少しグッと来るような…自分も来ちゃうんですよ、このコントは。そんなのを二日間に渡ってガツンと。初日の海外体験談の方は本当に同時体験で、二日目はコントで。ナンセンスとヒューマニズム、シュールと人情、筋書きとアドリブという、面白いことのふたつの要素がぶつかり合うようなものにしたいと思っていますね。人が痛い目に遭っている様子が面白いというのはなくて、フィクションがあって、どこまでが決め事なのかというような「今どこまで今やってんの?」ということの両方をスリリングに楽しんでいただけるんじゃないかと。


コントの作品作りのテーマにしているのは、どんなことですか?

人間とSFと両方です。20代前半は既製のものを壊す可能性のあるものにワクワクしていました。笑いも、いわゆる敷居の下がったものよりは、ちょっとパンクな、何かを壊すものが好きだったんです。だからずっと何を喋っているのかわかんないようなもので面白いものを目指していたんですけど、大体、袋小路にぶち当たっていくんですよね。やっぱりリアリティというところにぶつかって。それでリアリティを追求していた時期があって、そうするとだんだん人間が面白くなってきて。「メンツとかにこだわりたくねぇんだよ」って言っているのにメンツのことしか気にしていない人とか、本当のことを言い当てられたときの目の泳ぎ方とかが本当に面白くて。ウルトラセブンもそうなんですけど、底辺に追いやられた人とか、マイナーな領域に押し込められた人が反旗するというか、「それだけは許せねぇ」っていうそのこだわり、一般から見たらそこはいいじゃないっていうことなんだけど、そこに全勢力を上げて反旗している姿とかに打たれちゃうっていう。どうしてもそういうのをテーマに持って行きたくなっちゃうんですよね。矢面に立つ人間に対する賛辞というのがテーマですね。



7/1 TUESDAY
清水宏のカムサムニダ! ニーハオ!
韓国・台湾コメディ大冒険!!

チケット発売中

7/2 WEDNESDAY
清水宏の情熱コント大陸
チケット発売中

<2公演共通>
■会場/TOKUZO
■開演/19:30
■料金/全席自由
前売各¥2,800 当日各¥3,300
2日間通し券 前売¥5,000(TOKUZOのみ取扱い)
■お問合せ/TOKUZO TEL.052-733-3709
※未就学児入場不可
※別途飲食代が必要