HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.73「雲林院(うんりいん)」
不思議な夢に導かれ、雲林院に出向いた芦屋公光。そこで出会った業平の霊は、二条后との危険な恋と昔を偲び語り舞う—。平安時代を代表する歌物語「伊勢物語」を題材に、主人公・在原業平と二条后の秘事を描く優雅な演目です。
【物語】津の国芦屋の里に住む公光は、幼い頃から「伊勢物語」を愛読していました。ある時、物語の主人公・在原業平と二条后が京都紫野の雲林院に佇んでいるという不思議な夢を見たことから、従者たちを伴って彼の地を訪れます。折しも花の盛り。満開の桜に包まれた雲林院で興に乗った公光は、一枝折ろうとします。するとそこにひとりの老人が現れ、古歌を引いて公光を咎めました。そこで公光も古歌を引いて応酬し、ふたりは風流な歌問答を交わすのでした。そして公光は、先日見た夢について話し、自らが雲林院にやって来た事情を明かします。老人は「それは、業平が『伊勢物語』の秘事をそなたに授けようとしたものだろう」と告げ、春の宵の霞にまぎれて消え失せました。彼こそ業平の化身だと確信した公光は、その夜、雲林院に留まります。すると夢の中に在原業平の霊が現れ、昔の二条后との逃避行を語り、懐旧の舞を舞うのでした。