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「が~まるちょば」スペシャルインタビュー取材日:2012.07.24
日本が誇るサイレントコメディー・デュオ、が~まるちょば。
海外公演でも高い評価を受けたオリジナル長編「ザ・ウエスタン」を盛り込んだ
ツアーに加え、「That’s が~まるSHOW!」も同時開催し、全国を沸かせています。
結成14年を迎え、ますますアグレッシブにステージに立ち続ける彼ら。
遂に待望の巻頭インタビューが実現しました。
8月に始まった全国ツアーの名古屋公演がいよいよ11月に行われます。長編ストーリー「ザ・ウエスタン」を再演なさっていますね。HIRO-PON:作ったのは’01年ぐらいなんですよ。それから何回か再演をさせてもらった作品なんですね。その都度いろいろ構成を変えたりバージョンを変えたりしています。最後に上演したのは、’08年のエジンバラですね。
ケッチ!:そこから、構成はちょっと変えてます。
HIRO-PON:あと、これは内々の問題ですけれどスタッフが変わっているんです。照明と音って、結構、重要なんですね。だからそこが変わってくると、全体的な仕上がりもまた全然変わってくる。が~まるちょばで活動を始めた頃は、キャパが200~300ぐらいの会場をターゲットにしていたのですが、最近は1,000ぐらいの大きな会場も多いんです。それに対応して照明や音楽などの演出を少しずつ変えています。あとは、ちょっとだけ使う小道具がバージョンアップしたり。毎回毎回、より良くしようと考えているので、細かいところが少しずつ変わっていますね。
ケッチ!:「ザ・ウエスタン」はエジンバラで3週間ぐらい、マレーシアでも2週間程の公演を行いました。前回(’07年)の名古屋公演以降、多分、合計30回ぐらいはやってるんじゃないかな?やっぱり、自分たちが毎日真剣にその場に立つと「あれ?こういう感情が芽生えてきた!」ということがあったりするんですよ。そこで「この方が自然だな」と思ったらやっぱりそれを採用していくので、そういう意味で作品が成長しているということもありますね。
「ザ・ウエスタン」は、どのように生まれた作品なのですか?
HIRO-PON:上演時間が50分ぐらいのいわゆる長編と呼んでいる作品が今、7本ぐらいあるんですけど、この作品はその中の3本目なんです。1本目の作品は、本当に手探りでした。そもそもふたりともソロでやっていたのですが、コンビを組んで初めての公演のときに1本目を作ったんですね。パントマイムというのは、ひとりでやる場合は長くても20分とか、短いものをオムニバス形式にしてやる人が多くて、僕らの師匠や先輩とかもそうでした。50分ぐらいの長いものをひとつの作品として上演するというステージを僕らも観たことがなかった。でも考えていくうちに、そいういうことが可能なんじゃないかという閃きがあって、初めてやってみたら意外と上手くいったんですよ。それで、これはもっとやるべきだと思って2本目も作ったんですが、まだまだ手探りの部分があって、反省すべきところが多かったんです。で、その失敗を踏まえた上での3本目だったので、その後も再演するに値するものができたのかな、とは思います。西部劇という素材は、ソロのときからずっと持っていました。パントマイムで何ができるんだろう、ということは常に考えているんですよ。これは作品になる、ならない、って。例えば映画から題材を取ろうと思ったときに、昨年やったサイエンス・フィクションだったりとかいろんな素材がある中で、西部劇は作品になりそうだな、という思いはずっとあって。それがふたりになってできた、実現したという感覚ではありましたね。
観る人の記憶の中からイメージを呼び覚まし、
ストーリーを作り上げる。
西部劇のどういうところがパントマイムに向いていると思われたのですか?
HIRO-PON:そもそも僕は子どもの頃から西部劇が好きだったんです。ジュリアーノ・ジェンマとか、クリント・イーストウッドが出ている作品が、昔から自分の中では楽しめる映画でした。僕らが素材として使っているのは復讐劇なんですけど、それはストーリーとして現代にも置き換えられると思うんですよね。そもそも「荒野の七人」だって、黒澤明監督の「七人の侍」が素材でしょ?そういった形で、ウエスタンだけれど内容は本当にオーソドックスでわかりやすいものにしています。
多くの人が知っている題材なので、見る側もイメージしやすいですよね。
HIRO-PON:そうですね。わかりやすいからそれ以上のことができるというのがありますね。わからないものをやろうとすると、それに対する説明がけっこう難しくなってくるので。「それ知ってる、知ってる」「あるある!」みたいなところから素材を取って、それを僕らがどう料理するか。みんなが知っている卵を僕らがどう料理するか、ということですね。中南米の奥地から持ってきたあまり見たことないような素材をこれから美味しく仕上げますよ、というんじゃなくて、みんなが知ってる卵やキャベツを上手く調理するという感覚かもしれないですね。
ケッチ!:パントマイムって、壁ひとつ表現するにしても、見る人の記憶の中から呼び覚ますようなところがあるんです。触ると手のひらが真っすぐになる、とか。ウエスタンって言ったら馬だよね、とか、早撃ちだよね、とか。そういうみんなが持っている共通の認識からイメージを引っ張ってきて、西部劇といえば、馬、早撃ち、復讐、風が吹いてる、とか。そういうところをどう表現したらみんなの共通認識から面白いストーリーができる、というところですね。
同じストーリーを違うものに見せる、役者としての力量。
オーソドックスな西部劇の中に、ストーリーとして新しいものを取り入れたりは?
