HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.42「八島」

ドラマチック!OH!能

「八島」は「田村(たむら)」「箙(えびら)」と共に「勝修羅三番」と呼ばれ、修羅物の中でも勝ち戦を描いた作品です。しかも源義経に配した人気作。さらに今回の豊田市能楽堂の公演は、国井雅比古氏を迎えての「平家物語」の朗読もあります。義経の栄光と悲劇、十分ご堪能ください。


ⓒ石田裕

【物語】都から四国へ旅をしてきた旅僧一行は、讃岐の国に入り、源平の古戦場、屋島の浦を訪れます。夕暮れ時、一行は漁師の老人に出会います。塩焼き小屋の主人でもある老漁師は、一夜の宿を請う旅僧の求めを侘びた住まいだと、いったん断ります。しかし、一行が都から来たと聞くと、懐かしんで宿を貸してくれました。旅僧に促され、屋島の合戦を語り始めた老漁師は、義経の勇猛ぶりや錣引き(しころびき)の戦い、そして那須与一が大風で揺れる兵船に立てられた扇を、一矢で射落とした場面をまるで見てきたかのように語ります。不思議に思った僧が名を尋ねると、老漁師は「我こそ義経なり」と言い捨てて姿を消しました。夜半にその僧の夢の中に、鎧兜を纏った義経の亡霊が現れます。義経の亡霊は、屋島の合戦で不覚にも弓を取り落としたが、みずからの名を汚すものかと命を惜しまず、敵の眼前に身をさらして取り戻したことを語ります。義経は死後、罪により修羅道に堕ちて、責め苦である戦いの様子を見せますが、夜明けとともに消え失せます。