HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.14「巴」
巴(ともえ)は巴御前のこと。木曾義仲の便女(召使・愛人)であり、強力の女武将として知られている。平家物語「木曾最期」によると、源平合戦で落ち延びた義仲は、巴を最期の道連れにせず東方へ逃れさせたとされる。その後の巴の消息は不詳とされる。女を主役にした修羅物はこの作品だけである。舞台は滋賀、琵琶湖畔。
【物語】木曽の僧が都に上る途上、琵琶湖のほとりの粟津が原というところに差し掛かります。そこで神前に参拝に来た女と出会いますが、女が涙を流しているので不審に思い、理由を尋ねます。女は古歌を引き、神前で涙を流すのは不思議なことではないと述べ、僧が木曽の出だと知るや、粟津が原の祭神は、木曾義仲(源義仲)であると教えて供養を勧めます。そして、自分が亡者であることを明かし、消えてしまいます。僧はお参りにきた近在の里の人(所の者)から、義仲と巴の物語を聞き出し、先の女の亡者が巴だと確信を深めます。夜になり、僧が経を読み、亡くなった人の供養をしていると、先ほどの女が武者姿で現れます。女は巴の霊であることを知らせ、主君の義仲と最期を共に出来なかった恨みが執心に残っていると訴えます。そして義仲との合戦の日々や、義仲の最期と自らの身の振り方を克明に描き、執心を弔うよう僧に願って去って行くのでした。