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「中村勘九郎×中村七之助」スペシャルインタビュー取材日:2017.03.06
共演はもちろんそれぞれの歌舞伎の舞台、
また歌舞伎以外の演劇や映像作品への出演など多ジャンルでも存在感を示し、
目覚ましい活躍を見せる花形俳優・中村勘九郎、中村七之助。
そんな彼らのライフワークともいえる
「平成中村座」が8年ぶりに名古屋に帰ってきます。
「江戸時代の芝居小屋を再現したい」。
父・十八世中村勘三郎が強い思いで実現し、
2000年の浅草・浅草寺での初演以降、ニューヨークやベルリンでも上演。
2009年には名古屋城の敷地内で上演し、多くの観客を沸かせました。
「小屋ごと江戸時代にタイムスリップする」と勘九郎が言う通り、
通常の劇場とはまったく異なる特別な空間での劇体験は、
平成中村座でしか味わえません。
8年ぶりの公演にかける意気込み、演目の楽しみ方、
そして今、歌舞伎俳優として考えていること…。
次世代の歌舞伎界を牽引するふたりが率直に、そして真摯に語りました。
名古屋平成中村座は8年ぶり。名古屋の観客は待ちに待っていました。
勘九郎:名古屋で公演させていただくのも平成24年の御園座での勘九郎襲名公演以来と、とても久しぶりですから、僕たちもとても楽しみですね。芸どころ名古屋で芝居をしたいという思いは、ずっと持っていました。でも今、御園座も休館しているし劇場がどんどん少なくなっているでしょう?芝居を観に行くという習慣がお客様の間で根づかなくなって、「芸どころ」というのがひと昔もふた昔も前のことになってしまっている感じがするなぁ。最近、堤幸彦監督や加藤和樹さんなど名古屋出身の方と仕事をする機会が多いんですよ。で、よく話すんです。「名古屋に来られる機会が少ないね」って。だから、しっかりやりたいと思いますね。父(十八世 中村勘三郎)の襲名の時の、お客様でいっぱいの御園座を僕たちは知ってますから。そういう活気が名古屋に戻ってきて欲しいという思いがあります。
七之助:僕は、御園座が休館している今が勝負だと思っているんです。例えば、若手の役者中心の公演にしてチケット代をぐんと下げれば、若い人も観やすくなりますよね。そうやって今のうちにいろいろな層のお客様を開拓しておくことが、来年の開場につながるはずです。だから大変おこがましいですが、今回の中村座の公演を、名古屋を盛り上げる起爆剤にできるようにと思っています。
8年の間に勘九郎さんの襲名があったり、お父様がお亡くなりになったり、いろいろと環境の変化がありました。その中で、おふたりとも目覚ましい活躍をなさっていますが、お互いの変化や成長ぶりについてどのように感じていらっしゃいますか?
勘九郎:あまりにも近くにいるから、わからないんですよ。白髪が増えたね(笑)。それぐらいかな。
七之助:父が亡くなってから「兄弟揃って一所懸命やってるね」とか「よくなったね」と、いろんな方が言ってくださいますが、それは皆さんが優しいからそう言ってくださるだけで…。
勘九郎:自分たちは「まだまだ」という気持ちを各々が常に持ってやっています。七之助のそういうぶれない姿勢は見ていて気持ちがいいですし、やはり一番信頼の置ける人間であり役者だと思っています。ふたりで同じ芝居に出たり相手役をするチャンスは少なくなってきているので、大切にしていきたいですね。あとは、早く結婚して欲しい。いつするんですか?
