HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.43「竹生島」
琵琶湖の北部にある竹生島は古くから神域とされ、現在は弁才天が祀られています。人々の信仰を集めるこの竹生島と湖の美しさは、京の都でも評判でした。能「竹生島」は、島と湖の作り出す春の季節の中で繰り広げられる、神々の物語です。テンポよく進む前半、そして後半は天女や龍神の舞が見どころになっています。そこでは、神も仏も姿は違えど、同じく人々を救うために現れた仮の姿であり、実は皆同じであると述べられます。
【物語】国が栄え民も豊かに暮らした醍醐天皇の治世。その臣下たちが、竹生島の弁才天に詣でようと琵琶湖を訪れます。臣下は年老いた漁師と若い女の釣り舟に便乗し、竹生島を目指します。あたりの山々は春真っ盛り、身分の違う人たちが同じ舟で語らいながら竹生島へと向かう。島に着いた一行は弁才天に参詣します。女人禁制ではないのかと不審がる大臣たち、すると二人は「女神である弁才天は男女の隔てなく、悠久の昔から人々を救ってきた。」と島の由来を語り聞かせます。そして若い女は自分は人間ではないと明かして社殿に入って行き、老人は湖の主であると告げ波間へ消えていきました。その夜大臣たちが参籠をしていると、社殿が突然鳴動し弁才天が現れます。空には花が降り雅楽の音が聞こえてくる。春の夜の月光に照らされて、壮麗な天女の姿で弁才天が夜の舞楽を奏します。やがて湖中より龍神が現れました。龍神は様々な財宝を大臣たちに献上すると、この世の祝福を舞いで表します。神仏はこの世を救うべく様々な姿を現す。ある時は天女となり民衆の願いをかなえ、ある時は龍神となって国土を鎮めるのだと告げると、天女は社殿に入り、龍神は湖水の龍宮のなかへ帰って行くのでした。