HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.27 「弱法師」
弱法師(よろぼし)は盲人であるため、杖にすがって闇の中を歩いています。心の中にも闇(親に捨てられた悲しみや、恨み)を抱えています。しかし梅の香を楽しみ、日想観を拝み、心に焼きついた難波の景色を見て、「萬目青山は心にあり(目に見える風景は、全て心に映じる)」と言う弱法師。弱法師の心の闇と光が、この能の見所です。
【物語】河内国(大阪府)高安の里の左衛門尉通俊(みちとし)は、ある人の言葉を信じ、その子俊徳丸を追放します。しかし、すぐにそれが偽りであることがわかって、不憫に思い、彼の二世安楽を祈って天王寺で施行を行います。一方、俊徳丸は悲しみのあまり盲目となり、今は弱法師と呼ばれる乞食となっています。彼は杖を頼りに天王寺にやって来て、施行を受けます。折りしも今日は、春の彼岸の中日にあたり、弱法師の袖に梅の花が散りかかります。彼は、仏の慈悲をたたえ、仏法最初の天王寺建立の縁起を物語ります。その姿を見ると、まさしく我が子ですが、通俊は人目をはばかって、夜になって名乗ることにします。そして日想観を拝むようにと勧めます。天王寺の西門は、極楽の東門に向かっているのです。弱法師は入り日を拝み、かつては見慣れていた難波の美しい風景を心に思い浮かべ、心眼に映える光景に恍惚となり、興奮のあまり狂いますが、往来の人に行き当たり狂いから覚めます。物を見るのは心で見るのだから不自由はないと達観しても、やはり現実の生活はみじめなものです。やがて夜も更け、人影もとだえたので、父は名乗り出ます。親と知った俊徳丸は我が身を恥じて逃げようとしますが、父はその手を取り、連れ立って高安の里に帰ります。