HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.65「内外詣」
「内外詣」は金剛流のみにある、非常に珍しい曲です。舞台となる伊勢神宮は、天照大神(あまてらすおおみかみ 日の神)を祀る内宮(ないくう)と、豊受大神(とようけのおおみかみ 農業神)を祀る外宮(げくう)などからなっており、作品名の「内外」とは伊勢神宮を指します。神楽や獅子舞などの芸を尽くした内容で、華麗な身のこなしを得意とする金剛流ならではの演目です。
【物語】天皇の命を受けた勅使(ワキ)と従者たち(ワキツレ)が、都から伊勢神宮へ向かいます。伊勢神宮に到着すると、境内で神主(前シテ)と巫女(シテツレ)に出会い、祝詞を奏上するように求めます。神主は幣を打ち振り、祝詞をあげて天下の太平を祈ります。さらに、伊勢神宮に祀られる天照大神の威徳を讃え、主君に忠義を尽くすこと、親に孝行する大切さ、友情を保つ心待ちなど、人としての正しい生き方について述べます。
神主の話に心を動かされた勅使は、巫女に神楽を舞うよう望み、巫女は幣を振り立てながら優美な神楽を舞います。神主(後シテ)は装束を改めて再び現れ、豪壮な獅子舞を舞うと、つづけて巫女が軽やかな舞(破ノ舞)を舞います。奉納の舞はさらに続き、夜明けとともに五色の雲が東の空にたなびき、日輪が輝き出るのでした。