HOME > Web 限定インタビュー > 鼓童 阿部好江×齊藤栄一インタビュー

太鼓芸能集団・鼓童のワン・アース・ツアーがスタート。昨年、初演し好評だった「翔走」の再演で全国を巡ります。歴史あるものから鼓童の今を象徴するものまで、個性的な演目を組み合わせた濃密なステージ。12月の名古屋公演に向けて、ふたりのキーパーソンに意気込みを聞きました。

「翔走」は、阿部さんが演出を手がけられたのですね。

阿部:これまでプレイヤーとして活動する中で小さな公演の演出を手がけたことはありましたが、「翔走」のように大きな劇場で上演する作品は初めてです。鼓童の公演はプレイヤーが演出することが多くて、最近は若手の中にも演出に挑戦する人が増えています。基本的には演出担当がストーリーや演目を決めますが、音楽リーダーと一緒におこなうこともありますね。「翔走」の演出をやってみないかと言われたのが一昨年。コロナ禍が続きフラストレーションが溜まる中でも若いメンバーたちがすごく能動的にいろんなチャレンジをしていたのが印象的で、彼らのエネルギーを存分に発揮できる舞台を作りたいと思って臨みました。

齊藤:まさに溜まりに溜まったエネルギーを噴出させるように次から次へと演目が繰り出されつつ、全体を通して緩急がしっかりついたプログラムですね。

阿部:演目ひとつひとつに個性があって、太鼓のいろいろな奏法や音色を味わえる内容になっていると思います。生半可な気持ちでは叩ききれないようなハードな演目もありますよ。太鼓って、音だけじゃなく振動で体感できるものだと思います。演奏者の息遣いとともに、そのエネルギーをぜひ感じていただきたいです。今回は再演ということでキャストも若干入れ替わります。人が変われば雰囲気も変わりますから、そこを生かした演出ができればと思っています。



齊藤さんは初演に続き二度目のご出演です。前回この作品に取り組まれて、どんなところに魅力を感じましたか?

齊藤:「翔走」には新曲が入っています。この作品のために鼓童メンバーの住吉佑太が新しく書いたもので、少し難しい曲なんです。初演のときは緊張感を持ちながらも楽しく取り組みましたが、やはり時間が経っていますので、リズムのニュアンスの出し方やソロのシーンなど、ビデオを見て個人的に練習しているところです。僕は舞台が大好きなので毎回、新たな気持ちで取り組んでいます。「翔走」も、叩くたびにアイデアや意欲が引き出されて楽しく演奏できる作品ですね。

作品づくりにおいて、キャストの皆さんからはどのようなアイデアが出ましたか?

齊藤:阿部からもらったストーリーをもとに「ここは、こうしよう」「こんなリズムにしてみようか」と、みんなでワイワイ言いながら作っていきました。どんどんアイデアが出て全てやりたくなっちゃって、交通整理が大変だったんじゃないかな。

阿部:私自身がやってみたいこと、メンバーの顔ぶれに合わせて「この人に、こういうものをやってほしい」という演目を組み合わせて構成しました。ストーリーは重視せず、個性ある演目で組み立てたシンプルな作りです。結果的に揃えてみたらすごかったという(笑)。すごく体力を使いますよね?

齊藤:とても楽しかったけど、1公演終えてみると「これ、ツアーでやるのは無理だね」って言うぐらい…。

阿部:初演では、若手からも結構そういう声を聞きましたね。今回はツアーなんですけど(笑)。



とても密度の濃いプログラムなのですね。再演では、どんなパフォーマンスを目指しますか?

齊藤:舞台は、曲を演奏すればいいというものではありません。演者とお客さまがちゃんとキャッチボールできる関係を築かなきゃいけない。いつも、自分の演奏がお客さまに届いているかを確認しながら、客席から返ってきたものに上乗せしてまた届ける、ということを心がけています。今回も自分の見せ場を作ろうという意識はなくて、お客さまとその場を共有できる空間づくりを目指します。うまく演奏するだけでは「上手だったね」で終わっちゃいますから。「お客さまとのキャッチボールを大切に」というのは、永六輔さんの教えです。永さんは鼓童の前身・佐渡の國 鬼太鼓座の創設時から深く関わってくださって、僕も若い頃から散々絞られたメンバーのひとりです。本当の意味で理解できているかわかりませんが、この教えを胸に舞台に立っています。

◎Interview & Text /稲葉敦子



12/6 WEDNESDAY 【チケット完売】
鼓童「ワン・アース・ツアー2023 〜翔走」
■会場/Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
■開演/18:30
■料金(税込)/全席指定 前売 一般¥6,800 U-25¥3,000 
■お問合せ/中京テレビクリエイション TEL.052-588-4477
※未就学児入場不可
※当日券あり。前売料金と同料金。