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「多部未華子」スペシャルインタビュー
取材日:2014.02.17

テレビドラマ、映画で多彩な役柄を演じ分ける
若手実力派女優のひとり、多部未華子。
近年は舞台にも活躍の場を広げ
’10年には野田秀樹作、松尾スズキ演出の「農業少女」の演技で
第18回読売演劇大賞優秀女優賞および杉村春子賞を受賞するなど、
舞台女優としても高い評価を得ています。
最新作は、蜷川幸雄演出の「わたしを離さないで」。
名古屋公演を前に、女優10年目の「今」を語ってくれました。

今年はデビュー10年目の節目の年ですね。女優になろうと思ったきっかけは?

そうみたいですね、さっき聞きました(笑)。今年で25歳なんですが、もっと若く見られてしまいます。最初のきっかけはミュージカル「アニー」を観たことなんですが、女優になりたいと思った訳ではないんです。もともと両親がミュージカル好きで私はついて行っただけなんですが、実際に観て「これに出たい」と思いました。テレビに出たいとか女優さんになりたいとか思ったことはなくて、ただ「アニーに出たい」とは思っていたんです。デビューしてからも、最初は事務所がすすめてくれるオーディションをたくさん受けていました。でも、まだ中学生だったので、それほど真剣じゃなかったかもしれませんね。

10年経った今、どんなスタンスで仕事に取り組まれていますか?

女優を続けていこうという気持ちを持ちつつも、それが例えば60歳になるまで絶対やるということではなくて、目の前にあるものをコツコツと…という感じです。ひとつひとつの仕事は随所に達成感を感じながら楽しんで取り組めていると思います。随所に達成感を感じながら。


どんなときに一番、達成感を感じますか?

打ち上げのとき…(笑)。好きなんです。制作中も、もちろん楽しいし大好きです。共演者の方やスタッフの方、みんなが頑張っていて「自分も頑張ろう」と思わせてくれる方たちに囲まれて作品を作るのは本当に楽しいし、かけがえのない時間だと思います。そして、そうやって頑張ってきたものを振り返って共有できる時間を持てるのが打ち上げですよね。いろいろな分野のプロが集まっている中に自分がいられるというのが幸せですし、充実しているなと思っています。私の仕事は、例えばドラマなら3ヶ月間頑張れば必ずひと区切りありますから、いつも新鮮な気持ちで取り組むことができます。今度の舞台も、キャストはほとんど初めてご一緒する方ばかりです。それに私は映像の仕事が多いので、そもそも舞台というのが異空間なんですよね。作品も、いつも新しいものに挑戦していますし。常に新鮮であり挑戦であって、区切りもある。だから達成感を得られやすいのかなと思います。OLの友達なんかは、どんな風にモチベーションを上げているのかな。


2年前に大学をご卒業なさいましたね。15歳で入られた芸能界とは異なる環境で過ごした時間はいかがでしたか?

まずは、大学を辞めなくてよかったです。休学したときに、もう復学は無理だと思っていましたが、頑張れば意外と出来るもので(笑)。あと、やっぱり友達との出会いは大きかったですね。勉強はあまりしていませんでしたが…。でも、先生と研究室でお話ししたり、充実した学生生活でした。私は文学部でしたが、共通科目で理系の授業も受けなきゃいけなかったんですよ。科学とか数学とか、あまり得意じゃない分野の授業を聞いていて、ふと先生のことを「この方は、数学のプロフェッショナルなんだよな」と思ったり。そう思うと、大学って面白いところだなぁと。プロの集まりですからね。


俯瞰して授業を聴いていたんですね。

私はとにかく単位を取って卒業するというのが目標でしたから(笑)。ほかにも、メディアについて学ぶ授業ではテレビ局や新聞社の方が講師としていらっしゃったり。俳優の篠井英介さんも一日だけ講義に来てくださったことがあるんですよ。授業の前にご挨拶はさせていただきましたが、私はこっそり隅の方で聞いていたんです。そうしたら「今日はこの教室に多部さんがいらっしゃいます」と、バラされてしまいました。凄く恥ずかしくて「言わないでよ~」って(笑)。でも、篠井さんのお話はとても面白かったし、やっぱりさまざまなプロの方の講義を聞ける機会を持てたというのは、大学に行かせてくれた親に感謝ですね。


舞台の最新作は「わたしを離さないで」。外の世界から遮断された寄宿学校で育った3人の男女の物語。イギリスで映画化もされましたが、非常に稀有なシチュエーションの物語ですね。

最初に台本を読んだときは、3人の関係性がよくわかりませんでした。私が演じる八尋という女の子は、強い自己主張がある訳でもなく、かといって自分を持っていない訳ではない。それに、やせ細っていくとか、足が動かなくなるとか、わかりやすい見た目の変化がなく、気持ちがどんどん揺れ動くことが多いので、そういう女性を舞台で演じるのは難しいことだと思います。映画を観てなんとなく雰囲気は想像していましたが、舞台で実際にどんな場所で動いたりするのか、ふたりの友達を演じる三浦涼介さんと木村文乃さんは、それぞれどんな人物に仕上げてくるのかなとか…。稽古前は不安でした。私は舞台経験がそれほど多くありませんし、稽古場で堂々といられるほどの自信もないんです。今回は本当に難しい役だと思います。


多部さんは作品や役柄を非常にクールに分析なさる印象があります。役柄と自分との共通点を探ることはありますか?

それはありません。似ているところを探す必要はないと思います。自分とは違う人間を演じるので、共通点や共感する部分を探すことにはあまり意味がないような気がします。「この人は、こういう人なんだ」と客観的に捉えます。今回はとても難しい役ですが、頑張りたいですね。

応援しています。頑張ってくださいね。

ありがとうございます。うれしいですけど、それがどんどんプレッシャーになって…。はい、頑張りますけど(笑)。