HOME > Web 限定インタビュー > 坂田晃一プロデュース公演「弦」インタビュー

名古屋フィルハーモニー交響楽団のコントラバス奏者・坂田晃一がプロデュースする演奏会シリーズが始動します。第1回のテーマは「弦」。彼が絶大な信頼を寄せる名フィルメンバーが集結し、さまざまな編成で弦楽器の楽しみを広げてくれます。今回は、6人の出演者のうち4人が意気込みを語ってくれました。

弦楽器の魅力、楽しみ方を改めて教えてください。

坂田晃一(コントラバス):弦楽器といっても種類は様々で、大小さまざまな楽器から出る音の違いがまず面白いところだと思いますし、それぞれの役割を生かした編成で、多彩なパターンの弦楽器の音を楽しめるのが魅力です。今回の企画では、皆さんになじみの深い弦楽四重奏はもちろん、コントラバスがメロディを弾くパターンなど、さまざまな編成で多彩な弦楽器の音を楽しんでいただけるプログラムを用意しています。また、弦楽器に焦点を当てつつホルンを取り入れているのも、大きなこだわりのひとつです。管楽器がひとり入ると、いいスパイスになるんです。ホルンがソロで弦楽器が伴奏を担当する楽曲もあるんですよ。いずれにしても、1楽章のみなど短い曲をたくさん聴いていただいて、弦楽のバリエーションの豊かさを感じてもらえたらと思っています。

今回、唯一の管楽器奏者である安土さんから、それぞれの楽器とメンバーの魅力についてお話しいただけますか?

安土真弓(ホルン):ホルンという楽器は、オーケストラでもいろいろな楽器と一緒に演奏することが多いんです。私たちが頼りにしているのは、全体のベースラインを担うコントラバス。坂田さんには私が名フィルに入団した当初からお世話になっていて、人間的にも頼りにしています。家にゴキブリが出た時に退治しにきてもらったりとか(笑)。ヴィオラはホルンと音域が近いので、同じ動きをすることが多いんです。ヴィオラの旋律に対してホルンが肉付けをする時もあるし、逆にホルンの旋律に対してヴィオラがふわっと柔らかく支えてくれたり…。お互い一緒に歩いているパートナーという感覚です。今村さんにも昔からお世話になっていて、勝手に親戚のように思っています。ヴァイオリンは、オーケストラの中で主旋律を担うことが多い楽器ですが、ホルンとも密接な関係にあります。ヴァイオリンとホルンの室内楽もたくさん残されているんです。どちらも4オクターブカバーできるので、両者が絡むとすごくいい響きがする。そのことをいろいろな作曲家が実感し、多くの曲を書いたんでしょうね。小泉さんともご近所づきあいをさせていただいたり、親しい仲です。


室内楽の場合、演奏家同士の関係性はやはり重要ですか?

安土:大事だと思います。少人数で演奏する時は、いろいろディスカッションしながら進めていくので、変な気遣いや遠慮が生まれてしまうと楽しくないですし。気心が知れたメンバーで音を作っていくというのが、室内楽の一番の魅力だと思います。

ロッシーニやハイドンの曲が予定されていますが、それぞれオペラや交響曲のイメージが強い作曲家です。彼らにとって、室内楽の曲はどのような位置付けだったのでしょうか?

今村聡子(ヴィオラ):貴族が自宅のサロンなどを会場に、仲間内で開いたのが室内楽の演奏会。そのための楽曲を作曲家に依頼していたんですね。弦楽四重奏というものに対して作曲家が挑戦的になっていったのは、ロマン派以降になってからだと思います。

坂田:今回、ロッシーニ「チェロとコントラバスのための二重奏曲より第1楽章」を演奏予定です。チェロとコントラバスのデュオというのは珍しい編成で、ロッシーニのような名作曲家が書いてくれたのは、コントラバス奏者にとっては本当にありがたいことです。ふたつの低音がどのように響き合うのかを楽しんでいただきたいですね。


イザイ「2本のヴァイオリンのためのソナタ」もラインナップされています。

小泉 悠(ヴァイオリン):ヴァイオリンのデュオはバッハの時代からたくさんありますが、この曲は5本の指に入るほど難しい曲だと思います。2本のヴァイオリンでずっと和音を引き続けるシーンが多く、超絶技巧としていろいろな技術が必要です。イザイは和音もハーモニーも、とても不思議な独特の味を持っている作曲家で、ヴァイオリニストでもあります。ヴァイオリン2本で細部までいろいろな音色やフレーズを作っていくのが難しい曲ですが、ふたりのヴァイオリニストが個性をぶつけ合うところに面白みがあると思います。今回は、僕と植村太郎さんが演奏します。


ドヴォルザークの「弦楽五重奏曲 第2番 ト長調Op.77より第1楽章」も演奏予定です。ドヴォルザークはヴィオラ奏者だったのですね。

今村:はい。ヴィオラにすごく魅力的な旋律がたくさん出てくるのが特徴です。ドヴォルザークは、どんなジャンルでもヴィオラの見せ場を作ってくれるので、ヴィオラ奏者にとっては弾きがいのある作品が多いですよ。

坂田:この曲にもコントラバスが入っているのが肝です。コントラバスが入った室内楽の曲は本当に少ないのですが、ドヴォルザークのこの五重奏はコントラバスがオリジナルとして取り入れられています。今回は第1楽章だけですが、それでも10分以上ある大曲なので、弦楽五重奏の魅力を存分に堪能していただけるはずです。

安土さんが入られるのがモーツァルト「ホルン五重奏」です。

安土:モーツァルトは弦楽器やピアノの協奏曲をたくさん書いていますが、管楽器に関しては各楽器1曲ずつぐらいしかありません。その中でホルンの曲は4曲も書いているんです。その理由は、仲のいいホルン奏者がいたからだと言われています。彼のおかげでホルンの名曲がたくさん残されているんですね。「ホルン五重奏」は、私たちホルン奏者がやってみたいけどなかなか演奏する機会のない曲です。当日は、曲が生まれた背景などもお話しできるといいなと思っています。

今後、このシリーズをどのように育てていきたいですか?

坂田:いろんなパターンを作っていけると思っています。例えば、ピアノを入れてみるとか、合唱と一緒にやるとか、最終的には室内オーケストラまで行くとか…。まずは第一弾として弦楽器のメンバーを主軸にしましたが、今後、新たなメンバーをどんどん加えてチームにしていきたいですね。

今村:「クラシックの演奏会を聴くなら名古屋」というイメージがあると思いますが、「稲沢にもいいホールがあって質の高い演奏を聴ける」という証明ができるものにしたいと考えています。名古屋から電車で10分程度という立地ですし、私も含めメンバーの多くが稲沢にゆかりがあって、この街に大いに親しみを持っています。このシリーズが、市民の皆さんが気軽に楽しめる音楽文化のひとつに育っていくといいなと思います。


10/9 SUNDAY チケット発売中
稲沢の音楽家シリーズ 坂田晃一プロデュース公演vol.1
「弦」

◎出演/コントラバス:坂田晃一、ヴァイオリン:植村太郎、小泉 悠、ヴィオラ:今村聡子、チェロ:アイリス・レゲヴ、ホルン:安土真弓
■ 会場/名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)中ホール
■ 開演/16:00
■料金(税込)/全席指定 ¥3,000
■お問合せ/名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)TEL.0587-24-5111
※未就学児入場不可