HIRO-PON:ストーリーとしてはあまり入ってないかもしれないですね。結局、ストーリーが同じでも、演じる側がどういう気持ちでいるかという、お芝居をする人間の技量の話になってきますよね。僕らは今年で14年目なんですが、この作品を作った’01年の僕らよりは今現在の僕らの方が確実に技量は上だと思うんです。ただ、肉体は衰えているかもしれない。その辺は差し置いても、役者としては確実に成長していると思います。その成長したが~まるちょばが同じ素材を演じた場合、そこに深みを持たせて演じ切れるだけの技量というのが昔よりはある。つまり、観ている人にそれだけのことを伝える能力が強くなっているから、同じストーリーでも違うものに見えるんじゃないかな。例えば、ふたりの男が出会ってどう思うか、どういうことを感じるか、というたったそれだけのシーンだとしても、伝えられるものは昔よりも遥かに多いと思います。同じストーリー、同じ長さだったとしても、やっぱり伝わるものというか、作品の深みはあると思うんですね。それがいいのかどうかはわかりません。若いときの勢いだけのステージの方がいいのかもしれない。例えば欧米なんかに行くと意外と大味なのがウケたりするので、深みがあろうがなかろうが、一瞬の勢いの方が評価されたりする場合があったりするんですよ。それはもう本当に好みにはなってしまうけれど、僕ら的には舞台の上に役者として立ったとき、同じストーリーでもやっぱり昔よりは断然いいストーリーになっていると思います。
お話を伺っていると、おふたりのパフォーマンスはまさに演劇ですね。作・演出などの役割はどのように?
HIRO-PON:ここ何年かは、ほとんど僕が作っています。「ザ・ウエスタン」はふたりの共作ですね。そもそも長編を作るときには、どちらかが原石を持ってきてそれをふたりで磨いていくという形でやっています。根源はどちらかが持ってきて、それをふたりで磨くという感じですかね。演出は、ふたりでアイデアを持ち寄って、ああだこうだ、とやっていきます。
石橋を叩き壊すHIRO-PONと、気づかず渡るケッチ!
おふたりで作品を作っていく上で、共通点や相違点など、お互いに感じられることはありますか?
ケッチ!:よくインタビューなんかで言うんですけど、HIRO-PONは石橋があったら叩いて叩いて叩き壊しちゃう。僕は壊れた石橋でも気づかないで渡っちゃうようなところがあるので(笑)、それが作品づくりにも反映されます。例えば僕らの場合、こういうストーリーがいいよねと思ったとしても、その通りにはできませんよね。登場人物が4人も5人も出てきてそれを僕らふたりでやらなきゃいけない。ストーリーは進めつつ、ひとりは着替えなきゃいけなかったりするので、ここで3人目を出したいと思っても、どうしてもできない場合がある。じゃあ、どうやって表現するかというのを考えるのは、パズルみたいなんですよね。そういうことなんかもHIRO-PONの方が得意です。お互いの性格が作品づくりに影響しますね。
HIRO-PON:構築する上でアイデアとしてはお互いにボンボン出てくるんですけれど「それをやったらこうなるじゃん」ということを考えたときに、けっこうボツになることはありますね。僕はどちらかというと、全体像を見て整合性を考えるタイプ。そのときに彼の即興的なアイデアをもらって、より面白くしていくんです。ふたりの性格が全然違うので、出てくる発想もちょっと違いますね。
とてもいいコンビネーションですね。
HIRO-PON:ホント、そうですね。互いにないものを補い合ってるというところはありますね。それが1+1=2じゃなくて、3にも4にもなっているんだろうなというのは、やってみて感じています。
今、全国ツアー中ですが、同時に「That’sが~まるSHOW!」も開催しています。高山市の公演は、飛騨地方で初めてのステージになりますね。
ケッチ!:「That’sが~まるSHOW!」は、僕らが結成当時からやっているパフォーマンスを全てお見せしようという形ですね。よくテレビで披露しているネタが中心です。いろんな出し物がある中で、ステージによってできないネタもあったりしますよね。そうすると「あれ?エスカレーターは見られたけど、ロボットが見られない」「もっとたくさん見たい」という声がお客さんから出るようになったので、だったら一気にバーと見せましょうと。
「That’sが~まるSHOW!」は、初めてご覧になる方やお子さんなども、より楽しみやすい公演でしょうか?
ケッチ!:そうですね。入り口としては。だから、4歳以上からご覧いただけます。長編をやる「が~まるちょばサイレントコメディーJAPANTOUR2012」は小学生以上なんですけど。
HIRO-PON:「That’sが~まるSHOW!」では、最初から最後まで僕らがモヒカンとスーツ姿でお客さんの前に立つ、と。今日のこのスタイルですね。楽しみにしていてください。