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「中村勘九郎×中村七之助」スペシャルインタビュー取材日:2023.03.16
平成12年、芝居の原点である芝居小屋を、
浅草は隅田公園内で初演した仮設劇場での歌舞伎公演。
亡き18代目中村勘三郎によって創り出された夢の芝居小屋公演は、
日本各地(ときにはニューヨーク)で開催され、
各地で大好評の公演が、修復を終えた姫路城に出現する。
姫路城ならではのご当地ゆかりの演目と、
中村屋珠玉の演目を引っ提げて関西へ8年ぶりに帰って来る。
父、勘三郎の意志を受け、本公演への並々ならない思いを
中村勘九郎、中村七之助が語ってくれた。
平成中村座の関西での公演は8年ぶりとなりますが、意気込みをお聞かせください。
勘九郎:8年ぶりの関西公演を、姫路城の前の三の丸広場をお借りして実現できることを本当に嬉しく感じています。制作にお金がかかるので、そんなに安くないチケットにもかかわらず多くのお客様に注目して頂ける公演ですから、役者としては体調管理をしっかりして、一生懸命に舞台を勤めたいと思っています。
七之助:これまで関西での公演の予定もあったんですが、コロナ禍によってすべて中止になっていました。この平成中村座を建てることは、私ども兄弟の夢でもあったわけです。昨年、浅草の浅草寺で中村座を建てさせていただいた翌年に関西の、初めての地となる姫路で、それも姫路城の前でやらせていただける。また姫路城に所縁のある演目を昼・夜公演で演じさせて頂けるという、もう盆と正月がいっぺんに来たような気持ちです。
公演自体も注目ですが、今公演でのお楽しみが他にもあるとお聞きしました。
勘九郎:公演会場の前に、お菓子屋さん、かんざし屋さんや扇子屋さんなど、江戸の伝統工芸の職人さんにお店を出して頂く“五軒長屋“という楽しいスペースなんですが、なんと姫路では、平成中村座史上、最大となる“三十軒長屋”として、江戸の職人さんはもちろん、関西、姫路の職人さんのお力も借りて楽しい場所が出現しますから、こちらもご期待ください。
さて、演目にも注目が集まっていますが、どのような公演になりますか?
勘九郎:修復作業の終わった美しい姫路城の借景で、ご当地由来の演目を昼夜とも演じさせていただけるのもご縁だと感じています。この公演での一期一会という感動はあります。昼公演では「播州皿屋敷」を演じます。歌舞伎では「番町皿屋敷」としてご存じの方もいらっしゃると思いますが、実はこの姫路城のお話が基になっていると思います。お菊さんの井戸も今も姫路城内にありますし、この御当地モノをご当地で演じると不思議なパワーをいただけるので、そういう意味でも良い作品を皆さまにご披露できると思っています。
七之助:夜の部で演じます「天守物語」は、文豪、泉鏡花の最高傑作といわれる作品で、鏡花自身もこの作品を舞台化してくれたら自費でお金を出すと言っていたという思い入れの深い作品です。現在では玉三郎のおじさまの十八番として、ずっとアンタッチャブルな作品だと思っていました。しかし本物の姫路城の天守閣の前での公演だからと、意を決して玉三郎のおじさまにご協力をお願いしに行きました。
勘九郎:断られるだろうなと思っていたんですが、なんと玉三郎のおじさまご自身が全面的に協力をしてくださって、丁寧にお稽古もしていただいています。玉三郎のおじさまの「天守物語」を後世に引き継いでいかないと、という思いも強いです。
その他に「鰯賣戀曳網」と「棒しばり」という演目を選ばれた理由もお聞かせください。
勘九郎:「鰯賣戀曳網」は、三島由紀夫先生が、6代目の中村歌右衛門のおじさまと、私たちの祖父である17代目勘三郎に当てて書いてくださった作品で、中村屋にとっては、お家芸といっても過言ではない作品です。京都や伊勢の國といった関西のワードで構成されていてマッチするなと思いました。「棒しばり」は、父が生涯大切にしてきた演目で、今回の公演に関しては「天守物語」が異世界を描くものであるのに対して、対極にある世界観を演じることで、歌舞伎の表現の幅の広さや強さを感じて頂けたらという狙いです。
勘九郎:父、勘三郎は、いつも「自分は関西のお客さんに育てて頂いた役者だ」と言ってましたし、三代目歌六のおじさまは関西の役者でもあります。中村座にとって大切な関西の地で、歌舞伎の楽しさを感じて頂けたらと思っています。
七之助:お城を借景にするというアイデアが出たのも扇町での公演でしたし、いつも新しい試みは関西からというものがあります。ぜひ歌舞伎の醍醐味を存分に味わっていただきたいですね。
◎Interview&Text/石原 卓
◎Photo/安田慎一
5/3 WEDNESDAY〜27 SATURDAY
「姫路城世界遺産登録30周年記念 平成中村座姫路城公演」
◎出演/中村勘九郎、中村七之助、中村橋之助、中村虎之助、中村鶴松、片岡亀蔵、中村扇雀
◎演出/坂東玉三郎(天守物語)
◎演目/第一部「播州皿屋敷」「鰯賣戀曳網」、第二部「棒しばり」「天守物語」
■会場/姫路城三の丸広場内 特設劇場
■開演/[第一部]12:00 [第二部]16:00
■料金(税込)/松席(1階平場席)¥15,500 竹席(1・2階長椅子席)¥15,500
梅席(2階長椅子席)¥13,500 桜席(2階長椅子席)¥11,000
お大尽席(2階特別席)¥36,000
■お問合せ/キョードーインフォメーションTEL.0570-200-888(11:00〜18:00 日・祝日は休み)
※3歳以下膝上無料、ただしお席が必要な場合は有料
◎主催/姫路市、関西テレビ放送 ◎製作/松竹