HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.68「夕顔」

ドラマチック!OH!能

平安時代中期に完成した源氏物語の中の「夕顔」を、室町時代に能に仕立てた演目です。小書(特別演出)「山端之出」とは、物語に登場する夕顔の歌「山の端の心も知らで行く月は上の空にて影や絶えなん」を強調する演出で、廃墟を現す作り物を使います。源氏を山に、自身を月にたとえ、源氏の気持ちが分からぬまま惹かれてゆく不安な気持ちを表した歌。廃墟が表す寂しげな風景と、この歌が象徴するような夕顔を心理が重なり合うような作品です。


Ⓒ辻井清一郎

Ⓒ辻井清一郎

【物語】豊後国(現在の大分県)からやってきた旅の僧が京で都見物をしたその帰路、五条辺りを訪れると、ある茅屋の内で「山の端の心も知らで行く月は上の空にて影や絶えなん」と和歌を口ずさむ女の声が聞こえます。山の端をゆく月は私の心のよう、ただ導かれるままに漂う儚い身の上よ。そう歌う女に僧が声をかけると女は、ここは「源氏物語」に記された「何某の院」だと言います。そして「何某の院」とは元は源融の邸であり、後には光源氏と夕顔が逢瀬を交わした廃墟だと伝えます。さらに夕顔がこの場所で物の怪に取り憑かれて殺されてしまうと聞かせ、興味を示した僧に女は、光源氏と夕顔の故事をひとしきり語った後に姿を消しました。驚いた僧は、土地の者にも夕顔の話を聞き、先刻の女こそ夕顔の霊であったと悟ります。その夜、経を唱えて女を弔う僧。来世を共にしようと歌った光源氏を待ち侘びた女はこの経を喜び、夜明けとともに来世に導かれ成仏を遂げたのでした。



Ⓒ篠山紀信

7/15 SATURDAY
「納涼能 〜ろうそく能〜」

〇演目/朗読はかなく消えゆく女「夕顔」竹下景子
    能「夕顔 山端之出(ゆうがお やまのはので)」(観世流)浅見慈一ほか
■会場/豊田市能楽堂能 ■開演/14:00
■料金(税込)/正面席¥6,000 脇・中正面席¥4,000(25歳以下 ¥2,000)
■お問合せ/豊田市コンサートホール・能楽堂事務室 TEL.0565-35-8200
※車いす席はお問い合わせください※未就学児入場不可