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「北翔海莉」スペシャルインタビュー
取材日:2015.04.06

昨年、100周年を迎えた宝塚歌劇。
歴代のスターたちが舞台上に描いてきた“夢の世界”は、
何世代もの観客を魅了し続けてきました。
華麗なる歴史を築いてきた宝塚の舞台人の中でも、
最も特別な存在が“トップスター”。
その時代、人気・実力ともに最も輝く主演男役で、まさに宝塚の「顔」です。
そして2015年5月11日、星組に新たなトップスターが誕生。
決意表明ともいえるインタビューがMEGで実現しました。
新生星組を率いる北翔海莉が、お披露目公演の全国ツアーを前に
心境を語った貴重な声をお届けします。

星組トップスター就任おめでとうございます。最初にお聞きになったときは、どのようなお気持ちでしたか?

自分の思いより、長い間応援してくださったファンの方にやっと恩返し出来るときが来た、という気持ちしかありませんでした。

今年で入団18年目、組替えを経験され専科でも活躍なさった上でトップに立たれました。これまでのキャリアを振り返ってお感じになることは?

’12年に専科所属になり、かつて所属した月組、宙組以外の組の公演にも出させていただくことが出来ました。花・月・雪・星・宙、全組のいいところを実際に見ることが出来たのは幸せでしたね。ひとつの組では気づかないことは必ずありますし、組によってカラーや得意分野も違います。全組の舞台を経験していろいろな刺激を受けたことで、自分の中の引き出しを増やすことが出来たと感じます。

どんなことが組のカラーに影響するのでしょうか?

やはり、トップスターのカラーですね。みんな、トップさんの背中を見て育っていますから。例えば同じ組でも、そのときどきのトップさんによってカラーが違います。私は専科のときに2回、花組公演に出演させていただきましたが、蘭寿とむさん時代の花組と現在の明日海りおさん率いる花組は、雰囲気がまったく違うように思います。星組は、これまで柚希礼音さんが率いていらっしゃいましたが、トップさんのカラー通りみんなとても情熱的でパワフルで、稽古場にも、全員が食らいついていくような熱い空気が満ちていました。トップさんが諦めないで限界まで突き詰めるタイプの方でしたから、自然とそんな雰囲気になっていったんだと思います。下級生たちにまで何かを追求していく精神が根づいているのは凄いことです。


北翔さんは、星組をどのようにリードしていこうとお考えですか?

私は、「ついて来て!」というタイプではないので、自分が自信をもって楽しんでパフォーマンスしている姿で、みんなに何かを伝えることが出来れば。これまで「メリー・ウィドウ」「風の次郎吉 –大江戸夜飛翔–」など、さまざまな組の公演で主演させていただきましたが、共演者みんなと同じ目線になって、それぞれが自分では気づかない新たな何かを私が引き出してあげられたらいいなという思いでした。下級生に至るまでみんなが同じ目線でひとつの作品に取り組むという姿勢がチームワークにつながりますので、大切にしたいです。また、今の星組はダンスがとても優れているので、その部分はみんなに教えてもらって助けてもらいながら、一緒に向上していけたらいいなと思っています。新しい星組を「自分が、こうしていきたい」というよりも、「気がついたら、こうなっていた」というものになるのではないでしょうか。


お披露目公演のプログラムは、ミュージカル「大海賊 ―復讐のカリブ海―」とロマンチック・レビュー「Amourそれは…」。作品について教えてください。

貴族の娘と海賊の許されない恋物語とロマンチック・レビューの組み合わせは、本当に宝塚らしい王道の二本立て公演です。’01年初演の「大海賊」は立ち回りもあります。主人公のエミリオは元貴族の品格も持ち合わせた海賊で、宝塚ならではの見どころはたくさんあります。初演の新人公演では敵役のエドガーをさせていただき、全国ツアーで再演された際にも出演させていただいた作品ですから、思い入れは強いです。「Amourそれは…」は、宝塚のレビューを代表する岡田敬二先生に演出していただきます。本場の宝塚歌劇をご覧になったことのない方にも「これが宝塚のレビューなんだな」と実感していただけるものになるはずです。

本拠地の宝塚大劇場や東京宝塚劇場になかなか足を運べない方にとって、全国ツアーは宝塚歌劇の世界に触れる絶好の機会です。

宝塚は夢の世界。宝塚歌劇団にしか表現出来ない舞台のカラーがあるので、それは、やはり生でご覧いただきたいと思います。いつも大劇場で放っているエネルギーを全国の皆さんにお届けして、それをきっかけに大劇場にも足を伸ばしてみようと思っていただくのが一番嬉しいことです。昨年、宝塚歌劇は100周年を迎えましたが、祝祭ムードが一段落したこれから、宝塚歌劇をどう皆さんに伝えていくかが重要だと思います。積み重ねた歴史も、崩れるときは早いですから。これまでたくさんの先輩方が作り上げてこられた伝統をきちんと受け継ぎながらも新しいものにチャレンジして、次の世代にしっかり伝えていかなければ。101年目の今年は本当に踏ん張りどきですので、一番大事なときにトップを任され身が引き締まる思いです。

入団から18年間、男役を極めてこられた北翔さんが舞台に立つ上で大切にしているのはどんなことですか?

男役だから…ということは特にありません。男役、娘役というよりも、宝塚の舞台人としてどうあるべきか。宝塚のモットーである「清く正しく美しく」というのは、舞台人として本当に正しい姿勢だと思います。芸事に対する取り組みももちろん、360度どこから見られても揺るぎない清潔感や美しさ、品性。宝塚の舞台人はそれらを全て兼ね揃えているべきで、そうあり続けるのが美学です。


そうした「宝塚の舞台人らしさ」を、私たち観客はスターの登場シーンで感じ取るのかもしれません。

作品はオープニングから3分間で全て決まるといいますから、登場シーンも大事です。お客様を引き込めるか引き込めないかは、どの舞台も初めの3分間で決まります。そこで「これが宝塚」というものをお見せしなければいけないので、一番の勝負どころだと思います。今回の「大海賊」は、海賊姿の男役が勢揃いして踊るシーンでの幕開け。宝塚ならではの迫力や華やかさを楽しんでいただけると思います。私が下級生時代に最も影響を受けた先輩は月組トップだった紫吹淳さんで、「大海賊」のエミリオも演じていらっしゃいました。紫吹さんのもとで学んだことは本当にたくさんありますし、一番憧れのスターさんが演じていらした役、自分が舞台袖や花道から勉強していた役を務めさせていただけるのは本当に光栄なことです。当時、立ち方から何から手取り足取り教えていただいたことをもう一度思い返して、それをきちんと受け継いで演じることで、次代を担う人たちにその芸を伝えていく。そんな思いで役に取り組みたいと思います。