HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.21「鵜飼」
夜半に松明を焚き、鵜飼漁を表した「鵜ノ段」をはじめ、禁漁を破った罪人に課せられる重い罰、法華経の文句を石に書き付ける供養の法など、当時の様子を眼の前に見るかのように生き生きと描写します。旅僧は、清澄で修行していた日蓮上人であるとも伝えられています。
【物語】安房国清澄(千葉県鴨川市)の僧が、従僧を連れて、甲斐国(山梨県)へ旅立ち、石和(いさわ)に着きます。日も暮れたため、僧たちは、石和川のほとりの御堂で一夜を過ごすことにしました。そこに松明を持った一人の鵜使いの老人が現れ、僧たちと言葉を交わします。老人の様子を見た僧は、殺生をやめて他業に転ずるよう諭しますが、老人は今更難しいと言います。その問答を聞いて、数年前にこの近辺に来たことのある従僧が、同様の鵜使いに会って一夜供応にあずかったことを思い出し、話題にします。老人は、その鵜使いは、殺生禁断の禁制を破った咎めを受けて殺されたと告げます。老人はその顛末を語り、自分こそが殺された鵜使いの亡霊であると明かし、鵜を使った漁の様子を見せた後、闇へ消えていきます。里の者から改めて、鵜使いの悲惨な死を聞いた僧たちは、川の石に法華経の文句を書きつけて、老人を供養します。すると、そこに閻魔大王が現れ、殺生の罪により地獄に堕ちるべき老人が、従僧をもてなした功徳もあって、救いを得たことを知らせます。そして、法華経の有難いご利益を讃えつつ、慈悲の心を持って僧侶を大切にするよう勧めます。