HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.15「夜討曽我」

ドラマチック!OH!能

五番立てのうち、雑能と呼ばれる四番目物。ほかの4グループに入らない作品はここに属す。典拠は「曽我物語」。宮増(みやます)の作だと言われる。前半では母を慕う兄弟の情や最後まで供をと願う主従の情がしっとり描かれるが、後半は目覚ましい闘争場面が展開される。


【物語】時は源頼朝の頃。曽我十郎と五郎兄弟と、従者である鬼王、団三郎兄弟の四人は、富士の裾野の巻狩に参加します。狙いは、この巻狩に乗じて父の敵の工藤祐経(すけつね)を討つこと。しかしこのことを母に告げていなかった曽我兄弟は、鬼王・団三郎に形見を持たせて故郷に帰そうとします。ふたりは主君と最期を共にしたいと訴え、それが叶わぬなら兄弟で刺し違えて自害しようとまでするのです。しかし曽我兄弟は、母への使者はふたりしかいないと説得し、鬼王と団三郎の兄弟は泣く泣く故郷に帰っていきます。そして曽我兄弟は、首尾よく敵である祐経を討ち果たしました。そして、ふたり を捕らえようとする軍勢のために散り散りになりながら立ち向かいます。やがて兄十郎は討たれたとみえ、五郎の呼ぶ声にも応答がありません。五郎はひとりで奮戦して一歩も引きませんが、薄衣を被った御所五郎丸を女と思い、油断をしたところを大勢に取り囲まれ、遂に縄打たれてしまうのでした。