HOME > 清水ミチコのシミズム > 清水ミチコの「シミズム」#29
私は高校時代から矢野顕子さんの大ファン。
コンサートがあれば、必ず観に行きます。
もちろんモノマネもしているのですが、
(いま私、矢野顕子になってるのだ)
という錯覚以上の快感はほかにありません。
脳内物質ドバ!です。
ピアノはなかなかおいつかないけど、
高校から精神的にはちょくちょく「なって」きたわけですから、
自分のライブなんかで彼女を歌う事は、
自分へのご褒美であり、お楽しみのひとつです。
最近は矢野顕子さんのコンサートに一緒に出させてもらったり、
ついには全国ツアーにも参加できました。
先月はウチにいらしていただき、
気軽にピアノを弾いてくださいました。
気さくな方なんですね。
さて、先週、矢野顕子コンサートに行ったとき。
会場の中央あたりの業界席で、
矢野さんの娘さんである坂本美雨さんと隣同士だったので、
開演前、一緒におしゃべりをしていました。
そうしたら、女性のお客さんが、
私を見てとても驚いた顔をなさっていました。なんだか、
ガッカリ、という一瞬の表情が顔に出ています。
「あの…清水ミチコさんですよね?」
「あ、はい。」どうしたんであろうか。
「え、矢野顕子さんの大ファンなんですよね?」
「はい!」
「え。なのにこんな席なんですか?」
「…え?」
「一番前じゃないんですか?」
「一番前じゃなくて、いいんですか?」
「はい。」
私はちょっと笑ってしまいました。
なんと、おそらくその方は、
一番前こそが良い席だと思い込んでおられた風なのでした。
かわいい。
でもさ、知り合いがかぶりつきで見てるて。
私はともかく、なによりご本人がやりづらそうです。
近い。近すぎる。圧が。
私なら絶対ご遠慮願いたい。
それにしても「一番前じゃなくて、いいんですか?」
の語呂はまるで、国会で詰め寄った蓮舫さんの有名なフレーズ
「一番じゃなきゃダメなんですか?」みたいでした。
あ、こっちからそのまんま彼女にそう言えばよかったのか。