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「沖 仁」スペシャルインタビュー
取材日:2018.06.24

日本におけるフラメンコギターの第一人者といってもいいだろう。
2010年7月、スペイン三大フラメンコギターコンクールのひとつ
「第5回 ムルシア "ニーニョ・リカルド" フラメンコギター国際コンクール」
国際部門で優勝。日本人として初の快挙を成し遂げ、
コンクールに挑む様子は番組「情熱大陸」でもオンエアされた。
その後も数々のミュージシャンやオーケストラとの共演、
楽曲提供も行いながら活躍を続ける沖仁。
今回は、11月に名古屋・電気文化会館 ザ・コンサートホールで
予定されている2018年のツアーに先駆け、
沖仁が考えるフラメンコについて、ご自身の音楽性などについて伺った。

スペインへはどのくらい行かれていたんですか?

20代の頃はずっと行ったり来たりしていました。延べでいうと4、5年はいたと思います。ビセンテ・アミーゴ(スペイン・アンダルシア州出身のフラメンコギター奏者)を聴いたことがきっかけで、フラメンコギターを習得するためにスペインに行きました。最初はマドリードでギター教室に通っていたのですが、フラメンコが生活の中に息づいている環境があると聞いて。そういうフラメンコを聴かずしてスペインに行く意味は半分もないんじゃないかなと思って、それでスペインの田舎に引っ越しました。そこで「ああ、これだ」となりました。それがヘレスという町です。ビセンテのスタイルは洗練の極みで最先端のフラメンコ。それももちろん大好きですけど、自分が感動して涙をするようなフラメンコって本当に素朴で、人に聴かせるためではなくて、自分たちがそれに癒されるというか。日々の営み、生活に欠かせないもので。そういうフラメンコが一番好きなんですよね。と同時に自分から遠いものでもあります。ただ、最近は好きだと思うものと自分がやるものは一緒じゃなくてもいいのかなって思うようになりましたね(笑)。



その心境の変化がもたらしたものは?

そう思ったら楽になりましたね。好きなものには下手に手を出さない方がいいみたいな(笑)。逆に言うと、自分のスタイルに自信が持てるようになったという言い方もできると思います。スペインにいる時は彼らのようになりたくて頑張っていたし、コンプレックスばかりでしたけど、その頃より今の方が自分は自分のスタイルがあると言えるようになったというか。

ビセンテ流もあれば、ヘレス流もあって、沖仁流もあるということですね。

そうですね、ただ1つ、フラメンコには痛みのようなものがあると思います。自分の力じゃどうしようもできないというか。みんな人それぞれ、痛みを抱えているけれど、フラメンコはそこにスポットを当てる。そこから生まれた音楽なのかなという気がするので、そこは忘れちゃいけないと思いますね。


フラメンコには独自の「コンパス」というリズム形態がありますね。

フラメンコでは“コンパス遊び”が結構大事です。そのリズムが分かってくると掛け声を入れるタイミングが分かってくる。楽しみ方の一つのキーワードにもコンパスが挙げられますが、リズム楽器としてパルマ=手拍子があります。本場の人たちはみんなノリを共有しているので、会場で一斉に掛け声がかかる瞬間があって、そこは楽しいですね。結構難しいんですよ。12拍子なのでなかなかぱっとノリにくいのですが。

12拍子を、強弱をつけながらずっと繰り返して。

1回始まっちゃうと一晩中止まらないみたいな(笑)。やがてはトランス状態になっていくという時もあります。みんなが集まってお酒を飲みながら、笑いながらフラメンコが始まって、朝まで続くのですが、それが真骨頂だったりします。頭が朦朧とする中で続けるという(笑)。ちょっと宗教的な側面もありますし、そこが一番の民族音楽たる部分でもあったりします。

楽器としてフラメンコギターの特徴的なことは?

フラメンコギターという楽器の大きな特徴は、見た目はクラシックギターとそっくりなのですが、ものすごく違うのは踊りと歌の伴奏楽器であるということ。踊るということはダンスミュージック。ダンスミュージックの伴奏をするということは、ギター1本でドラムもベースも和音も出さなきゃいけない。その役割があることがすごく大きな特徴です。ソロ演奏でもリズム楽器のように叩いたり、ラスゲアードという掻き鳴らす奏法も特徴的です。

2017年にオリジナルアルバム「Clásico[クラシコ]」をリリースされましたが、早くも新作を予定されているそうですね。

はい。今回のアルバムのタイトルは「スペイン」になる予定です。2018年はスペインと日本の外交関係樹立150周年なので、そこにちなんだ内容にしてみようと、スペインゆかりの曲のカバーアルバムを予定しています。スペイン曲であったり、スペインを題材にした作品、逆に日本の曲をスペインのフラメンコのアレンジでという試みもあります。そして、今回は割と正面から勝負したような感じです。編成もシンプルだし、アレンジもこれまでよりも正面から向き合っているというか。演奏で自分を出す形にかなり近づいているんじゃないかな。そういう意味では真剣勝負をしたアルバムです。

11月の愛知・電気文化会館から始まる2018年のツアーも始まりますが、編成はどのように?

ピアノ、もう一人のギター、パーカッションの4人編成です。新譜が中心になると思いますが、今回は割とクラシックホールを選んでツアーをするので、ギターの一音をとってもその重みをこれまでよりも強くしたいと考えています。元々手が動いちゃう方なんですけど、音数だったり、絶対誰もまねできないだろうっていうようなテクニックとか、そういうことからそろそろ卒業したいなって(笑)。そこに頼り過ぎない。年齢と共に自分も変わってくるので、よりシンプルで深く、豊かな音楽にしたいなと思っています。コンサートでもそういう方向に広げていけたらなと思います。

◎Interview/福村明弘
◎Text/岩本和子
◎Photo/六本木泰彦



11/21 WEDNESDAY
「沖 仁 CONCERT TOUR 2018」
チケット発売中
■会場/電気文化会館 ザ・コンサートホール
■開演/18:30
■料金(税込)/全席指定 ¥6,800
■お問合わせ/ジェイルハウス TEL.052-936-6041
※未就学児童入場不可
※学割あり。当日、ご自身の学生証を提示していただいた方に¥1,000キャッシュバックします。
(小、中、高校生、大学生、専門学校生 対象。小学生は年齢を証明できるものをご提示ください。

◎最新アルバム 10/31(水) on sale
「Spain」
スペイン日本外交関係150周年を記念した
スペインゆかりの楽曲にフラメンコアレンジを施した作品。