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「小田洋介」Web 限定インタビュー
取材日:2014.09.18


新潟・佐渡を拠点に、太鼓を中心とした
伝統的な音楽芸能によるパフォーマンスを繰り広げる、鼓童。
近年は、歌舞伎俳優の坂東玉三郎を芸術監督に迎えた公演でも注目を集めています。
今年の全国ツアーでは、みよし市にも登場。
メンバーの小田洋介に、今、そしてこれからの鼓童について聞きました。

現在、全国ツアー中の「鼓童ワン・アース・ツアー〜神秘」は、芸術監督・演出に坂東玉三郎さんを迎えた公演の第二弾です。玉三郎さんのもとで舞台を務めた経験は、皆さんにどんな影響をもたらしましたか?

僕たち鼓童というグループは、どこかの芸能の出でもなければ、そういう人たちが集まってできたグループでもないんですよね。つまりバックボーンがないんです。例えば地域の芸能、岸和田のだんじりとか、三宅島の三宅太鼓とか、その地域で生まれて育った人たちが脈々と受け継いでいるという事実と歴史…そういうものが僕たちにはない。秩父の方の太鼓を習って自分たち流にアレンジして舞台に乗せたりしていましたが、それはやっぱりカバーなんですよね。でも玉三郎さんがいらして、お前たちは本当は何者なのか、太鼓とは何なのかという投げかけをしてくださったと思います。言葉ではおっしゃいませんけどね。そして、より深いところ、より高いところに鼓童を連れて導いてくださいました。実際に、さまざまな演奏方法や演奏技術を郷土のものから学ぶ以上に、自分たちで開発するものもたくさんありました。例えば声を出さなければいけない曲で、郷土では声を出しているけれども、そこから外れたときに本当に声は必要なのか。芸術として太鼓を見たときに、それは本当に必要なのかどうか。そんな問いかけも同時にいただきました。今、鼓童はまだ過程にいますが、芸術としての太鼓を目指せるグループにようやくなれたんじゃないかなと思います。


玉三郎さんの演出に、ハッとさせられるところはありましたか?

やはりコンセプトがちゃんとあることですね。表に出しているコンセプトとは別に、自分たちが成長するべきテーマや、乗り越えるべき課題がはっきりしていることでしょうか。

メンバーの皆さんは、ソロや小編成での活躍もなさっています。ソロでの自己表現を目指すのも鼓童のテーマとしてあるのでしょうか?

結局、借りているものなんですよね。借りているものの中でソロをして、借りものの中でお客さんに拍手をいただいていた。それを取っ払って芸能も何もなくなって、太鼓と自分たちだけが残されたときに、それを「鼓童」と言えるのかどうか…。太鼓と自分がいて、自分たちがいて、「鼓童だ」というようにならないといけない。郷土の芸能の力を借りてそれを鼓童だと思っているようでは、自分たちには先がないです。

ライヴを拝見したとき、最初に小田さんが叩かれた一音で会場の空間がピーンと張りつめたのが印象的で、太鼓というのはライヴが命なんだと実感しました。今回の公演の見どころを教えてください。

ほぼ新曲です。新しい郷土の芸というものを再発掘しつつ、鼓童として前を向いている作品ですね。その地域の懐かしさ…それがそのまま出てくるという訳ではないけど、どこか昔こういう風景があったなという。僕が子どもの頃は見世物小屋があったんですよ。あのノリですよね。親に連れられて小さいテントみたいなところで、100円とか200円払って、こうやって覗いて見てた、ああいう懐かしさ。子どもの頃にしか感じられない懐かしいものを感じていただけるんじゃないでしょうか。でも、それをそのまま表現しているというよりは、凄く前衛的な作品になっていると思います。


見る側は想像力を掻き立てられそうです。

そうですね。だから、具体的ではないですね。龍とか鬼とかが出てきますが、でもその世界観は具体的ではない。どこか記憶を刺激するような感じですよね。その記憶のストーリーというものは見ている方ご自身のものなんです。今回、僕も演出補佐という形で、振り付けとか作曲に関わっていますが、本当にイチから作っているという感じです。衣装も、今回は鼓童の半纏は一切出てきません。そういう面で、初めての作品でもありますね。半纏を脱いだときに、郷土を離したときに、自分たちに何が残るのか、自分たちは何者なのか。で、僕たちは鼓童になれたんだと思うんですよ。まだもうちょっと時間がかかるかもしれないけど、鼓童になりつつある気はしています。


グループを新しく改革していくというのは、ワクワクしますね。

これまで、鼓童にいながら「鼓童とはなんぞや」と悩む時期もありました。でも、僕の中でそれを凄く納得させてくれたのは、やはり玉三郎さんの存在です。鼓童というのはどうあるべきか、どういう集団であるのか…ひとつの答えにはならないけれど、道のようなものがようやく見えたような気がしています。ただ、これに依存してはならないし、そこにあぐらをかいてはいけない。自分たちの力じゃなくて郷土の力。今まで築いてきた鼓童の歴史を背負ってきてくれた先輩たちのおかげで、自分たちが拍手をいただいている。そこに気づかなければいけない。それを全部手放したときこそ、初めて自分たちの評価が始まり、それを継承していくんだと思います。裸になる、何も持たないということを今後どのように継承していくかというのが、僕たちの仕事かもしれません。

ひとつの作品そのものが、より大事になってきそうですね。

そうですね。作品を通してメンバーひとりひとりに、どういう教育をしていくかという。太鼓はもう、凄くうまく叩けるんです。想像を絶するような練習を死ぬほどしますから。ほかの人が見たら、地獄だと思うかもしれない。僕らは楽しいんですけど。体力的にも精神的にも、追い込まれるときは半端無く追い込まれますから。でも、好きなことだから出来る。ただ、それと普段の生活というのはまた別ですが。ミュージシャンとかアーティストは何をやってもいいとか、そういう考え方は絶対にダメだと思います。人間的に真っ当じゃない人がちゃんとしたものを作れる訳がないと思います。いただく拍手に奢ってはいけない。それで自分の芸が汚れないように、そこには注意を払っています。

そういうスピリットは、日本の伝統芸能に通じるものかもしれません。

そうですよね。実際にそこに生まれて育った訳でもない郷土の伝統的なものを学ぶ理由は、心を学ぶことだと思います。


10/19 SUNDAY
鼓童ワン・アース・ツアー 2014 〜神秘
チケット発売中
■会場/みよし市文化センター サンアート
■開演/18:30
■料金(税込)/¥5,500
■お問合せ/みよし市文化センター サンアート TEL.0561-32-2000
※未就学児入場不可可