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清水ミチコのシミズム

スーパーのエレベーターで聞こえてきた会話です。
「下北沢の〇〇マンって食品の名前の
キャラクターの人いるじゃない。
あの人なんでどこか態度がえらそうなんだろ」
「ああ、だって彼、本業はラップを歌ってるそうだよ」

「フーン」終わり。(フーンじゃないよ!)、
私は会話に参加したくなる衝動を押さえながら、
帰り道、一人で考えました。
「ラップを歌ってる人なら、えらそうでもしょうがない」、
とはどういうことなのか。
言われてみれば、
ラップという音楽は腰が低い人ほど下手そうです。
あれはどこか上から堂々と、
自己を誇らしく歌ってくれないと面白味がない。
「言葉のパンチをくらえ!」とばかりに、
主張したいことを、
歌で思い切り殴打してほしくなるものかもしれません。
アメリカで暮らし始めた日本人が、
「謙虚にペコペコ暮らしてても、
いいことが何もないとわかった」と
言ってたことを思い出しました。
アメリカ文化とはそういうものらしいですよね。
主張文化。卑下したら負け。
しかし、日本全国の「ゆるキャラ」などの
町おこしのキャラクターは、
どこか不細工にデザインされてたり、ドジだったり。
そしてそこを敢えて愛するのが日本のへりくだり文化で、
それこそ腰の低さが肝だったりします。
ふなっしーの腰の低さこそ日本人を表してます。
町の愛されキャラになるのか、はたまたラッパーでいくのか、
二足のワラジはむつかしいかもしれませんなあ。
でも、そんないろんな理屈を通り越しての
「フーン」で雑に終わる会話なのは、
それはそれで面白かったです。
興味ないんかい、でした。
ところで若い人に共通する音楽といえば、
最近は「イントロいらず」なのだとか。
UTA(Ado)、米津玄師、YOASOBIなど、
代表曲に本当にイントロがなくて驚きました。
すぐ歌に入って欲しいというせっかち文化の到来。
カラオケなんかでも、間奏の時間はスキップするそうです。
中身だけでいいから早く、という感じなのでしょうね。
結果をすぐに出せと。
ドラマも1.5倍速で観るという話もよく聞きますね。
私はせっかちなのですが、逆に急かされるのが大の苦手。
運動会の曲とかいまだに胸が苦しくなり、
苦手なままです(そのたとえが古い)。