HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.75「源氏供養 真之舞入」
「源氏物語」の主人公・光源氏を供養せず成仏できずにいる、紫式部。苦しむ彼女の霊は救いを求めるが…。源氏物語の巻名を詠み込んだ情緒あふれる謡と舞が見どころ。宝生流のみに伝わる小書(特殊演出)「真之舞入」は見逃せません。
【物語】ある春の日、安居院法印(あぐいのほういん)の一行が、琵琶湖のある近江国をめざしていました。彼は、仏法を説いて人々を導く“唱導”の名手。石山寺の観世音に参詣するところです。すると、ひとりの女性に呼び止められました。自ら源氏物語を書いたが光源氏の供養を怠ったため、今なお苦しんでいると言うのです。代わりに供養して救ってほしいと法印に頼み、姿を消した女性。彼女は、源氏物語の作者・紫式部の霊だったのです。その願いの通り、石山寺で回向をする法印。源氏物語を供養し、紫式部の菩提を弔うのでした。夜が更け辺りはひっそりと静まり返る頃、現れたのは、ありし日の姿をした紫式部の霊。供養に感謝して布施を申し出ます。すると法印は、布施の代わりに舞を所望しました。世の無常を感じ救済を願う自らの思いを舞に託す、紫式部。ついに救いを得て去っていくのでした。