七之助:まだ予定はないんですけど…。先日も祖母に「早く子どもを」と言われました。徐々に外堀から埋められてるなぁ(笑)。それを打ち砕いていこうかなと思います。
今回は華やかな演目が揃いましたね。
七之助:名古屋ならではだと思いますよ。今度の名古屋では、父が若かりし頃に曽我五郎を勤めて大変評判を得た『壽曽我対面』をはじめ、中村屋ゆかりの演目ばかりです。こういう演目だては、名古屋が初めてなんじゃないかな。
勘九郎:歌舞伎初心者の方にも長くご覧になっている方にも楽しんでいただける演目が揃いました。『対面』は古典中の古典でこれぞ歌舞伎という演目です。荒事、和事、実事と歌舞伎のすべての要素が入っていますし。例えばファッションに興味がある方にとっても興味深い演目だと思います。着物の色の組み合わせも面白いし、舞台と客席の距離が近いから刺繍の細かさなんかもよく見えるんじゃないかな。
『お祭り』には特別な思いがおありだと思いますが。
勘九郎:そうですね…。御園座では、祖父(十七世中村勘三郎)の追善公演で踊らせていただきました。やはり難しい踊りです。踊りなんだけど、踊りじゃないんです。祖父や父が踊っている映像を見ていると、死ぬまで勉強というのはこういうことなんだと思いますね。体内から醸し出す空気というか…これが歌舞伎の面白さなんだなと。
『弁天娘女男白浪』は、七之助さんが弁天小僧菊之助を勤められます
七之助:「知らざあ言って聞かせやしょう」という台詞は、歌舞伎を知らない人でもきっと聞いたことがあると思います。ストーリーはシンプルですし、江戸の威勢のいい生意気な小僧というキャラクターも魅力的です。あの短い時間に見せ場が凝縮されていて、楽しい芝居だと思います。勢揃いの場なんてバカバカしいぐらいですし。雨も降ってないのに傘さして、盗賊なのにあんな派手な着物を着て、順番に名乗っていくんですから。逃げてるのに…(笑)。でもカッコよくて、僕たちは小さい時から「真似したいな」と思っていました。
勘九郎:戦隊モノの元祖と言っても過言ではないですよ。
七之助:19歳の時に初めて弁天をさせて頂いたのですが嵐の松本潤が観に来て、なんて言ったと思います?「嵐だ!俺もやりたい!」って。5人揃ってるから。そういう純粋な子ども心を持って観ていただいても楽しめると思います。
勘九郎:今回は、平成中村座という小屋のパワーが遺憾なく発揮される演目だてになりました。同じ演目でも、普段、劇場でご覧になるのとは違うパワーを感じていただけると思いますよ。
舞台に立たれていても、その違いを感じますか?
勘九郎:感じますね。だって、小屋ごと江戸時代にタイムスリップしてるんですから。どこを見渡したって現代のものはないんですよ。消火器ぐらいかな?(笑)だから、舞台に立つほうも小屋から大きなパワーをもらいます。
七之助:温かいんですよね。舞台と客席の見えない壁というのは、どこの劇場にもあるんです。でも、それが極端に少ないのが平成中村座。距離が近いということだけじゃなく雰囲気がね。役者はもちろん劇場がどこであろうが同じように一所懸命演じていますが、やっぱり違うんですよね、心の昂揚というかモチベーションが。それがお客様にも伝わって、芝居が嘘じゃなくなっていく。会場全体で芝居を作っているという感覚になりやすい小屋だと思います。前回もそうでしたよ。兄とふたりでさせていただいた『吃又』でも、お客様が又平の気持ち、おとくの気持ちになって観てくださるんです。それがこちらにもビシビシ伝わってきました。
勘九郎:感情移入しやすい空間なのかもしれませんね。
昨年は歌舞伎座で笑福亭鶴瓶さんの新作落語を歌舞伎にして上演するなど、新しい試みにもおふたりは積極的に挑戦なさっています。自分たちで歌舞伎を盛り立てていくんだいう空気は、歌舞伎界の若い世代全体にあるのでしょうか?
勘九郎:今、家にいても何でもできちゃうでしょ?買い物だってインターネットでできちゃうし。だから、生の持つパワーで劇場をいっぱいにしたいという思いは強いですね。僕たちは古典で勝負しているから、そこにお客様を引っ張りたいんです。だから、まず観に来ていただくために話題性のあるものを絡める工夫をしています。
七之助:お客様のことを第一に考えて試行錯誤するのが僕たちの務めですよね。もちろんそれだけじゃなく、自分の芸も磨いていかなければならない。両方高めていって、先人たちが残してくれた素晴らしいものを継承しつつ、お客様に新しい楽しみをお届けしたい。自分の人生の楽しみに歌舞伎というジャンルがひとつ増えると、ちょっと得した気分になると思うんですよ。
◎Interview & Text/稲葉敦子
6/1 THURSDAY〜26 MONDAY
名古屋城本丸御殿公開プレイベント
「名古屋平成中村座」
4/9(日)〜チケット発売
■会場/名古屋城 二之丸広場内 特設劇場
■開演/昼の部11:00 夜の部15:30
■料金(税込)/松席(1階平場)¥15,500 竹席(1・2階)¥15,500
梅席(2階)¥12,500 桜席(2階)¥11,500
お大尽席(2階)¥36,000
■お問合せ/名古屋平成中村座事務局 TEL.052-961-6777(平日10:00〜18:00)
※3歳以下膝上無料(席が必要な場合は有料)
※名古屋城入場料は上記料金に含まれます
※劇場内へは入口で靴を脱いでお上がりいただきます
※車椅子でご来場予定のお客様は予め公演事務局へご連絡ください
※お大尽席の取扱いは公演事務局で電話対応のみとなります