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ドラマチック!OH!能

「浮舟」は、「源氏物語」宇治十帖に登場する女性の名。その悲劇は、これまでにも数々の映画や舞台、ドラマになっています。人々を惹き付けるその物語。能の世界ではどのように描かれているのでしょうか。


【物語】都に戻る途中、宇治の里に立ち寄った修行僧が、ひとりの里女に出会います。そこはかつて、浮舟という女性が暮らした土地。僧にうながされ、里女は浮舟のことを語り始めます。浮舟はとても美しく優しい女性で、光源氏の息子・薫大将の寵愛を受け、この里に隠れ住んでいました。あるとき、光源氏の兄・朱雀院の息子で色好みの匂宮(におうのみや)が訪れますが、闇の中で薫大将と勘違いした浮舟は、彼と契りを結んでしまいます。以後、匂宮の情熱的な求愛に、罪の意識を抱きながらも心惹かれていく浮舟。しかし、心から頼りにするのはやはり、薫大将。自らの心を決めかね板挟みに苦しむ浮舟は、思い悩んだ末に死ぬ決意をし、行方知れずになってしまったのでした。この物語を僧に話して聞かせた里女こそ、実は浮舟の亡霊。生前、ふたりの男への愛に苦しんだ末、死のうとしたときに物の怪に取り憑かれ、死してなお苦しめられていたのでした。語り終えて姿を消した彼女を追って、僧は小野の里へと向かいます。そして、霊を慰めるため回向を始めると、現れたのは浮舟の霊。ようやく弔いを受けられたことに喜びながら、消えていくのでした。 愛に迷い苦しんだ末、自らの命を絶ち、死んでからも彷徨い続けるその魂。「はっきり決めるなんてできない」というファジーさが、女性の色気につながるのでしょうか。確かに、竹を割ったような悲劇のヒロインって、聞いたことがありませんよね。