HOME > 清水ミチコのシミズム > 清水ミチコの「シミズム」#40
芸能という仕事はおおよそ、
大きく3つに分かれる、と私は思います。
バラエティ(お笑い)、音楽、そしてお芝居。
どの道もうつつを抜かす世界ですが、
面白いのは、現場でふと聞こえてくる出演者同志の会話がぜんぜん違うこと。
バラエティはやっぱり、冗談も混じった明るいやりとりが自然と多くなります。
ちょっとしたイメージトレーニングにもなっているのかもしれませんね。
急にふざけるよりも、本番前からふざけていた人の方が、
ちょっとした一言が耳に自然なもの。
しかし音楽はどうかというと、
見たところ出演者が横の人に話しかけ、
ダラダラとおしゃべりしたりはあんまりしません。
特に生放送、個人個人が3分ほどで表現する世界に集中しているため、
邪魔をしない、という暗黙のルールが生じるのでしょうか。
そしてお芝居、ドラマの世界はとてもユニーク。
食堂では無精ひげのサムライがケータイを見ながらラーメンをすすり、
町娘が女性誌の占いページを読みながらコーヒーを飲むなど、
ここまでならともかく。
先日ドラマの顔合わせがあったのですが、
まわりでは脇をかためる役者さんたちの会話が途切れ途切れ聞こえてきました。
「ころもへんに上下って書いてなんて読むか知ってる?カミシモって言うんだ。
オレ新劇出身だから、特殊漢字ってすぐ読めるんだよ。三和土(タタキ)とかサ。」
など、チラッと聞いただけでもめちゃくちゃ面白く、
私の耳は集中して盗み聞き。
「もしかして、『水戸黄門』の時、一緒に斬られた大塚さんですよね?
後ろで4時間倒れてた水内です!」とか、
「こないだまでは長年刑事だったのに、例のストーカーが好評で、
オレ犯人専門になっちゃったよ。ははは。」
など、普通に聞いてしまったら、ぎょっとするような内容。
「つい昨日まで、三万年前のエジプトにいました
〇〇です。よろしく!」など、
大丈夫ですか頭は、などと聞きたくなるような(失礼)初対面の挨拶も斬新でした。