HOME > 平賀マリカ 歌う生活 > 12「君に幸せあれ!」
先日、秋晴れの美しい週末に、姪が結婚式を挙げました。その日は特に、新婦の父親(私の兄)のテンションはとても高かったのです。
それもそのはずですよね。ずっと一緒に住んでいた娘が嫁ぐのですから、寂しさと、嬉しさがこみ上げていたのだと思います。
「恥ずかしくて絶対に最後に挨拶なんてできない。お礼の一言で済ます」なんていう兄(実は小学校の教師)に対して、「かっこ悪いわよ。いつも教壇に立っているのだから、慣れていないわけじゃないし、しっかりしてよ。」と不安そうな兄に渇をいれながら、神社での式に出席した後、披露宴会場へ。
遠い席から見守っていた披露宴も終盤。花束進呈と最後の挨拶。どの結婚式でも最後の挨拶では感動してしまいます。花嫁が両親に当てた手紙を涙ながらに読み、涙の花束贈呈が始まりました。私はカメラを持ち、あっちこっちで嬉々としてシャッターを切ります。新郎のお父様が見事な挨拶をした後、いよいよ兄の最後の言葉。
「皆さん、私は、何も何も、言えませんが、こ、こ、これからもこの二人を見守ってく、くだ…ぐわわ~」と泣き崩れる。あらら~、やってしまった。困ったなあ、と心配したその瞬間、「かぜ~に吹かれてても♪、あめ~に打たれても♪、信じた~愛~に背を向けるな~♪※」と涙声で歌ったのです。私も一瞬、息を呑みました。会場は一瞬の静けさの後に大拍手。「何も言えないので、全てはこの歌のひとふしにあります。お互いに信じた愛だからいい時も、悪い時も手をつないで元気に二人で生きていって」ぐずぐずぐず~~。とまた泣き崩れました。その姿は瞬時にして会場の感動を一気にかっさらっていきました。会場にいた誰もが涙、私も涙。プロの私が歌ってもこんな感動は起こせなかったかも。
この曲は確か、“乾杯”。この歌詞ってどの辺だっけ?サビはよく聞くけれど。突然、あまり気に留めていなかった曲に思わず興味がわきました。
“乾杯”という歌は、結婚式には必ずと言っていいほど歌われる曲。この日も、新郎の友人が余興の中で歌い、また誰か歌っている、くらいの感覚でした。が、兄が歌ったアカペラの4小節は、心にがつん、と来てしまいました。
歌で感動を与えるということは、上手い、とか、音響がいいとか、照明がどうとか、プロフェッショナルとか、アマチュアとかではないのですね。言葉よりも自然と気持がこみ上げてきて、思わず歌が出てきてしまった。う~ん、なんか、口下手な兄に歌の真髄を教えられてしまった感じ。そして、つくづく、長渕剛さんのこの曲の歌詞の素晴らしさに感服した、そんな佳き日でした。私も今、新しい人生の一歩を踏み出した姪に心こめて贈りましょう「君に幸せあれ!」