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「東西若手人気歌舞伎俳優」スペシャルインタビュー
取材日:2022.01.28


京都南座に吹くフレッシュな春一番は「三月花形歌舞伎」。
今注目を集める東西の若手人気歌舞伎俳優による豪華な公演。
演目は新歌舞伎の名作といわれる「番長皿屋敷」と、
十代目坂東三津五郎が現代に復活させた華やかな舞踊劇「芋掘長者」。
午前の部、午後の部では同じ演目を各回それぞれ配役を替えての
ダブルキャストで挑むという超豪華バージョンが実現する。
今をときめく東西五人衆に春の南座にかける意気込みを聞いた。


新歌舞伎「番町皿屋敷」では皆さんの役どころと意気込みを聞かせてください。

隼人:青山播磨を演じるのは今回で2回目になります。1回目は3年前の新春浅草歌舞伎で、その時は中村梅玉のおじさまに丁寧にお稽古をしていただきました。たまたま、僕自身が青山播磨と同い年という時に、演じさせて頂いたという事で、感情面なんかが登場人物に上手くフィットしたのかなという思い出があります。この物語は、男にとっても、女にとっても純愛の物語だと僕は思っているんです。難しいのは青山播磨と腰元お菊との二人のシーンで、基本的にずっと無音になってしまうこと。だから音楽的に台詞を口から出さないと間がもたないんです。そういった間の取り方がとても難しい演目です。

橋之助:大きな愛っていう部分をすごく大切にして、そこをうまく表現できたらと考えています。浅草歌舞伎で隼人さんが青山播磨を演じられた時、放駒四郎兵衛を演じさせていただきました。今回はダブルキャストということで、とても楽しい公演になると思います。隼人さんにいろんなアドバイスを頂きながら、米吉さんと一緒に素晴らしい一幕に仕上げたいと思います。

壱太郎:2017年に名古屋で梅玉のおじさまと、この「番町皿屋敷」で共演させていただきました。その期間中、毎日舞台が終わった後に梅玉のおじさまから丁寧にアドバイスを頂いて、梅玉のおじさまご自身がとても大切にされている演目なんだと感じました。その頃の台本を見返してみると“女の罪を考える!”って自筆で書いてあるんです。お菊という人物は、気持ちでもってどんどん揺れ動いていく人物像、そこをうまくお客様に観てもらえたら良いなと改めて思います。今回は隼人さん、橋之助さんも梅玉のおじさまにお稽古を見て頂くとのことなので、僕も改めてアドバイスやご指導を頂きたいと思っています。この物語の純愛だからこその罪というドラマツルギーの矛盾の面白さを表現出来たらと思います。

米吉:腰元お菊を、今回初役で演じさせていただきます。時蔵のおじにお稽古を付けていただきます。ダブルキャストなので、隼人さん、壱太郎さんの時とはまた違ったイメージで、私と橋之助さんとの皿屋敷も楽しんで頂こうと思っています。このお菊という人物像は、恋する相手に対して、どこまでも猜疑心を持ってしまうという感じが、現代の女性にも大いに共感される存在なのではないでしょうか。時代的に最終的には相手を殺すという行為になってしまいますが、そういった徹底した究極の愛を表現出来ればと思っています。私の父(五代目中村歌六)も青山播磨を一度演じておりまして、色々と話を聞いています。父が若い頃懇意にしていた劇団四季の故浅利慶太さんはこの作品は男の純情を最も良く描いた作品だと仰っていたそうです。そんな男の純情を描かせるためには、女の純情を表現する、お菊の芝居にかかっているんじゃないかと思っています。

巳之助:放駒四郎兵衛という役どころは、男と男の関係性における青山播磨を通して、その後の男と女の関係になった彼の人物像が立ち上がっていくという重要な場面だと思っております。錦之助のお兄さまにお稽古をつけていただくのですが、どういったアドバイスが頂けるのか、今からとても楽しみにしています。



「芋掘長者」については皆さんの中ではどういった演目なのでしょうか?また今公演ではどんな内容になりそうですか?

巳之助:父(十代目坂東三津五郎)が復活させた演目で、浅草歌舞伎では橋之助さんと踊らせていただき、今回は二度目となります。もう文句なしに面白おかしく笑って楽しんでいただける作品だと思います。このコロナ禍で疲弊した世の中で、せっかく足を運んでくださるお客様に、少しでも明るい気持ちになって頂こうという趣向で選ばせていただきました。ダブルキャストで相手役も変わりますが、最後にはみんな揃ってお客様にお顔をお見せできるのもこの演目の魅力のひとつではないでしょうか。

隼人:私は初めて演じさせていただきます。巳之助さんと、このような踊りの演目でご一緒するというのも実は初めての経験で、今からとてもわくわくしています。とにかく役柄としては踊りの名手に見えるように、また作品自体の持っている、ほんわかした楽し気な雰囲気を大事にして演じさせていただければと思っています。

橋之助:坂東三津五郎のおじさまと、父(八代目中村芝翫)が演じていたこの演目を子供の頃からずっと見ていました。もう本当に面白くて、曲も耳馴染みが良くて、子どもながらに大好きな演目でした。それを浅草歌舞伎で、息子たちで引き継がせてもらって嬉しかった気持ちをとてもよく覚えています。今回は巳之助さんと私に加えて、弟の歌之助も一緒に出させて頂いて、最後に兄弟揃って全員で皆さんにお顔を見ていただけるのがとても有難いことだと感じています。

壱太郎:「芋掘長者」は僕が17歳の時、坂東三津五郎のおじさまと中村芝翫のお兄さまの舞台を大阪で観たのが最初でした。もうめちゃくちゃ面白かったというのが第一印象ですね。もちろん巳之助さんが家元である坂東流もしっかりお稽古させて頂かないと、と思っていますが、何よりみんなで創っていくこの公演で、最後にみんなで同じ舞台に立っていられるという喜びを大切にしたいなと思っています。

米吉:私も客席から観させていただいた事はありますが、初めての演目になります。寓話的で昔話のような、わかりやすい筋立てがとても愉快で、また音曲的にも常磐津と長唄の両方の演奏のある華やかな舞台だなという印象が強くあります。このお話は緑御前に求婚する人が次々に踊りを見せに来る。そういう存在感が大事だと思っています。ダブルキャストでの腰元松葉と緑御前の演じ分けもすごく楽しみにしています。

花形歌舞伎や浅草歌舞伎など、若手による公演の醍醐味ってどんなところにありますか?

橋之助:今回の公演では僕が一番年少になるんですが、巳之助さんと壱太郎さんからお電話をいただきまして、先輩後輩という年齢には関係なく、同じ目線で切磋琢磨してがんばりましょうというお言葉をいただいて、すごく嬉しかったです。

米吉:ミニマムな中で、舞台を一緒に創っていけるのが本当にありがたいですね。この「花形歌舞伎」が連続して実施出来てきたことがすごく嬉しいですね。こういう時期ですから、とにかく安心で安全な公演にするべく全員でがんばっていきます。

壱太郎:こんな時期ですから、いろんな制約もあるとは思いますが、可能な限り、お客様に喜んでいただける企画を考えていきたいと思っています。どうぞご期待ください。

◎Interview&Text/石原卓
◎Photo/安田慎一(STUDIO.SHIN)



3/2 WEDNESDAY~13 SUNDAY
「三月花形歌舞伎」
■会場/京都 南座
■開演/[午前の部]11:00 [午後の部]15:30
■料金(税込)/一等席¥11,000 二等席¥6,000 三等席¥4,000 特別席¥12,000
■お問合せ/チケットホン松竹 TEL.0570-000-489