HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.71「草紙洗」

ドラマチック!OH!能

名だたる歌人を一堂に集めた架空の物語として創作された「草紙洗」。歌合という雅びな宮中行事を舞台にどろどろした人間の欲を描きながらも、清々しいハッピーエンドを迎える華やかな演目です。見どころは、大伴黒主から盗作の疑いをかけられた小野小町が、身の潔白を証明するため草紙を洗うところ。場面を盛り上げる美しい謡も聴きどころです。


Ⓒ工房円

【物語】四月(旧暦)の半ば、都の清涼殿で歌合が催され、大伴黒主の相手には小野小町と定められました。開催前日、歌の実力では小町に敵わないと思った黒主は、歌合のために彼女が詠んだ歌を盗み聞いて万葉集の草紙に書き入れ、盗作を演出しようと企てます。翌日の歌合では、帝をはじめ紀貫之ら歌人が居並ぶ中、まず小町が歌を披露。帝が小町の歌を讃えると黒主は、小町が万葉の古歌を発表したと主張します。小町は汚名を着せられ心を痛めるも、証拠だと突きつけられた草紙にしっかり目を通し、行の整え方や墨付きに不自然な点を見つけました。そこで草紙を洗わせてほしいと願い出て、帝の許しを得ます。小町が洗うと、書き入れられた歌だけが流れ落ちました。悪事を暴かれた黒主は自害しようと座を立ちますが、小町は歌道への熱心さゆえのことと許し、呼び止めます。帝もお許しになり、黒主は再び座につきました。こうして遺恨を残さずめでたい雰囲気となり、小町は御代を寿ぎ、和歌の徳をたたえて舞うのでした。