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「三浦文彰×田村響」スペシャルインタビュー
取材日:2018.12.21

愛知県芸術劇場の「ダンス・コンサート」シリーズは、世界最高峰の“バレエ”と、
第一線演奏家による“音楽”を、同時に楽しむ、贅沢でユニークな公演です。
ウィーン国立バレエ団芸術監督のマニュエル・ルグリら“レジェンド”が登場する
3回目の「Manuel Legris『Stars in Blue』」で音楽を担当するのが、
2016年の大河ドラマ「真田丸」のテーマ曲演奏で知られる
ヴァイオリニストの三浦文彰と、
安城市出身で幅広いレパートリーを弾きこなすピアニストの田村響、
共に国際舞台で活躍する2人の俊英。
その言葉の端々には、歴史的なコラボレートへの期待感が滲みます。 

三浦さんは、3年前の「StarsintheMoonlight」に続き、2度目となるダンスとのコラボレート。前回は、どんな体験になりましたか。

三浦:普通のバレエ公演ならば、ピットにいるオーケストラ演奏や、録音された音楽で踊ることが多いのですが、このステージは、ヴァイオリンとピアノだけで音楽を奏でます。こんなにシンプルな編成なのに、これほど色彩豊かな舞台になるとは、僕も実際にやってみるまで分からなかったです。ダンスとの相性も抜群。全体の人数がコンパクトなので、密な感覚で舞台を創っていけます。演奏している間近で踊るので、本当に凄い迫力と美しさに感動しました。かたや、細かくタイミングを合わせなければならないので、どうすればダンサーの皆さんが気持ちよく踊れるのか、常に考えながら弾きました。


ダンサーとのコミュニケーションが鍵ですね。

三浦:はい。リハーサルは本番直前の2日間だったのですが、さすがトップの方たちだけに、最初からとても自然に入れましたね。とても楽しい経験になったので、こういう機会があれば、またぜひ参加したいと考えていました。

このコラボレート経験が、普段の演奏活動にフィードバックする点はありましたか。

三浦:音楽家にとって、イマジネーションはとても大事。それらが音色になると言ってもいいほどなので、この経験によっても、やっぱり色がつきますね。目の前で踊るダンサーの姿を見て、「この曲をこう感じているんだ」と弾いている僕の方も感じ取って、それに寄り添うというか、そういう気持ちが生まれた。同様に、絵画や食事、読書など体験することも全てが、自分の音楽を色づけていくんだと思っています。


今回も、バレエ界の“レジェンド”とも言うべき、ルグリさんら世界的な超一級のダンサーとの共演です。

三浦:特にルグリさんの踊りは、映像などで何度も観ていて、パフォーマンス自体ももちろん、例えば、インタビューひとつでも凄く品格があって、画面越しでもオーラを感じますね。実際にお目にかかるのが、とても楽しみです。

そして、今回初めてご出演となる田村さんですが、どう臨まれますか

田村:何せ初めての経験なので…。でも、リハーサルが始まれば、すぐに実感が掴めると思います。もちろん、バレエの細やかで特殊な作法など、勉強が必要だと考えていますけど、同じ方向へ向かっていくことだけは確かなので、そんな中で、こちらも柔軟に寄り添って、合わせていけば、楽しめるのでは。そんな感じで、作品が出来上がっていくといいな、と今は想像を巡らせています。



お2人は、これまで何度も共演されていますね。お互い、どんな音楽家でしょう。

田村:三浦さんには輝かしいコンクールの実績も技巧もあって、イケイケな(笑)雰囲気を持つ半面、音楽に対しての魂や本質に向き合う姿勢も強く感じられる。若さと、音楽に対する真摯な向き合い方、そのバランスが巧く取れた音楽家。私自身も、実は「いいなあ」と思って見ています。

三浦:田村さんは、とても“クラシカル”なピアニスト。僕らの世代では、高い技巧を持つのが当たり前ながら、そればかりを前面に出す演奏家が多い。しかし、田村さんは高い技巧を持ちながらも、とても真摯に古典に向き合って、常に素晴らしい演奏をされる。しかも、音が凄くきれい。絶対に、汚い音を出さない演奏家でもあるんです。

今回、フィリップ・グラスとアルヴォ・ペルト、現代の2人の作曲家による世界初演作品が含まれていますね。

三浦:グラスはまだ、譜面も届いていないので、どんな曲かはお楽しみ。一方のペルトは実は前回、やりたかったんです。音楽自体は平坦な感じですが、パトリック・ド・バナさん(ドイツの名振付家)によって、どういう演出や表現になるのか。とても楽しみにしています。

お2人の演奏だけのパートもあるんですね。

三浦:パガニーニ「ネル・コル・ピウ変奏曲」とラヴェル「ツィガーヌ」を弾きます。特にパガニーニは、難曲中の難曲。こういう技巧的な曲を弾くのは久しぶりですが、30歳になるまでにやっておいた方がいい、とも考えて…。

田村:私は「華麗なる大円舞曲」と少ししみじみとした「ノクターン第20番」を。同じショパンながら、対照的な2つの名曲がいいかな、と選びました。

特に田村さんは安城市のご出身ですが、今回の舞台となる愛知県芸術劇場コンサートホールは、いかがでしょう。

田村:いつも心地よい感覚、温かい気持ちで演奏できる素晴らしいホール。何よりも私の地元なので、いつも、知り合いの方もたくさん来てくださいます。

三浦:1,800人のホールなのに、全然、その大きさを感じさせない。ピアニッシモで弾いても、ホールの一番後ろまでぴーんと音がいっていると実感できるんです。2時間弾いても、疲れない。素晴らしいホールですね。


最後に、改めて今回の公演に対する意気込みを。

三浦:ルグリさんがインタビューで「ボリショイ・バレエのプリンシパル、オルガ・スミルノワと共演できるとは、思ってもみなかった」と言っておられたほどなので、まさに実現すること自体が「奇跡」という感じの公演。ぜひたくさんの人に来てもらいたいですね。今回は、僕だけが“経験者”ということで(笑)、少し責任感を持って、ピタッと完璧に合わせられるように頑張って、最高のステージにしたいと思います。

田村:バレエを観た経験のないお客様も、逆に、バレエが大好きだけど演奏会にはあまり行かないお客様も、それぞれが音楽と踊りの両方を楽しんで、また別の興味を持ってくださったら、うれしいですね。そして、私自身も、この経験をきっかけに、また新しい自分の世界を創っていけたらいい。そんな姿を、また楽しんでいただける舞台になればと願っています。

◎Interview&Text/寺西肇
◎Photo/安田慎一



3/17 SUNDAY
ダンス・コンサート
Manuel Legris 『Stars in Blue』
BALLET & MUSIC

チケット発売中
■会場/愛知県芸術劇場コンサートホール
■開演/15:00
■料金(税込)/全席指定 S¥11,000 A¥8,000(U25¥4,000)
B¥6,000(U25 ¥3,000) C¥4,000(U25¥2,000)
プレミアムシート¥14,000
■お問合せ/愛知県芸術劇場 TEL.052-971-5609
※U25は公演日に25歳以下対象(要証明書)
※4歳以下のお子さまは入場できません
※託児サービスあり(対象:満1歳以上の未就学児・有料・要予約)
※やむを得ない事情により内容、出演者等が変更になる場合があります