HOME > 清水ミチコのシミズム > 清水ミチコの「シミズム」#50
先週、「女王陛下のお気に入り」という映画を観に行きました。
女王をめぐって、侍女の二人が壮絶な憎みあい、
足の引っ張り合いをするというイジワルな映画。
男性陣は刺身のツマのようにパッとしませんでしたが、
絢爛豪華な宮殿や上品で美しいコスチュームとドロドロした心理が相まって、
ほど良い悪趣味が絶妙なスパイスとなっています。
映画館もとても混み合っていましたが、
女性同士のバトルというものは、
男と違ってドロドロネチネチするほどなぜか面白いものですね。
仕える一人は、女王に「お化粧が変です。
まるでアナグマですわ。」と注意する。
しかしやってきた新人は、陰でそっと「いいえ。
なんて美しいのかと、宮廷でも噂になっております。」
などと優しく声をかけます。
容姿にコンプレックスのある女王は、どっちを選ぶか。
というあたりも最後まで見ものですが、
どこかで(やはりどんなに口が悪くても、正直な言葉は貴重である)、
と見る側に思わせます。
私の知り合いにも、言葉がストレートな女子(30代)がいます。
話を聞くのが楽しみなほどいつも正直で独特です。
お正月に、夫婦で箱根駅伝を見に行ってきたというそのコ。
「どうだった?」と私が聞いたら、
「うん。なんか、テレビで見てるよりもずっと、」というので、
私はそのあとの言葉を「感動した」と言うのか、
「苦しそうだった」というのか、と予感しました。
しかし、違いました。「遅かった」と言うのです。
思わずもう一度聞き返してしまいました。
「遅い?そんなワケないでしょう。」と私。
「いや、もっと早く走れるはずだ、って思った。」
と、自信をもって言ってたのに笑いました。
なんて失礼な話でしょうか。
でも、私は思いました。
本音というものは、
正解か不正解か、なんてこと以上に、
真実を超えた面白味がひそんでいる、と。
でも現地でその感想を聞いた旦那さんは、
彼女にこう教えたそうです。
「自分の無知をもっとわかったほうがいいよ」。
ああ本音ってやっぱり面白い。