HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.62「実方」
能「実方」は美男子のナルシシズムをテーマにした作品です。主人公の藤原実方は、優れた歌人で舞の名手でもありました。西行法師の夢の中に老いた姿で現れた実方の霊が君の寵愛を誇った若き日を追憶して舞うというストーリーが、水鏡を用いて描かれます。現行曲としては金春流のみに組み入れられ、優雅で美しい謡や舞が見せ場となっています。
【物語】陸奥を旅する西行法師の前に、由ありげな塚が現れます。その塚が歌人・藤原実方中将のものだと里の者に聞き、弔います。するとそこに老人が現われ、昔、実方が賀茂の祭で冠に竹の葉を挿して舞い賞賛されたことを語って姿を消しました。その夜西行が仮寝していると、老体姿の実方の霊が現れ、若かりし日の雅な姿を思い浮かべながら静かに舞を舞います。しかし、やがて水鏡に映る姿は現実の老いた姿となり、落胆した実方の霊は、ときならぬ雷鳴とともに消え去り、西行の夢も覚めるのでした。