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「前川清×藤山直美」スペシャルインタビュー取材日:2021.12.03
新春の新歌舞伎座は笑いと涙に満ちた芝居『恋の法善寺横丁』と、
前川清の歌謡ショーで幕を開ける。
『恋の法善寺横丁』の舞台は昭和3年、大阪・法善寺の小料理屋「誠志郎」。
店を切り盛りする辰子とふらりと訪ねてきた板前、徳三の恋の物語を中心に、
古き良き大阪の風情が感じられる人情物語を展開する。
飄々としたたたずまいと切なさを湛えた歌声で魅了する前川清と、時に軽やかに、
時に重厚に、豊かな表現で作品を彩る藤山直美。
数えきれないほど共演を重ねてきた名コンビが、大阪の春を寿ぐ。
まずはお二人それぞれのお役について教えてください。
前川:私は徳三という板前で、法善寺の前で野垂れ死にしそうなところを直美さん扮する女将の辰子に救っていただきます。
藤山:辰子が小さい時、板前だった父の誠志郎を亡くして。そしてお父さんが残した店を切り盛りするんですけども、花板さんに恵まれない。そんなころ巡り合ったのが徳三さんで。実は徳三さんは長崎での修業時代に父と出会っていて「困ったことがあったら訪ねて来い」と言われていたので大阪にやってきたという、そんなことから始まる物語です。
前川さんは板前役ということで、どのような役作りをされていますか?
藤山:何もしてません。工夫する人に見えますか?
前川:何と言うんですかね、お芝居は直美さんにお任せというか…、やっぱり温度差がありまして、でもこれはしょうがない。邪魔にならないように居心地のいいところでやらせていただいて…。
藤山:ほとんどの方が大阪弁でわ~っとしゃべっているところに前川さんが長崎弁で入って来られて。何か違う風が吹いてくるような感じで、すごくいいんじゃないかなと思いますね。
お芝居は、お二人が繰り広げる大人の恋も描かれています。
前川:これまでも直美さんとたくさんお芝居をやらせていただきましたが、今回は「これからも幸せでいこうね」というものではないんです。特にラストシーンは、直美さんのいろんな感情とか私の感情が出るような、台本と違った部分での空気感でやらせてもらえたら嬉しいですね。
藤山:どこから大人で、どこまでが子どもの恋なのかわからないですけども、大人の恋で一番見せやすいのは無口になること。語らなくなっていくのね、深くなればなるほど。だから、口数が多い場合は、まだ子供の恋なんですね。若い時は、拡声器。あんなことがあった、こんなことがあったって周りにもしゃべるけど、大人になると寡黙になります。しゃべらないです。
前川:照れくさいですよね。いつも思うのは、なんか照れくさい。いつまでたってもね、なんか恥ずかしい。
藤山:ほな、別れて終わりましょか?
前川:いやいや!
第二部の前川さんの歌謡ショーですが、先ほどお芝居で恋愛は照れるとおっしゃっていましたが、歌われる時はどうですか?
前川:歌の時は、照れはないですね。歌の時は没頭していませんね、歌詞に。「聞いてください」とか、「聞いてほしい」とかっていう気持ちも全然ないです。ただ感謝を込めて歌っているだけ(笑)。
藤山:前川さんは恋の歌を歌う時にね、「女の人の心になって歌います」と。だから「俺」とか「海」とか言われると気持ちが悪いそうです。
前川:「俺」っていうのがなぜだか気持ち悪い。女性の気持ちがわかるわけもないのに、どういうわけか歌っている時は女性になっているんですよね。「どうせ私は噂の女」とか、女性の立場の歌が多いから。
藤山:『東京砂漠』もそうですもんね。

では、女心も把握していらっしゃる?
前川:……把握はしてます。一応(笑)。歌い方に関しては、直美さんからこの前、「語りみたいな歌い方っていいですね」って言われて。僕は年を取って声が出なくなったなと思うんですけど、そう言われて「ああ、そうか」と勉強になりました。
藤山:思いっきり歌ってきた人が「語る」からいいんですよ。これからの前川さんは「心を語る」とか、そういうふうになったらいいなぁと思います。たくさんありますやん、語れるような歌が。
前川:若い時って声に頼っていたところがあって、言葉とか歌詞というものをあまり考えなかった。でも声が出づらくなった今は言葉が大切です。
藤山:私らなんかでも花道を歩く時、前と同じ歩幅では終わらないですもん。若い時と歩数が違うんですよ。それは当たり前ですよね。だから、上手に年取っていけばいいことやし、年を重ねることは当然のことですから。
歌謡ショーの構成はどのようなものをお考えでしょうか?
前川:昔から応援してくださるファンの方はヒット曲以外を聴きたい。だけど、初めて来られた方はヒット曲を聴きたい。そうすると悩むんですよね。今回もカバー曲を2曲、考えていたのですが、限られた時間の中で2曲もカバーをやっていいのかとか、その辺りはまだ悩んでますね。
藤山:何十回もショーはあるんやから、曲を変えてくれはったらいいのになっていつも思う。今日は『噂の女』をやめて『流木』を歌おうかとかやってくれはったらいいのになって。そうしたら、ファンの方も何回も聴きに来られますから。
前川:それいいですね、そうします。
藤山:今日は私の好きな『海鳴り』を歌おうとかね。
前川:日替わり弁当で。そういったのも手ですね。芝居は変えることはできませんけど、歌は変えられますもんね。そのアイディアは参考にさせてもらいます。『恋の法善寺横丁』に出られる役者さんたちが聴きたい歌のリクエストを募って。
藤山:嬉しい!「今日は直美さんがどうしても歌ってほしいから歌います」とか。たとえば、今日は野村真美さんのリクエスト、(池乃)めだか師匠、(田村)亮さんのリクエストとか言うて、その曲を入れはってもお客さんは喜んでくれはると思う。楽しいですよね。
前川:許しが出たらすぐやります。
藤山:前川さん、誰の許可がいるんですか!?
◎Interview&Text/岩本和子
◎Photo/来間孝司
1/4 TUESDAY~31 MONDAY
「新春特別企画 前川清・藤山直美」
■会場/新歌舞伎座
■開演/[昼の部]11:00 [夜の部]16:00
■料金(税込)/全席指定 1階席¥13,000 2階席¥7,000 3階席¥4,000 特別席¥15,000
■お問合せ/新歌舞伎座テレホン予約センター TEL.06-7730-2222(10:00~16:00)
