HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.25「藤戸」

ドラマチック!OH!能

この曲は平家物語の「藤戸」が題材です。平家物語では、源平両軍が海を挟んで対峙し、舟を持たない源氏は、佐々木盛綱が浦の男に浅瀬を聞き、馬で海を渡り見事に先陣の功を立てるという武将を讃える物語。能では、その陰にあった盛綱の浦の男に対する非情な仕打ちを露呈。浦の男の母も登場させ、子を思う母心とともに男の死の無情さを描きます。。


能「藤戸」 撮影:瀬野雅樹

【物語】春。源氏の武将・佐々木盛綱は藤戸の戦の先陣の功により賜った児島に、意気揚々と赴任します。すると中年の女性が現れ、盛綱に我が子を海に沈められた恨みを述べます。盛綱は訴えを退けようとしますが、せめて弔って欲しいと嘆く母の心を不憫に思い、浦の男を手に掛けた経緯を語ります。藤戸の海を馬で渡ることの出来る浅瀬を浦の男から聞き出し、その男と下見に向かったこと。それを誰にも知られまいと男を刺し殺し、海に沈めたこと。その真実にまた悲しみをつのらせる母。盛綱はその男を弔います。弔いのうちに現れたのは浦の男の霊。殺されて海に沈められた様子を再現し悪龍の水神となったものの、遂には弔いの功徳によって成仏していくのでした。