HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.22「小督」
平家物語を典拠とした金春禅竹作の四番目物。五番立て小督は平安時代末期、高倉天皇の後宮の女性。類まれな美貌の持ち主で、琴の名手でもあった。しかし、中宮(徳子)の父であった平清盛が小督に怒っていると知り、小督は嵯峨野に身を隠します。能の「小督」は、高倉天皇が源仲国に小督捜索を命ずるところから始まります。「小督」の能は、故事や和歌、漢詩などを文章に散りばめ、ゆったりとした趣、風情のある「曲」になっています。
【物語】平家全盛の時代の話です。美しい小督は高倉天皇に見初められ、後宮として寵愛を受けていました。しかし、中宮徳子の父である平清盛を恐れ、自ら嵯峨野に身を隠します。帝は小督の失踪を嘆き、毎夜月を観ては小督を思い出していました。そんな帝より小督捜索の命を受けた源仲国。手がかりは「片折戸(片開きの門)」の住まいと、聞き知った小督の「琴の音」。十五夜名月の月明かりの中、馬に乗ってあちこち捜します。琴の音を耳にしようやく探し当てた片折戸の住まい。その家から聞こえてくる曲は、夫を想いて恋うる「想夫恋(そうぶれん)」。小督探し当てた仲国ですが、質素な暮らしぶりを恥じる小督はなかなか家に入れてくれません。柴垣のもとで露にしおれている仲国を見て、小督の供がとりなし小督と仲国は対面します。仲国は心のこもった帝からの書を小督に渡します。小督は帝の想いに涙を流します。故事を例に挙げて「このような悲恋もあるというのに、現世で私はこのようなお使いを賜ってもらえて幸せだ」と感涙にむせびます。そして名残の酒宴で小督は琴を奏で、仲国は笛を吹き舞を舞います。そして宴も終わり、都へと向かう仲国を小督は見送ります。