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御園座の恒例、陽春花形歌舞伎が4月15日(金)から開幕。
座頭をつとめるのはテレビドラマでも存在感を放つ尾上菊之助だ。
菊之助は、地唄の名曲「雪」にのって女性の過去の恋を回想したかと思えば
「身替座禅」では浮気の後の男心を、ほろ酔いのまま舞い踊る……!!
いつの時代も変わらぬ男と女の情を、舞踊・舞踊劇で表現するプログラム。
間には解説「歌舞伎のみかた」も入るので、初心者にも親しみやすい。
コロナ禍において、歌舞伎を、エンタテインメントを
深く考え続けた菊之助が、名古屋・御園座興行への想いを語る――


コロナ禍のご苦労は続いていますか。

エンタテインメントの持つ力について、あらためて考える時間をいただいた想いです。歌舞伎が生活に必要かどうかは疑問ですが、心の栄養、心の必需品ではあるのかなと。お客様が不自由な生活の中で、ほんの数時間でも日常を忘れ、何かを持って帰っていただけたらうれしいですね。

公演の前半は舞踊2題です。見どころをお聞かせください。

「相生獅子」には、若い女形の華やかさがあります。恋の悩みを表す場面から手踊りになり、石橋物らしく毛振りで終わる。女性の獅子の狂いなので、光り輝くようなんです。一方「雪」はお座敷舞いから発展した地唄舞いで、人間国宝である富山清琴先生の歌に合わせて私が踊ります。「相生獅子」に対して「雪」は影を楽しんでいただく感覚。「相生獅子」が現在の恋であるのに対し、「雪」は過去の恋を振り返っているのも面白いですよね。

「雪」の稽古はいかがでしたか。

今回は尾上菊之丞さんに振付していただき、菊之丞さんのお祖父様と菊之丞さんの振付が反映された形です。地唄舞いというのは一瞬たりとも止まることがないんですよ。静止しているようでも、どこかがジワーッと動いている。それが地唄舞いの見どころでもあるんです。そして富山清琴先生が語っていても、自分の身体があたかも先生の言葉を発しているように動き続けるというのか……。動きが非常に抑制された「雪」の中で、過去の恋人を思う女性の心情をどれだけ表せるのか、挑戦ですね。

舞踊の楽しみ方のコツは?

「身替座禅」はポピュラーになりましたね。私は、身分の高い女性と結婚したゆえに窮屈さを感じ、遊女のもとへ出掛けてしまう山蔭右京をつとめます。身の丈に合わない結婚や、その心情は、海外でも通じるほど普遍的な問題。逆に言えば、夫は妻を、妻は夫を大切にしたいという想いが込められているのかもしれませんし、考えさせられることは多いです。ご夫婦でご覧になったら、どんな反応になるんだろう? もっと仲睦まじくなって帰っていただけたらいいですね。


座組の方々の魅力を教えてください。

彦三郎さんは幼なじみと言っていいほど、ずっと一緒に舞台をやってきて気心も知れています。前回「身替座禅」の右京をつとめた時、彦三郎さんは太郎冠者だったんですけど、今回は奥方の玉の井をやっていただきます。また新しく二人でこの演目を続けていきたいという想いの第一歩ですね。続いて梅枝さんですが、父(菊五郎)が時蔵さんと共演することが多いように、私は梅枝さん(時蔵の長男)と共演することが多いんですよ。今回ご一緒の演目はありませんが、彼が作り上げる女形の心理描写や技は素晴らしく、信頼できる仲間です。また、萬太郎さん(時蔵の次男)も同じく気心の知れた存在。口跡が良くて話も上手なので、彼の解説によって歌舞伎の垣根が乗り越えやすくなるのではないかと。それで今回もお願いしました。莟玉(かんぎょく)さんは若手の中でもきれいで、女形の支度をすると本当に光り輝いている。今回ご一緒するのが楽しみですよ。

ところで、朝ドラ「カムカムエヴリバディ」の反響はいかがですか。

番組HPや私のインスタグラムでも非常に多くのコメント、励ましの言葉をいただきました。そういう作品に出られた、ご縁をいただいたということをありがたく思っているのが正直なところです。もちろんテレビからの興味でお越しいただくのは大歓迎。歌舞伎や舞台は、知っている人を生で観るのがいちばんの動機ですから。テレビで知って、観に来ていただけたらとてもうれしいです。


2021年6月の博多座公演・松竹提供

御園座が休館から再開したばかりの2020年10月、菊之助さんが出演なさった歌舞伎公演は拍手が鳴りやみませんでした。

御園座さんには若い頃から来させてもらい、挑戦的なお役も勉強させていただきました。東京と関西の中間にあたる名古屋は、昔から芸どころとしての基盤があり、御園座さんにも名古屋の方々にも歌舞伎を受け入れていただいた。その歴史が2年前の公演につながったんです。名古屋での歌舞伎は絶対なくなってほしくないと思っていた中、公演が再開できて、たくさんのお客様にたくさんの拍手をいただきました。歌舞伎役者が御園座さんと名古屋の方々に恩返しをしていく意味でも、その時の喜びを忘れず大事につとめていきたい。名古屋での歌舞伎を栄えさせたいと強く思っています。


4/15 FRIDAY~4/24 SUNDAY
陽春花形歌舞伎
一、上「相生獅子」
  下「雪」
二、解説「歌舞伎のみかた」
三、新古演劇十種の内「身替座禅」


チケット発売中
■会場/御園座
■開演/12:00/16:00 ※18日(月)16:00・24日(日)16:00は休演。
■料金(税込)/S席 ¥12,000 A席 ¥8,000 B席 ¥5,000円 C席 ¥2,000円 D席 ¥1,000円
※C席D席は売り切れ
■お問合せ/御園座 TEL052-308-8899(10時〜16時)