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「岡本圭人」スペシャルインタビュー
取材日:2024.02.05


フランスの劇作家フロリアン・ゼレールの家族3部作から
『LeFils息子』と『LaMère母』が同時上演される。
父親、母親、息子それぞれが家族の在り方を模索する、苦悩と孤独の物語だ。
息子ニコラ役を務めるのは、トップアイドルを経て、実力派俳優の道を歩む岡本圭人。
“憧れ”の父・岡本健一との2度目の親子共演に目を輝かせて、舞台の魅力を語った。


2年半ぶりに『LeFils息子』が再演されます。意気込みをお聞かせください。

2021年に俳優として独立して、初めての舞台が『LeFils 息子』でした。当時は憧れの父親(岡本健一)と初共演するプレッシャーもありましたし、「本当に自分は芝居ができているのか?」と自問自答しながら、ニコラを演じることだけで精一杯だった思い出があります。あれから多くの舞台やドラマに出演させていただいて、役者としての経験を積み重ねてきました。成長した姿で、作品をお客様にお届けできることが楽しみです。

初演時とくらべて、どのような変化がありますか?

今回、あらためて台本を読んだときに、以前とは違う感覚がありました。それは父親ピエールや母親アンヌの台詞が、より深く自分の心に刺さるようになっていたことです。初演時はニコラを中心にしか考えられなかったのが、いまやっと少し俯瞰して見ることができるようになったのかもしれません。共演者からのエネルギーを受け取りながら、また新たなニコラをつくり上げていこうと思います。

すれ違い、ときに衝突する父と息子のあいだで厳しい言葉の応酬もあります。

たしかに、劇中には「親がこんなに強い言葉を子どもに言っちゃうんだ」と愕然とするような台詞もありますが、役者にとってはキツい言葉が“ギフト”になる。これは自分がアメリカの演劇学校にいるときに学んだことで、強い感情を台詞に込めて相手に届けて、それを受け止めて、返していく過程を丁寧にやりたい。舞台という生の空間で、役者が本当に辛いなとか、嫌だなとリアルに感じるほど、お客様の感動やカタルシスを生むと思うので、人間の脆い部分をさらけ出していきたいです。


ニコラのように悩んだ経験をされたことはありますか。

ニコラが「何をすればいいか分からない」って台詞をよく言うのですが、僕がアメリカで演劇を学んでいたときの姿と重なります。夢見てニューヨークに行ったのに、コロナ禍でブロードウェイも学校もクローズしてしまい仕事もなくなってしまった。その時は、本当に何もできなくて一番悩みました。僕には「どうしても舞台に立ちたい」という信念があったからこそロックダウンを乗り越えることができましたが、どこかの歯車が違っていたらと思うと、ニコラの苦悩は他人ごとではないです。

実の父親である岡本健一さんと親子役での共演も楽しみです。

父とはいつも舞台や音楽の話をしていますが、僕が出演した作品について「こうした方がいい」といったアドバイスをされることはありません。ただ、「父からこんなこと言われたな」とか「そのとき自分はどんな感情だったかな」とか、父との実体験を思い返しながら、ニコラという役に寄り添っています。ニコラが父親に対して「クソ野郎!」って言ったりするのですが、私生活ではなかなか言えないじゃないですか(笑)“言いたいけど言えない”という心情は、誰でも子ども時代に感じたことがあると思うので、共感してもらえるのではないかと思います。


日本初演となる『La Mère 母』についてはいかがですか。

3部作のなかで一番最初に書かれた作品なので、ニコラの原点があるのでは?と想像を膨らましています。フロリアン・ゼレールの書く物語はすごくリアルですが、謎が多いんです。「いま母親が見ているニコラは本当に存在するのか?」とかお客様に考えさせる空白がある。2作品にリンクする台詞があったりするので、『母』を観ると『息子』の謎が解き明かされるような仕掛けが面白いです。母親アンヌ役の若村麻由美さんとは、以前朗読劇「ラヴ・レターズ」で共演したとき、「自分にこんな気持ちがあったなんて」と驚くくらい感情が溢れてしまったのが衝撃的でした。この作品でも、若村さんとどんな化学反応が起こるか期待しています。

2作品同時上演の大変さはありますか?

昨年、父がシェイクスピアを2作品同時上演していたので、「父親にできるなら自分もできるだろう」って勝手に思っています(笑)すごい戯曲と演出で、素晴らしいキャストとスタッフと共に2作品を同時につくれるなんて、こんなに贅沢なことはありません。できるなら残りの『Le Père父』も入れて3作品同時上演したいくらい楽しみなので、大変だとはまったく思わないです。

30代を迎えて、今後の目標はありますか。

僕は目の前の仕事にしか集中できないタイプなんです。明日の自分がどうなってるかも分からないので、とにかく今を生きる(笑)アメリカに行く前は「ハリウッドが夢です」なんて言ってたけど、実際に行ってみたら方向性が変わりました。だからあまり将来を定めずに、いろんな可能性を追っていきたいです。もちろん海外で舞台をやりたいという夢もありますが、自分が観客として舞台に助けられたように、誰かの希望になれるような作品をつくっていくのが目標です。

穂の国とよはし芸術劇場PLATのお客様にメッセージをお願いします。

お客様も親子で観に来ていただけたら嬉しいです。自分の親や子どもを舞台に誘うのは緊張するかもしれませんが、家族がお互いのことを考えるきっかけになるはずです。劇場でお待ちしていますので、ぜひ一緒に足をお運びください!

◎Interview&Text/北島あや
◎Photo/安田慎一



6/29 SATURDAY ・30 SUNDAY
「La Mère 母」
6/29 SATURDAY
「Le Fils 息子」
■会場/穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
■開演/「La Mère 母」13:00 「Le Fils 息子」18:00
■料金(税込)/全席指定 S¥10,000 A¥7,000 ほか
S席セット券¥18,000(枚数限定・プラットチケットセンターのみ取扱い)
■お問合せ/プラットチケットセンター TEL.0532-39-3090(10:00~19:00/休館日を除く)