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歌舞伎界を牽引する中村勘九郎と中村七之助が全国巡業をスタートさせる。
地方で暮らすファンからの手紙をきっかけに始まった巡業も17年目。
大都市でなくても多くの人が歌舞伎に親しめるよう兄弟と一門で奮闘してきた。
東海地方では今年、春暁特別公演と題して一宮市民会館に登場。
演目は、桜と酒とタップに笑顔あふれる「高坏」、早替わりが圧巻の「隅田川千種濡事」。
好評のトークコーナーでは、芸談にも花を咲かせます!

――今年も巡業が始まりますね。

勘九郎:私たちにとって、この全国巡業はとても大事な公演。コロナ禍において感染症予防対策を徹底してくれているスタッフのおかげだと思っています。

七之助:2005年から続く巡業も17年目を迎えることができました。東京などの劇場に足を運んでいただくことができないお客様のため、私たちのほうが出向いて歌舞伎に触れていただこうと考えたのがきっかけだったんですよね。

勘九郎:17年やってきて、今年の栃木公演でやっと47都道府県を制覇できます。ただ、毎回初めて歌舞伎を見たという方を尋ねると、いまだに結構手が挙がる。だから47都道府県を回って満足するのではなく、より精力的にやっていこうと次への気合いが入っています。

――演目の「高坏(たかつき)」「隅田川千種濡事(すみだがわちぐさのぬれごと)」についてお聞かせください。

勘九郎:「高坏」は祖父の十七代目中村勘三郎が今の演出にしたので、中村屋にとって家の芸と言っても過言ではない大切な演目のひとつ。四つの役をすべて一門でできるのもうれしく思います。巡業はお弟子さん含め、みんなで作り上げていくことも主眼ですから。とても華やかな作品ですし、桜満開の中お酒を飲む様子が描かれるので、今この時世にちょっとでもお花見気分を味わっていただけたらいいなと思っています。

七之助:「隅田川千種濡事」は「於染久松色読販」、通称「お染の七役」という長い芝居の最後の段切れの舞踊です。見どころとなる早替わりはエンタテインメント性の高い歌舞伎の趣向なんですが、生で見たことがないという方も多く、以前回った時お客様がとても喜んでくださいました。そこで今回は兄が中村屋ゆかりの「高坏」をやり、最後は私の早替わりを見ていただきたく、これらの演目を選びました。


――「隅田川」の早替わり同様、「高坏」は高下駄でのタップダンスが見せ場ですね。

勘九郎:でもタップも早替わりも、私たちが思うには、オマケなんですよ。そこまでに次郎冠者がお酒に酔って、桜の風情やお酒の匂い……、いわばピンク色の粉をお客様に振りまくんです。また七之助であれば「お染の七役」というベースがあって、やはり人間関係や風情、匂いが大切になります。もちろん技術は完璧でなければいけませんが、そこに重点を置いているわけではありません。「高坏」で言えば、次郎冠者が出ていく時、お客様の中で桜が満開になっているかどうかがポイントですね。

七之助:早替わりはお弟子さんたちとの連携も肝心で、「ピットイン」と言っておりますけど、僕は突っ立っているだけ(笑)。あとは、踊りですから手の所作など見え方は工夫していますね。ただ、踊りは見るだけでは意図がわからないところもあるので、歌詞などが詳しく解説されたパンフレットも参考にしていただくと楽しみやすいと思います。

勘九郎:そういえば、「高坏」の下駄を新調しました。過去に何回も踊ってきましたが、今までは父の下駄を使っていたんですよ。でも、やっぱり人それぞれのサイズ感もあるので新調したんです。自分の下駄の最初のお目見えが春暁特別公演になりますね。

――期待の中村鶴松さんについても、ひと言いただけますか。

勘九郎:鶴松はここ数年、本当に頑張っていますし、今回つとめる「高坏」の高足売は大事な役なので、鶴松にまた中村屋の芸を伝えられて、少しでもステップアップできる公演になればいいなと考えています。トークコーナーでは彼が中心になって話してくれるはずなので、人となりも楽しんでいただけると思いますよ(笑)。



◎Interview&Text/小島祐未子
◎Photos/中田智章


3/17 THURSDAY 【1/22(土)10:00〜チケット発売】
中村勘九郎 中村七之助 春暁特別公演2022
■会場/一宮市民会館
■開演/11:00/15:00
■料金(税込)/全席指定 S席\9,000 A席\8,000 B席\5,000
■お問合せ/東海テレビ放送 事業部 TEL052-954-1107
※未就学児入場不可