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「常盤貴子」スペシャルインタビュー
取材日:2013.02.08

これまで数々の作品で存在感の際立つヒロインを演じてきた常盤貴子。
映像に、舞台に、活躍の場を広げながら、
女優としてのキャリアを着実に積み重ねてきました。
そんな彼女が新たに挑むのが、舞台「レミング -世界の涯まで連れてって-」。
’60~’70年代カルチャーのカリスマ・寺山修司の作品世界を、
現代にどう甦らせるのか。作品観、役作りについて、
そして女優としてのビジョンについて、気さくに語ってくれました。

日常の中に非日常を持ち込む。
そんな演劇のドラマ性にワクワクする。

5月の舞台「レミング–世界の涯まで連れてって–」は、「維新派」の松本雄吉さんが上演台本・演出を手がけられます。松本さんにはどんな印象をお持ちですか?

私は寺山修司さんのお芝居に間に合わなかった世代なんですけど、想像する寺山さんの作品を演出されるにあたって、確かに一番興味をそそられる方だなと思いました。「松本さんで来たんだ!」という衝撃がありましたね。最初にお話をいただいたときは、正直、笑っちゃった。「やるー!」って(笑)。ずっと「維新派」一本でやってこられた方だし、お会いするまでは、変わってる方なんだろうなと思っていたんです。しかも、’70年代からずっとやってらっしゃるでしょ?だから、より寺山さんの世界観に近い方なんじゃないかなと。だけど、お会いしてみたらすごく柔軟な方で、優しくて面白い方でした。

寺山修司さんについてはいかがですか?常盤さんは、事前にとても勉強されて作品に取り組まれるそうですが。

私は映像の人間だから、日常の中に非日常を持ち込むような感覚のドラマ性に凄くワクワクしちゃうんですね。映像では絶対にあり得ないことじゃないですか。例えばここで何か始まったとしたら、ベケット(フランスの劇作家。不条理劇を代表する作家のひとり)じゃないけど、もう舞台では何か始まるじゃないですか。それはもう本当に「カッコいい!」と演劇に対して思うところなんですよね。寺山修司さんのその感覚というのは、私にとって憧れです。だからその時代に間に合っていたとしても、たぶん好きだろうなと思います。


この作品について、最初に台本を読まれてどんな印象を持たれましたか?

「これはなんだろう、楽譜かな?」と(笑)。見たことがない台本なので、観たことのない舞台になるだろうなという期待は凄くあります。凄く面白いですよ。すべてのキャラクターが疑わしいというか、何が現実で虚構なのか、どこまでが壁なのかもわからないというのが今回のテーマでもあると思います。それを探すのは、たぶんお客さんに委ねられると思うので、本当の演劇体験をしに来ていただく舞台になるんじゃないでしょうか。この作品が上演されていた当時というのは、こうした世界観の作品がほかにもたくさんあったじゃないですか。むしろそういうものが多かった時代でしょ?でも今は、等身大だったりリアルな演劇が多い。そんな中で、この世界観はとても衝撃的だと思うんですよね。だから、凄くびっくりする人が多いでしょうね。


この作品を観る人に一番感じて欲しいこと、考えて欲しいことはどんなことでしょうか?

たぶん、それを個々に考えてもらう舞台になると思うんですね。だから、観客の皆さんに課せられることが多いと思います。「こういう風に観てください」「ここが見どころです」というのがないから、「みんなで考えてください」ということになる。その代わり衝撃はたくさんあると思うので、今までしたことのない体験はできると思います。

松本さんは、稽古場でスタッフ、キャストの方と一緒になって台詞を含めて固めていくとおっしゃっていますが。

舞台の方は、立位置にしても何にしても早めにしっかり決めておきたいそうなんです。だけど私は映像の人間なので、そんなにきっちり決めずに「ご自由に」と言われても、苦じゃないんですよ。この間、私の歌の部分が上がってきたんですけど、松本さんはその場で「こことここを入れ替えようと思ってるんですけど」とおっしゃるんです。そういうことに戸惑う方もいらっしゃいますが、私は「はい。その方が助かるかもしれませんね」という感じで。たぶん、稽古中にもそういうことは多々起きるんだろうなと思っています。だから、ここを叩き台にどう変わっていくのかが面白い、興味のあるところです。先に固めずにキャストの意見も聞いてくださるというのは、凄く嬉しいことですね。

 
リサーチして掘り下げたものを、いつ出すか。
それが俳優としてのセンス。

これまで映像を中心にご活躍されていて、近年は舞台作品にも精力的に挑まれています。今のスタンスで仕事をするにあたって、ターニングポイントになった出来事などはありますか?

けっこういろいろあるんですけどね…。井筒和幸監督の映画「ゲロッパ!」の後かな…役柄で迷っていた時期があって、その頃ちょうどシャーリーズ・セロンの「モンスター」という映画が公開中だったんですね。それで、井筒監督が「あれは観た方がいいよ」と教えてくださったんです。シャーリーズ・セロンが本当に役作りを楽しんでいるから、って。あんなに凄まじい役作りは、人から言われたわけでもないだろうし、そうしないとこの役を与えられないとか、そういうわけでもないじゃないですか。だけど、きっと彼女はこの役をそうした方が面白いと思ってやっている。だから、女優としては凄く勉強になる一本になると思うからと言われて…。それで観たら凄く衝撃でした。あんなにきれいな方があそこまでになるということに、とても希望が持てたんですね。それ以来、作品に取り組むときのリサーチも大好きになったし、役作りというものを楽しむことを学んだんですよね。



リサーチして、作品や役を掘り下げるんですね。

その方が絶対的にその役を愛せるし、自分が一番その役に詳しい人になれるから、誰かに何かを言われても…たとえそれが演出家であっても、私の方が知っているという思いがあるから、きちんと説明ができるじゃないですか。そういうものを持って現場に行って、そこでゼロになるという楽しみを知ってしまったんです。それをいつ自分で出していくかが俳優としてのセンスになっていくと思います。そればかりに囚われず、ほかの人の考えも聞いて、…ココぞというときに出す!それを持っているということの大事さ…自分の中に引き出しをいくつも持っておくというか…それがとても大事だなと思って、勉強になりましたね。

とても気負いなく、いい仕事をたくさんしていらっしゃるように感じます。これからのビジョンは?

自由に、その都度、楽しそうなものを無理せずやっていきたいなと。誰かにやらされているわけでもないし、自分次第ですからね。今は、私が楽しいと思ってやることをきっと多くの方々が楽しんでくださると思っているんです。私が楽しいと思えないことだったら、むしろ発しない方がいいんじゃないかと。恵まれているんでしょうね、環境的にも、性格的にも(笑)。





5/25 SATURDAY
「レミング -世界の涯まで連れてって-」
チケット発売中
◎作/寺山修司
◎上演台本/松本雄吉(維新派主宰)、天野天街(少年王者舘主宰)
◎演出/松本雄吉
◎出演/八嶋智人、片桐仁、常盤貴子、松重豊 ほか
■会場/中日劇場 
■開演/17:00
■料金/S¥9,000 A¥7,000 
■お問合せ/メ~テレ事業部 TEL.052-331-9966
※未就学児入場不可