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「佐渡裕×反田恭平」スペシャルインタビュー取材日:2020.11.26
今秋、ラフマニノフのピアノ協奏曲のソリストとして
ウィーン楽友協会ホールにデビューを果たした反田恭平。
来年3月、自身が選出した特別編成のオーケストラに佐渡裕を指揮者に迎え、
コンチェルト2本立て公演を開催!
10月25日に反田さんは、佐渡さん指揮のトーンキュンストラー管弦楽団(トンク管)の定期演奏会のソリストとして、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏。ニューイヤーコンサートの会場として知られるウィーンの殿堂・楽友協会ホールに鮮烈なデビューを果たしました。
佐渡:新型コロナウィルスの感染者が再び増加している状況下で(※実際に11月4日に予定されていた同プログラムでの公演は2度目のロックダウンにより中止に見舞われた)全てが綱渡りのようでしたが、トンク管の本拠地である楽友協会で一緒に演奏できて本当に良かった。熱狂的な歓声に包まれての大成功でした!
反田:ワルシャワっ子の自分にとってウィーンは初めての街で、格式の高い伝統ある都のイメージでしたがどこかのんびりとした雰囲気があって、すぐに馴染むことができた気がします。
プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番のレコーディングも、同じくウィーン市内のスタジオで行われたとか(※来年2月下旬にNOVAレコードからリリース予定)。
佐渡:初日の分を録り終えた次の日にテロ(銃撃事件)が起きて、残りはその後の録音。恐ろしい思いをしたばかりな上にコロナ禍もあって、最初は沈んでいたみんなの気持ちが次第に音楽でひとつになり、演奏することの歓びとかいろんな感情が湧き上がって、忘れられないレコーディングになりましたね。
反田:現場には独特の空気が漂っていたし、僕自身もプロコフィエフの3番は初めてだったのでとても緊張しました。でもオーケストラのメンバーは朝から100%に近い熱量で、それがどんどん上がっていくのを感じました。
佐渡:トンク管は音圧も凄いけれど、決して力尽くではなくて、音が立体的というか全体のハーモニー感に優れている。日本にもメロディが美しくて音程も良く、タイミングもバッチリで歌心があるオーケストラはたくさんありますが、あの縦にも横にも充実したハーモニーはなかなか出せていないと思う。メロディを演奏している連中が、横でヴィオラが何をやっているかとか、セカンド・クラリネットやホルン・セクションの動向まできちんと把握しているからこそ、3Dで立ち上がるような音が生まれるのです。
お二人はこれまでに何度も共演されていますが、今回、特別編成されるジャパン・ナショナル・オーケストラにも期待が高まりますね。
反田:母体は2018年に「MLMダブルカルテット」として設立し、翌年から管楽器を加えて「MLMナショナル管弦楽団」として活動をスタートした僕がプロデュースする楽団で、現状は17人くらいの編成ですが今度は60~70人からなる本格的なオーケストラなので楽しみです。海外での経験、それもドイツやスイスで研鑽を積んでいる奏者が多いので、たぶん佐渡さんが普段から聴いているサウンドに近くなるのではないでしょうか。自分がメンバーを調整する上で一番大事にしているのは、この人とこの人の響きを足すとどうなるかで、大編成でも基本的にその考えは同じなので、じっくりこだわってかたちにしていきたいです。
佐渡:いろいろ考えてくれていると思うので反田君に完全にお任せです(笑)。自分にとっては子どものような若い世代ばかりなので、面白い化学反応が起きることを大いに期待したいと思います。
曲目はフェニーチェ堺がラフマニノフの3番で兵庫県立芸術文化センターがプロコフィエフの3番。加えてそれぞれラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲が付くスペシャルなプログラムです。
反田:1公演でコンチェルト2本立ては経験ないかも。ラフマニノフの3番は佐渡さんとの別のツアーで経験済みで楽しみでしかない…特に第2楽章が。パガニーニの主題による狂詩曲も、世界が現代音楽に向かっている時代に敢えて古典的なヴァリエーションを目指したラフマニノフのこだわりが好きです。難曲であるプロコフィエフの3番は日本を訪問した経験がインスピレーションになっているという説も興味深いし、最近では映画《蜜蜂と遠雷》で使用されて話題を呼んだことも記憶に新しいので、全力で臨みたい。
佐渡:現在の反田&佐渡コンビを聴いてもらうには最高のプログラム、どちらも聴き逃せません!ラフマニノフの3番は人気曲ですがカデンツァが長く、技術的にも集中力を必要とする。オーケストラとお互いが刺激し合えるという意味で、反田くんは完全燃焼できる相手です。プロコフィエフの3番はオーケストラの扱いや楽器の組み合わせの面白さにも注目して聴いていただけたら嬉しいです。
反田さんは近年、ピアニストの枠を超えて大活躍ですね。オーケストラのプロデュースもそうですし、今後は指揮者としての活動も視野に入れていくとか。
反田:実はサッカー少年だった自分がクラシックの面白さに目覚めたきっかけが、子どもの頃の指揮者体験だったので自分にとってはむしろ原点です。これからは少しずつ指揮の勉強を増やしていけたらいいですね。既に佐渡さんのことは“心の師匠”だと思っています(笑)。
ところで、兵庫県立芸術文化センターは佐渡さんの本拠地のひとつですが、フェニーチェ堺とは?
佐渡:前身の堺市民会館時代からよく知っていますよ。お客さんのノリが最高でいつもあたたかく受け入れて下さる。また堺の皆さんの前で演奏できる日が待ち遠しいです!
◎Interview&Text/東端哲也
◎Photo/中野建太
3/13 SATURDAY
「佐渡裕/反田恭平
with ジャパン・ナショナル・オーケストラ特別編成」
■会場/フェニーチェ堺 大ホール
■開演/15:00
■料金(税込)全席指定 S¥9,000 A¥7,000 B¥6,000 C¥4,000
■お問合せ/フェニーチェ堺 TEL.072-223-1000
※未就学児入場不可
◎主催/ABCテレビ、フェニーチェ堺