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「古川雄輝」スペシャルインタビュー取材日:2022.04.22
人間が潜在的に秘めた善と悪、正気と狂気など相反する感情を、
恐怖と笑いに織り込んで描いてゆく舞台『室温~夜の音楽~』。
2001年にケラリーノ・サンドロヴィッチの作・演出で初演し、
第5回鶴屋南北戯曲賞を受賞した本作が、
河原雅彦による新演出で21年ぶりに登場します。
ホラー・コメディで展開するこの物語、古川雄輝が主演します。
3年ぶりの主演舞台ですね。
そうですね、きちんと役ができるかなという緊張感と、素敵な舞台にしたい、みんなでいい芝居ができればいいなというワクワク感と、今はその両方の感情がある状態です。3年前の舞台(『神の子どもたちはみな踊るafterthequake』)も主役をやらせていただいたのですが、今回もそういう形でオファーをいただけて大変嬉しく思います。
『室温~夜の音楽~』はホラー・コメディというジャンルになります。ケラさんの戯曲をお読みになっての段階で、作品をどう受け止めていますか?
シリアスなシーンやちょっと怖いシーンがあるなかで、役者さんの掛け合いで思わずクスッと笑ってしまうような構成になっていて。お客さんのその笑い声も含めて舞台が完成する台本になっているのかなという印象がありました。演じる人によって笑うポイントも変わってくる作品なのかなと思っています。
ご自身で「自分のここが狂気的だ」と思うところってありますか?
狂気的な一面ですか?役についてこうだと思ったら譲れないところですかね…。諦めない。そこは少し狂気というか異常だなと思います。譲った方が事がうまく進むこともあると思うんですけど、こだわりが強くなって譲れなくなるので「譲ればいいじゃん」って思うことがあります(笑)。
なるほど(笑)。古川さんは2022年は上半期だけでも4本の連続ドラマに出演されていますが、ドラマと舞台とでは、演じ方はどのように異なりますか?
ドラマは即興の力を求められるので、目線や細かい動きでの表現が生かされますが、舞台だとそれが通用しません。後ろに座っているお客様に届くように声の出し方も変えないといけないし、足先まで全身を見られているので、ちょっとした緊張感もありますね。
舞台ならではの演じ方や見せ方で、過去にどんな壁に当たり、どのように乗り越えていったのでしょうか。
細かいことですが、「受け」の芝居とか…。映像だったら、多分これでOKが出るだろうなと思えるものが、舞台ではなかなかOKが出なかったことがあって。また、セリフをしゃべっていない空間も埋めないといけませんし、繊細なリアクションは席が後ろの人には見えないので、そういった見せ方が非常に難しいなと思います。舞台は壁にぶつかってしまうことが多いので、乗り越えられたときは安心します。それは乗り越えて嬉しいというより、良かったなっていう感覚ですね。
これまでに、ご自身が成長したと実感した現場はありましたか?
もう全部ですね。芝居面でもそうですけど、「人間的にこの現場で成長できた」というものもあります。それは先輩の姿を見たり、いい演出家の人に出会ったりとか、結局人との出会いで。失敗をすると「次はしないようにしよう」と思うんですけども、パーソナルな部分って簡単に変わらないので、同じ失敗を繰り返したりもするのですが、舞台はいつも「少し成長できたらいいな」という思いで挑んでいます。
ちなみに、役作りはどのようにされていますか?
基本的にはセリフを覚えながら進めます。あと、台本がすべて準備されているのであれば、気になるセリフがあったらそれを言えるように、逆算して作ることが多いかもしれないですね。気になるセリフがあるということは、そのキャラクターとしてそれを言えない可能性があるので。このセリフを言う人物はどういう人なんだろうと前段階に戻って考えます。自分は監督や演出家の方にかなりご相談をしたいタイプなので、衣装合わせの段階で結構、質問して、全てクリアになってから演じたいと思う方です。正解を出せるのは監督や演出家だけなので、とことん話して、気になるセリフを肉付けするという感じです。
この取材中でも、古川さんはすごく慎重に言葉を選ばれる印象があります。
そうですか?慎重に見えているのだとしても、自分は慎重な判断をできるような人間ではないですね。非常に対人関係が苦手ですし、不器用ですし、事をうまく進めるのも下手です。だから、現場では役者さんとセリフしかしゃべらないこともよくあります(笑)。
そうなんですね。意外でした。では、今回は兵庫県での公演ですが、関西の印象などありましたら教えてください。
特に大阪ですが、コロナ禍前は毎年、クリスマスにファンクラブイベントで来ていました。コロナ禍になってからはできていないんですが、僕の中では大阪は楽しい思い出です。
最後に、改めて本公演に向けての意気込みを教えてください。
3年ぶりの主演舞台ということで、キャストの皆様と良い作品を作れるように頑張りますので、たくさんの方に観に来ていただきたいです。先ほども言ったように、この作品はお客様のリアクションがあるからこそ成立します。「ここ、笑っていいのかな」という心理を狙っているような戯曲なので、1人が笑ったら周りもつられてどんどん乗ってくるのではないかと思います。皆様と一緒に楽しい体験ができるよう、これから稽古を頑張ります。トークショーもあるので、ぜひ遊びに来てください。
◎Interview&Text/岩本和子
◎Photo/内池秀人
7/22FRIDAY~24SUNDAY
舞台「室温~夜の音楽~」
■会場/兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール
■開演/7月22日(金)18:30 7月23日(土)12:00、17:00 7月24日(日)12:00
■料金(税込)/全席指定 A¥9,500 B¥7,500
■お問合せ/芸術文化センターチケットオフィス TEL.0798-68-0255
(10:00~17:00、月曜休 ※祝日の場合は翌日)
※未就学児入場不可