HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.4「朝長」

ドラマチック!OH!能

能の中でも「修羅物」と呼ばれ、武人が主人公(シテ)となる演目。ただ「修羅物」のほとんどは「負修羅(まけしゅら)」といい、負け戦の話がほとんどです。この話も例に違わず、悲運の死を遂げた武者と彼を慈しむ女性の物語。舞台は現在の岐阜県大垣市青墓町です。


【物語】朝長に縁の深い僧が、平治の乱に敗れて都を落ち自害した朝長を弔うために美濃の国青墓に赴きます。僧が墓所を訪ねて回向をしていると、中年の女が詣で来て、僧の姿を見て不審を抱きます。「この墓所へは自分の外には参る人はないのに、涙を流して懇ろに弔いなさるはいかなり人か」と朝長との因縁を尋ね、かつ女も朝長に一夜の御宿をした縁で、同様に弔いをする宿の長であると告げます。女は僧の所望によって、落ちのびて来たその夜の義朝親子の様子から、朝長の最後の有様などを詳しく物語っているうちに、いつか夕陽も落ちて来たので、僧を自分の家に伴います。僧が、観音懴法(せんぼう)の法要を勤めていると、夜半に朝長の亡霊が昔の姿で現れ、都での敗戦の様子や、一門が不運をたどる中で、青墓の宿の長の深い情が死後の弔いにまでも及んでいる嬉しさを語り、遂に消え失せるのでした。
豊田市能楽堂で行なわれる公演では、まず国井雅比古氏による「平治物語」の語りに耳を傾け、能「朝長」の理解を深めることができます。また今回、新演出による能「朝長」は、朝長の霊、青墓の長者を1人のシテ役が務めますが、今回はそれぞれ別のシテ役で演じます。朝長の霊と青墓の長者との母子のような交流を見どころとしています。