HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.23「野宮 合掌留」
大曲と言われる「野宮」は鬘物(かずらもの)。鬘物とは主に女性をシテとする三番目物で、源氏物語や伊勢物語を題材にしたものが多いです。「野宮」は源氏物語より。主人公は才色兼備でありながら悲しい運命を辿る、六条御息所。秋の嵯峨野の哀愁、昔を懐かしむ御息所の切なさと恋への未練を、しっとりと品よく描いた曲です。
【物語】晩秋の9月7日、旅僧が嵯峨野の野宮の旧跡を訪れ参拝していると、里女が現れます。女は毎年この日に野宮で、昔を思い出し神事を行うのだと僧に話します。それは、光源氏が野宮の六条御息所を訪ね別れを告げたのがこの日なのだと語ります。そして自分がその御息所だと明かし、姿を消します。他の里人からも御息所の話を聞いた僧は、御息所の供養を始めます。すると、牛車に乗った御息所の亡霊が現れます。牛車は昔、賀茂の祭りで源氏の正室である葵上一行との車争いで受けた屈辱を意味します。御息所は僧に、源氏への妄執から自分を救って欲しいと回向を頼みます。すると御息所は未だ過去への思いを残しながらも舞い、再び車に乗り姿を消しました。