HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.47「土蜘(蛛)」
鬼退治で有名な源頼光は平安中期の清和源氏(せいわげんじ)の棟梁。この頼光伝説を題材にした代表的な能が、この「土蜘蛛」。しかしどの能でも頼光自身ではなく、家来の四天王などが活躍します。シテが和紙でつくられた蜘蛛の糸を投げる場面は有名ですが、この演出は明治初期に工夫されたと言われます。白い蜘蛛の糸が放物線を描いて宙に浮く様は、ショー的要素が強く華やかです。
【物語】ある夜、病気で臥せる源頼光(みなもとのらいこう)のもとに、見知らぬ法師が現れ、病状はどうかと尋ねます。不審に思った頼光が法師に名を聞くと、「わが背子(せこ)が来(く)べき宵なりささがにの」と『古今集』の歌を口ずさみつつ近付いてきます。見るとその姿は蜘蛛の化け物。沢山の糸を頼光に繰り出しますが、頼光は源家相伝の名刀、膝丸(ひざまる)で斬りつけました。すると、法師は姿を消してしまいます。そこに頼光の侍臣独武者(ひとりむしゃ)らが駆けつけます。頼光はいきさつを語り、名刀膝丸を「蜘蛛切(くもきり)」に改めると告げ、その土蜘を成敗するよう独武者に命じます。独武者が土蜘の血をたどると古塚が現れ、そこから土蜘の精が現れます。土蜘は糸を投げかけて独武者たちをてこずらせますが、なんとか独武者は退治するのでした。