HOME > 清水ミチコのシミズム > 清水ミチコの「シミズム」#77
先日、大竹しのぶさんとラジオで対談をしました。
いつも正直で面白い大竹さんは、
失礼ながら一種の女性芸人として、
ずっと観察していたいほどです。
また、そんな事を言っても怒らなそうなタイプで、
自分に正直な人ほど人の率直な意見にも寛容なところがあるのか、
会えばしょっちゅう私につっこまれてニコニコ笑っています。
自分でも「本音ばっかり出ちゃうの」と語る大竹さんですが、
過去にはこんなことがあったそうです。
海外公演での本番が
(正直、あまり出来がよくないなあ)
と思うお芝居だったそうでした。
長年やっていると、そんな日もあるのでしょう。
終演後、大竹さんはみんなにこう呼びかけたんだそうです。
「今日、よくなかったよね、お芝居。
もっと気持ちを引き締めてぶつかった方がいいと思う」。そのあと、
「私の芝居はよかったけど」と、
うっかり続けたというのです。
確かに、ひと言多い。笑いました。
公演に出てるメンバーは、その当時ぶっちゃけ、
初のN.Y公演だったので、
誰もが自由の女神との記念写真を撮りに行ったり、
グルメにショッピングにと、
気持ちが明らかに浮かれてたんだそうです。
わからんでもない人間の心理。
私なら機内からすでに浮かれそうです。
「じゃあ、大竹さんはN.Yに着いて、
浮かれてなかったんですか?」と聞いたら、
「うん。私はホテルから街に一歩も出歩くこともしなかった。
だって本番が楽しみすぎるから」とのことで、
台本片手にお芝居しか頭になかったという
凄いオチがあったのがさすがでした。
演劇の本だったかで読んだことがあるのですが、
「芝居というものは仕事ではなく、
常に大いなる遊びでなくてはならない」
という言葉がありました。あれは遊びなんですね。
本物の女優は、うつつをぬかすのは海外やグルメ、
遊興ではなく、お芝居の中でできてしまうのでしょうか。
超カッコいい。
私はもっとこういう話を聞きたいです。
本番でうつつを抜かせるかどうかは、
度量や才能も試されそうですね。この日は笑わされながらも、
いつのまにかすっかり尊敬してしまいました。