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「南野陽子」スペシャルインタビュー取材日:2024.10.01
劇作家・演出家の土田英生の書き下ろし作『神戸の湊、千年の交々』。
港神戸の始まりとなった大輪田泊(おおわだのとまり)。
この地で千年の間に起こった出来事をオムニバス形式で描いていく。
物語の軸となる夫婦を演じるのは南野陽子と大谷亮介。
兵庫県出身の南野は、思い出の多い神戸に思いを馳せる。
土田英生さんの作品は、2022年に上演された朗読劇『アネト』以来ですね。
土田さんとはドラマ「日曜劇場『半沢直樹』」(2020年/TBS)での共演がご縁で、『アネト』も本当にいいお話でした。その時、「今度はお芝居でやりたい」とおっしゃってくださって、この『神戸の湊、千年の交々』を書いてくださいました。台本を読むうちに、ページをめくるスピードがだんだん速くなっていくような、“土田マジック”がすごく面白いのですが、それだけに留まらず、見終わって数日後に作品について考える日が続くのではないかなと思います。
“土田マジック”とは?
一言で言うと“夕焼け”です。「空が青いでしょ!」と言っていたら、いつのまにかオレンジ色になっているみたいな感じです。土田さんは「感謝の恩返しスペシャル企画 朗読劇『半沢直樹』」(2020年/新国立劇場)の脚本も書かれて、序盤は「このままふざけて進むのかな」と思うような展開なのですが、急に壁が崩れて視界が広がるというか、「こういう深い意味があったんだ」とか、「こんないいお話なんだ!」とハッとするような感じで。面白いんだけど、最後はちゃんといいお話に着地されるところですね。
夫役の大谷亮介さんとは初共演だそうですね。
そうなんです。すごく楽しみです。絶対的な安心感がありますよね。でも大谷さんはやりにくいと思う、こういうタイプの人は。
南野さんとですか!?それはなぜでしょう。
私はすごく緊張しいなのですが、セリフを忘れた時は振り絞ってでも出すというタイプではなくて。どちらかと言うと「無理!」と投げちゃう。そうやって私が真顔で立っているから、相手役の方があたふたされるんです。だから、意外と大谷さんもあたふたされるかもしれない(笑)。
土田さんの作品は、人と人がちゃんと向き合っていて、登場人物がじっくりと対話を重ねながら関係性を構築していきます。南野さんが人間関係を築く上で大事にしていることは何かありますか?
今は自分のままでいることだなと思います。合わなければ合わないでいいと思う。昔は無理して合わせたり、相手の顔色をうかがったり、「自分はこうでなくてはいけない」と思っていたのですが、人と向き合うときも、とにかく自分のままでいること。その分、「今日はうまくお話ができなかった」と思うこともありますし、誤解されたかもしれないと落ち込んで、家に帰ってテレビを見ながら急にそのことを思い出して「あー!」と大きい声を上げてしまうこともあります。でも、私はこれから先もそんな感じで行くのだろうなと思います。お芝居もそうで、そういう後悔があるから、次こそはと思いながら続けている気がします。
お芝居の魅力は何ですか?
人の感情に深く入っていけることです。お芝居はお稽古で何度もセリフを繰り返すので、脚本を初めて読んだ時から感情や気づきなどがどんどん変わっていきます。自分のこともそこまで考えていないのに、なんでこんなに人のことを考えるんだろうと思うくらい深く入っていけることが、お芝居の楽しさかなと思います。
『神戸の湊、千年の交々』は千年という時間を行き来する物語です。「千年」と聞いて思い出すことは何かありますか?
『唐招提寺1200年の謎天平を駆けぬけた男と女たち』(2009年/TBS)という時代劇で唐招提寺を作った人を演じたのですが、歴史上の人物を演じたなかでは、それが一番古いかな。あと、昔、『源氏物語』を自分で訳したいと思った時期がありました。結果を先に言えば全然できなかったのですが、まずいろんな人の現代語訳を読もうと思って、10冊は読みました。
なぜ『源氏物語』を訳したいと?
最初は漫画の『源氏物語あさきゆめみし』(大和和紀)を読んで面白いなと思って。あとは、昔、住んでいた家が作家の田辺聖子さんのご自宅の数軒先だったんです。田辺さんの書かれた『新源氏物語』もすごく分かりやすくて、面白くて。同じ『源氏物語』でも作家さんによって違うから、「私だったら、どうなるかな?」と思ってやってみましたが、まったくお手上げでした(笑)。
『神戸の湊、千年の交々』に出演されるにあたって、現時点(2024年10月)で楽しみされていることはありますか?
お稽古が兵庫であるので、私はそれだけで「やったー!」という気持ちで、ご褒美のような感じでいます。もう兵庫にいるというだけでうれしいです。私は東京でお仕事をしている時も、頭の中は関西弁でしゃべっているんですね。でも言葉に出すとイントネーションが東京に変わります。関西にいると、頭の中のイントネーションがそのまま出ちゃうから、より本音でいられる気がします。何も考えなくても10代の頃の私に戻れる感覚でもあります。
最後に神戸の思い出を教えてください。
父とのデートが神戸でした。その時は父と私と2人で、ドライブして、ディズニー映画を観て、パフェを食べさせてもらったりして。私はお父さんっ子だったので、「今日は私がお父さんを独り占め」みたいな感じでうれしかったです。
◎Interview&Text/岩本和子
◎Photo/安田慎一
12/7 SATURDAY
兵庫県立芸術文化センタープロデュース
「神戸の湊、千年の交々」
■会場/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
■開演/14:00
■料金(税込)/一般¥4,500 U-25¥2,000
■お問合せ/兵庫県立芸術文化センターチケットオフィス TEL.0798-68-0255