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清水ミチコのシミズム

あ、いま言い過ぎてしまったな、
という時に「いい意味で!」とか、
「悪気はないんですよね」は、
なかなか有効な言葉です。
しかし、やっちまった感、
しでかしちゃった感のある言葉の99%は、
実は悪気のないもので構成されています。
私は思う。
本当に人を傷つけるのは、小さな本音に尽きるのではないかと。
ここが、面倒なところであったりするのですが。
私がまだ20代のとき、人生で初めて肥満体となりました。
親元を離れての、初めてのダラダラした生活というものは、
なんといっても自由がきくし、
食べもんは健康食じゃないぶんヘタにおいしい、
そして運動などまずしない、
夢のような(カラダには悪夢だけど)生活。
そして体重がマックスに達しました。
そのころの話です。
ふと入った原宿のブティックで洋服を見てると、
店員さんが本当に申し訳なさそうな顔で近寄ってきて、
そっと私だけに聞こえるように小声で言いました。
「ごめんなさい。ここ、Mサイズしか置いてなくて~。」
初めて自分の体形に気がつき、
私は謝らんばかりにその店を出たのでした。
今にして思えば、自分のためじゃなくって、
もしかしたらプレゼント用かもしれないじゃん!
とも思えるのですが。
しかしそんな理屈はずっとあとでついてきたことであり、
気が弱い一面もある私は、その時は本当に恥ずかしい、と
しか言いようがありませんでした。
口が悪い人ほど想像力があるのに比べ、
親切でかつ、そっと静かに言うような人ほど
案外言葉が刃物のようにスッと入ってきて恐くなる。
さて、つい先日の事。
番組で、いつもお世話になってるスタイリストさんが
私にワンピースを用意してくれていました。
明るいグリーンのトーン。しかしハデすぎない。
遊びがあるのに品がある。さすが綿引エイミ。
靴との組み合わせも絶妙。
上機嫌で収録は終わりました。
で、いつもとても小声なADさんが私に小声で言いました。
「今日の収録、とてもよかったです。衣装もステキでした。」
ありがとうとお礼を言った、その矢先です。

「まるで郁恵ちゃんの ピーターパンみたいです!」

誰が喜ぶ?
しかし悪気は毛頭ないのです。
私も小さい声でもう一度お礼を言いました。