HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.3「甲冑能 新作 信長」
藤間勘十郎が書き下ろした新作能「甲冑能 新作 信長」。敵味方を問わず、一切の犠牲者を平等に愛し憐れむ仏教の教え“怨親平等”を主題にした、その悲しくも美しい物語とは…。
【物語】戦国武将・織田信長ゆかりの地を訪ね歩くひとりの旅僧。ある日、何ものかに導かれるかのように歩いて行くと、辿り着いたのは偶然にも比叡山でした。旧主である信長を偲んでいると、ひとりの若者が芸を演じながら現われます。僧の所望により若者はさまざまな芸事を披露してくれますが、どこかへ消え失せてしまうのでした。やがて夜も更け僧が休んでいると、夢の中にひとりの武者が現れます。「我は信長なり」と名乗り、戦の様子を披露。さらに、比叡山焼き討ちの模様を語ろうとします。そこに突如、僧兵が現われ、敵味方の対戦を交えながら比叡山焼き討ち当時のありさまを再現しました。しかし、僧兵は瞬く間にいずこともなく消え失せ、そこに残るは信長ただひとり。残された信長は、戦における虚しさを憂い、また世の無常を儚みます。そして、その信長もやがていずこともなく消え失せるのでした。 非情の最期を遂げた武将の霊が諸行無常を悟り、敵味方なく許し憐れむ心を宿すことで、自身の魂を成仏させることができた…。思い通りにいかない人生を受け入れる。そうすることができて初めて、人は救われるのかもしれません。しみじみ…。