HOME > SPECIAL INTERVIEW > 「門脇麦」インタビュー
「門脇麦」スペシャルインタビュー取材日:2020.01.12
世界中の人々に愛される村上春樹の代表的長編小説
『ねじまき鳥クロニクル』が舞台に―。
日本でも数々の作品を手がけてきたイスラエルの奇才
インバル・ピントが演出・振付・美術を手がけ、新進気鋭のアミール・クリーガーと、
劇団「マームとジプシー」主宰の藤田貴大が脚本・演出で参加。
ドラマ『あまちゃん』『いだてん』等でも活躍するミュージシャン大友良英が
音楽と演奏を担当し、村上の唯一無二の世界観に挑みます。
失踪した妻を探す主人公の前に現れる不思議な女子高生・笠原メイを演じる門脇麦に、
作品への意気込みを聞きました。
世界的作家、村上春樹の代表作の舞台化となります。
村上さんの作品は常に不可思議ですよね。つかみどころがないというか、言わんとしていることを自分なりに解釈してみるけれども、答えがないような感じというか。登場人物も、あの人とこの人は果たして同一人物なのかどうなのかグレーだったりするし、純粋な筋の部分だけではない要素もちりばめられている小説なので、どんなところを抽出していくのか、非常におもしろい創作行為に思います。
失踪した妻を探す主人公岡田トオル役を成河さんと渡辺大知さんが二人一役で表現するという趣向で、門脇さんは主人公の前に現れる女子高生笠原メイ役を演じます。
不登校の女の子で、死に対してすごく関心があるんですね。トオルをある意味もう一つの世界に導くような役割を果たしていくので、ビビッドな存在として表現していきたいです。あの年代独特の関心の持ち方、頭から何かが離れなくてしかたがない感じであるとか、彼女に集約されて描かれているように思えて。危ういからこそ魅力的なんですよね。インバルとのワークショップも進んでいますが、成河さんと渡辺大知くんの二人一役がセリフ的にも肉体的にもどうなっていくのか、とても興味があって。きっと、非常に実験的なことを試みていって、台本を読んだだけでは想像がつかないような、奇想天外な演出が炸裂するんじゃないかなという予感がしますね。一見、単に会話しているようなシーンでも、そこにいろいろな要素がプラスされて蠢いているから、別の見方もできる感じというか。観に来た方は、一度に観るところがたくさんあって、とても忙しいかもしれません(笑)。成河さんとは以前舞台でご一緒させていただきましたが、成河さんがいれば大丈夫みたいな安心感があって。いっぱいアイディアを持たれていて、インバルと仕事もされているので、きっと引っ張っていってくださるだろうし、おいていかれないように頑張りたいと思いますね。大知くんとはドラマで共演しましたが、舞台での共演は初めて。役者としての顔、ミュージシャンとしての顔、両方の顔を見られるだろうなと楽しみにしています。
今回のキャストの方々は<演じる・歌う・踊る>と<特に踊る>に分かれていて、門脇さんは<演じる・歌う・踊る>を担当されますが、その三つの表現方法で違いを感じるところはありますか。
あまり垣根を感じないですね。昔バレエをやっていて、そのとき舞台に立った感覚と、役者として舞台に立つ感覚って変わらないなと思うし。歌で音を外しちゃいけないとか、振りを間違えちゃいけないとか、そういうことは感じますけれども、セリフでも音を外したなと思うこともあったりしますし。感覚的にはすべて一体になっていて、歌わなきゃとか踊らなきゃとかは思わず、自然にやっている感じですね。
では、映像と舞台との違いは?
それはやっぱり違いますね。舞台だと遠くの人に届けなくては意味のないものなので、顔の表情で見せるということができない。映像だと瞬発力が大事になってきますが、舞台だと、心の中で起こっていることをちゃんとかいつまんで具体的に大きくしていかないと伝わらないので。舞台は稽古期間がありますし、毎日同じことを繰り返して、できなかったことを含め、自分と向き合わなくてはならない。何回も同じことを繰り返せる持久力や実験しては壊しを積み重ねていく探究心、そしてみんなで作り上げていく横のつながりを大切に感じられる感覚は舞台だからこそ鍛えられるところがあると思います。そこは映像作品においても、舞台で培ったものがプラスになっているなという感覚ももちろんありますが、やはり舞台と映像は別物だと思います。バレエをやっていたこともあって、舞台に立っているだけで満足するくらい舞台が好きで。楽しいしかないですね。
芝居、ダンス、音楽が融合して立ち上がる舞台、楽しみですね。
新しいジャンルを開拓していこうとするような作品ですよね。<演じる・歌う・踊る>って、みんなが追い求めていきたい究極のあり方だと思っていて。翻訳作品だと何かしらの無理は生じますし、和の作品を作ることも難しい。いきなり踊り、歌い出すようなミュージカルに対し苦手意識をもつ方も多いと思うんです。「演じる」「歌う」「踊る」の差をどうなくしていくかは、まだまだ開拓していける部分だと思いますし、その差が解消されることで可能になることはたくさんあると思うので、今回の作品は、今後の日本の演劇界にとっても有意義なものになると感じていて。新しいことを恐れずどんどん挑戦していって、お客様にも純粋に楽しんでいただけるような実験的な作品になればと思っています。
◎Interview&Text/藤本真由(舞台評論家)
◎Photo/中野建太
3/14 SATURDAY・15 SUNDAY
舞台「ねじまき鳥クロニクル」
チケット発売中
■会場/愛知県芸術劇場大ホール
■開演/各日13:00
■料金(税込)/全席指定 S¥12,000 A¥10,000 U-25チケット¥6,000
※U-25はメ~チケにて前売りのみ取り扱い
(観劇時25歳以下対象・当日指定席券引換・座席数限定・要本人確認書類)
■お問合せ/メ~テレ事業 TEL.052-331-9966(祝日を除く月〜金10:00~18:00)
※未就学児入場不可