HOME > Web 限定インタビュー > 「木村佑太(鼓童)」インタビュー

太鼓を中心に音楽芸能を追求する「鼓童」。この新作の舞台は、韓国太鼓(チャンゴ)演奏家のチェ・ジェチョル(崔在哲)氏をゲストに迎えての共演作となります。チェ氏が提唱する「歩みの中から生まれてくるリズム」を共に追求した意欲作です。

鼓童の研修所に入られてから10年ですね。きっかけは?

保育園の授業がきっかけで3歳から太鼓を始めて以来、やるもやめるも言わずして流れで続けていました。それが中学生のときに鼓童の舞台を観て、”太鼓ってこんなにかっこいいんだな”と、どうせならここに身を置いて太鼓を続けたいなと思ったのがきっかけです。


研修所での生活はどのようなものでしたか?

まず、携帯電話とテレビ、飲酒、喫煙、所内での恋愛が禁止事項でした。朝5時に起きてランニングから始まり、食事以外はずっと稽古や勉強が続くような一日です。太鼓や芸能の元の部分というのは稲作や畑作業などの労働歌や五穀豊穣を祈願した舞などから生まれたこともあり、実際に農作業を体験してその体の使い方を体得するような経験もしました。例えば岩手の北上に鬼剣舞(おにけんばい)という芸能があるのですが、この舞の足の運びは、田んぼから足を抜くときにつま先を最後に抜くという動きが振りに取り入れられています。この芸能がどのように生まれたか、この動きがなぜ生まれたかということを知識と実技の両方から身につけることができました、そして芸能を学ぶことももちろんですが、まずは人々の生活を知ること、その生活ができるようになることを前提に、複合的に学ぶ期間だったと思います。

規則もあって厳しい部分もあったと思いますが、何にも邪魔されずひとつのことに打ち込める貴重な時間でもありましたね。

そうですね。でもそのことに気づけるまでは、すごく大変でした笑。便利なものが身の回りにない状態だったんですが、それを無駄として省いたときに、自分は太鼓とそれにまつわることしか考えなくていいんだなということに気づけたんです。研修所での2年間というのは、まさしく吸収する時間だと私達は捉えています。その時間があったからこそ、例えば公演で全国各地にお邪魔した時に、その土地の空気感や人々の様子を自分なりに感じ取ることもできます。今回は刈谷市にお邪魔しますが、刈谷の風景を見た時にここに住むこういう方々に向けてどんな演奏をしようとか、そんなことも感じられるようになったんじゃないかなと思います。

今回の鼓童十二月特別公演「山踏み」は、韓国太鼓(チャンゴ)演奏家のチェ・ジェチョル(崔在哲)さんとの共演です。

チャンゴが奏でる音楽が持っている独特なリズムと私たちの太鼓が持つ「間」がどう交わっていくか楽しみです。太鼓の作りはもちろん、バチの形状の違いからか、チャンゴは日本の太鼓ほど大きな音が出ません。そこはお互いの楽器の特徴を理解し認め合う必要があると思います。私達の演奏が少し音量を下げることでチャンゴの音色が聞こえてくるとか、そんな受け入れ方ができればいいかと思います。普段私は笛を担当しているので、私が笛を吹くときは太鼓が音量を下げてくれる。今回はそこにチャンゴが加わって、お互いどんなやりとりが生まれるか、そんなコミュニケーションも楽しみです。

日韓の関係にも同じことが体現できるといいですね。

鼓童の活動理念に「相互理解し合う」という言葉があります。それを私たちは自分たちの音楽で表現することで、皆さんに伝わればいいなと思っています。


「山踏み」舞台風景◎撮影/足立雅子


チェさんの活動に「チャンゴ・ウォーク」というものがあります。歩くことでチャンゴとは何かを追求するということです。また、歩くことから生まれるリズムというものも提唱されていますね。

普段の私達の演奏は動きや移動がそれほど多くはありませんが、実は今回の演奏メンバーは作品作りのために「タイコウォーク」として、楽器を演奏しながら佐渡島を一周しているんです。佐渡の自然を感じながらチェさんの言う「歩みの中から生まれるリズム」を探ろうという試みです。

どんな公演になるのかとても楽しみですね。木村さんは現在笛を担当されていますが、これはどのようなきっかけでしたか?

私も太鼓を叩いていたのですが、手を怪我してしまい笛に転向しました。太鼓をもちろん叩きたかったですけど、鼓童にいるためなら私は笛を突き詰めようと考えるようになりました。今はとても充実した気持ちで演奏しています。太鼓を叩きたくて入った鼓童ですが、今はそれよりも鼓童の集団性や作り出す音楽に惹かれているんだと感じています。

笛の魅力をどんなところに感じていますか?

どの西洋楽器にもない音の魅力だと思います。音の特性はフルートとすごく似ているのですが、雑味があるんです。ヨーロッパの家屋は石造りだから、音に雑味がない方が聞き取りやすいんですけど、日本の木造建築の場合は雑味がないとどんどん音が吸収されてしまうらしいんです。結果、小さい音しか聞こえないんですが、それが計算されている楽器なんです。あと、構造がシンプルなので吹き手によって音色や音の出し方が変幻自在なんです。ある意味この「完成されていない楽器」というのが僕の中で魅力的な要素なのかなと思います。

◎Interview&Text/福村明弘



12/6 FRIDAY
鼓童十二月特別公演 山踏み
【チケット発売中】
◼️会場/刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
◼️開演/19:00
◼️料金(税込)/一般¥7,000 U25¥3,500
◼️お問合せ/中京テレビクリエイション TEL.052-588-4477(平日 11:00〜17:00)
※未就学児入場不可